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鋼の巨神 バーニンガー   作者: 竜馬 光司
25/29

第7話

花祭りの翌日のよく晴れた日の午後。炎は自室で昨日までの出来事をノートに書いていた。

日本からこの世界に召喚されてもう数ヶ月が経っている。

高校生活を送っていたら絶対味わえないような体験を炎は味わってきた。

(巨大ロボットに乗り込んで、怪獣と戦うなんてそんなアニメみたいな事、きっと地球人で体験したのはおれだけなんだろうな。……それとも後々、地球でも巨大ロボットが作られたりして……)

今までのバーニンガーと侵略獣との激闘を書き終え、花祭りの出来事を書こうとした時ふと筆が止まる。

イーリスの事を考えて炎は顔が熱くなるのを感じた。

この世界に召喚されて一番最初に出会ったのが、炎をこの世界に召喚した人物であり、お世話になっているエーヴィヒフリーデン王国の女王。イーリス・ヴァイス・スマラクトであった。

彼女の美しさに炎は一目で虜になった。

つまりは 一目惚れである。

今まで喧嘩もしたが花祭りで仲直りも出来て、告白もして今の炎は超ハイテンションだった。

告白は、炎が伝えたかったのと少し違う伝わり方をしてしまったが、イーリスには好意的に受け取られたようなので炎は概ね成功だと思っている。

そんな事を考えながら、白いノートを羽根ペンで埋めていると部屋のドアがノックされた。

「はい、どうぞ」

炎の返事を受けてドアを開けたのは侍女の一人だった。

「失礼します炎様。女王陛下から至急玉座の間においでくださいとの事です」

「分かった。すぐ行くよ」

炎は書きかけのノートを閉じ侍女について玉座の間に向かう。

玉座の間に近づくにつれ、変な緊張感を炎は感じていた。


「炎様をお連れしました」

侍女と共に警護の騎士がいる扉を抜けると、そこは荘厳な雰囲気を纏った場所であった。

玉座の間は縦に長い部屋で、扉を抜けて数メートル程歩くと部屋の奥にこの国を統べる者のみが座る事を許される玉座がある。

勿論、二つある玉座のひとつに座すのは女王イーリス。

玉座は二つあったがひとつはイーリスが座りもうひとつは無人で、座るべき者を今か今かと待っていた。

その玉座の奥の壁にはエーヴィヒフリーデン王国の紋章『穢れる事のない白き花』が描かれていた。

玉座の間には炎が来る前から王国防衛軍隊長アッシュ、ロートシルト騎士団団長ツィトローネがいた。

二人とも炎が来た時には視線を炎に向けたが、すぐに中央に跪く兵士に視線を注ぐ。

炎はというと玉座に座るイーリスに見惚れていた。

(本当に女神が存在するとしたら、きっと今のイーリスさんの事を言うんだろうな)

そんな事を炎が考えてるとも知らず、最初に口を開いたのは、イーリスだった。

「勇者炎も参りました。今の話を炎にも聞かせてあげてください」

イーリスは中央に跪く兵士にそう促すと兵士は口を開く。

「はい勇者殿お初にお目にかかります。私は東の砦の守備隊の者で、伝令として参った者です」

伝令は跪いたまま、炎に一礼をする。炎もつられて「どうも」お辞儀をした。

伝令は炎にイーリス達に話していた事を炎に話し始めた。

「昨夜の事でした。その夜はとても綺麗な月夜だったのですが、イースディー聖王国の方で異変があったのです」

「一体何があったんですか?」

「……はい。月が出ていた夜空に、イースディー聖王国の上空だけ黒い雲に覆われていたんです」

「それは雨雲では?……」

炎がそう思うのも無理はなかった。イースディー聖王国の真上に黒い雲ができたから異変が起きたと言われてもピンとは来なかった。

「はい。私達もその時は、雨雲だろうとしか思っていなかったのです。しかし夜が明けてから、恐ろしい光景が飛び込んできました。……イースディー聖王国から黒煙が上がっていたのです。

それを見た砦の部隊長はゴディーオ聖王国の異変と指示を仰ぐ為に私を伝令として送ったという訳です」

炎も話を聞く内に段々と事態の深刻さを感じていた。

侵略獣の襲撃に対してイースディー聖王国は巨大な壁を作り侵略を防ごうするなど、とにかく守りの固い王国だった。

そのゴディーオから黒煙が上がっているという事は確実に何か良くないことが起きている証拠といえるだろう。

「この話を聞いて、一体何が起きたと思いますか? 二人とも」

イーリスはツィトローネとアッシュに意見を求める。

「民が反乱を起こして、内乱でも起きたのでしょうか?」

「いやそれはどうだろうか? 反乱が起きたとしたら、何かしらの報告がこちらにも入るはずだが、砦の方にも何も報告は無いのだな?」

ツィトローネの意見を受けてアッシュは伝令に確認を取る。

「はい。私が砦を出るまでにそのような報告は入りませんでした」

「陛下。ここで話していても解決はしません」

「何か解決策があるのですか? アッシュ」

「はい陛下。確か今日は予定では使者を使いに出す日。代わりに、私を含めた少人数の精鋭でイースディー聖王国を偵察してこようと思います」

今まで何度か、孤立しているイースディー聖王国と同盟を結ぶ為に今まで使者を送っていた。

しかし今まで送った者達は全て門前払いされていた。

「なるほど、使者の代わりに貴方が向かうということですね」

「その通りです。陛下」

「それは危険では? もしアッシュ殿に何かあったらどうするのです」

「ハッハッハッ。ツィトローネ殿心配ご無用。たとえトロルが出てきても俺は一歩も遅れを取らん」

「アッシュ殿の武勲は知っていますが、……どうなさるのです陛下?」

「……アッシュ。貴方の提案でいきます。部下を連れゴディーオ聖王国の状況を見てきてください」

「はっ、承りました女王陛下」

アッシュは右手を心臓の上に置き、深く頭を下げた。

「それと、何があっても生きて帰ってくる事。貴方を待つ者がいるのを忘れないでください。これは命令です」

「はい陛下。必ず無事に戻り、この目で見た事をこの玉座の間で陛下に伝える事を約束いたします」

「頼みます」

アッシュは「では準備があるので」と言って玉座の間から退室する。

独特の雰囲気で一言も話せず、ただ見送っていた炎にイーリスが声をかける。

「炎よろしいですか?」

「はいっ! 何でしょうイーリ……じゃなかった。女王陛下」

炎は神々しい雰囲気に呑まれてついイーリスの事を女王陛下と呼んでしまった。

イーリスは炎に女王陛下と呼ばれて少し悲しい顔になる。

「炎。貴方は臣下では無いからわたくしの事はイーリスと呼んでくれていいのですよ」

「そうだった。……じゃあ何でしょうイーリスさん」

「貴方には、シレイたちに今の話を伝えてもらいたいのです」

「俺がですか?」

「わたくしやツィトローネでもいいのですが、色々とやらなければいけない事があります」

「分かった。今日この後、訓練があるからその時に伝えておくよ」

「お願いいたします」

炎は玉座の間を退室し自室に戻る。その数時間後、アッシュを見送る為に城壁の門向かうのだった。


炎が城壁の門に辿り着くと既に偵察の準備を終えたアッシュとその部下達を、その家族や知人達が見送っていた。

アッシュも妻のリーベとしばしの別れを惜しんでいた。

「すまんなリーベ。すぐ帰ってくるからな」

「うん。気をつけてね。……死んじゃ嫌よ」

いつもは明るいリーベだが、今回は全身から不安が滲み出ていた。

「どうした? 俺は別に戦場に行くわけでは無いぞ。少し様子を見てくるだけさ」

「分かってる。何となく不安なの」

「しょうがないなぁ」

アッシュは恥ずかしさを紛らわせるように、後頭部を掻いて馬から降りる。

そして思いっきりリーベを抱き締めた。

「ちょ、ちょっとあなた。 みんな見てる! 見てるから!」

アッシュは周りの目もリーベの非難も無視してリーベを強く抱きしめる。

「もう〜。離しなさい!」

尚も離れないアッシュをリーベは投げ飛ばす。

アッシュの視界は一回転し、地面に盛大に叩きつけられた。

「ご、ごめん。つい、大丈夫? あなた」

「ハハハハッ! 流石リーベ! やっぱり俺の妻はこうでなくちゃな」

「あなた! 私をからかったのね」

顔を真っ赤にして抗議するリーベ。それを見ながらアッシュは優しい笑みを浮かべる。

「そうそう。お前はこうじゃなくちゃな。じゃあ行ってくるよ」

「待ちなさい!」

「どうし……うおっ!」

アッシュはリーベに飛び疲れて思わず尻餅をついた。

「怪我しないで帰ってくるのよ! もしかすり傷でもついて帰ってきたら、ご飯作ってあげないから」

「それは困る。ちゃんと怪我しないで帰ってくるから飯抜きはやめてくれ」

アッシュはリーベの頭を撫でで宥めるのであった。

その微笑ましい光景を見て周りの者の緊張も解けていく。

アッシュと兵達は馬に乗り、準備は完了。

遂に出発の時がやって来た。

「アッシュさん」

「おお、炎。見送りに来てくれたか」

「ああ、何日くらいで帰ってくるんだい?」

「そうだな。何も障害がなければ、四日くらいだろう。その間、王国の事頼むぞ。炎」

「ああ、任せといてくれ。アッシュさんも気をつけてくれよ」

「分かってるよ。全員準備できたな? ……では、出発する!」

アッシュの号令でアッシュを含めた十人の兵達が動き出す。

異変が起きたであろうゴディーオ聖王国に向かって、馬を歩ませるのだった。


アッシュを見送った炎は、訓練の為にジャスティベースにいた。

ジャスティベースに着くと、まずオペ子とオペ美の二人が話しかけてきた。

花祭りの事を聞きたいと言ってきたので、炎はその日の事を二人に話していた。

「如何だったです? ご主人様。イーリス様とイチャイチャできましたか?」

「イチャイチャって、そんな事してないよ!」

「してないのですか?」

「コラ、オペ美。あまり炎様を困らせてはいけません。……それでお二人は何処までいったのですか?」

「何処までって、何の事?」

「ですから、人間は恋人になると必ずする事があるではありませんか。手を繋ぐとか、キスとか、後……」

そこまで言うとオペ子は炎の左耳に囁く。それを聞いて炎の顔が赤くなった。

「うわー! そんな事してないから」

「じゃあ、何処までいったのか教えてください。でないとそれ以上の事を大きな声で言いますよ」

オペ子は「私は恥ずかしくないですけど炎様はどうかしら」と脅してくる。

「ご主人様。私も知りたいです!」

「分かった分かった。言うからもう勘弁してくださいー」

炎は勢いに負けて、花祭りの事を洗いざらい二人に話すのだった。

そしてバーニンガーのシミュレーター訓練を終えた炎はシレイにゴディーオ聖王国の異変とその様子を見るためにアッシュ達が偵察に行った事を伝える。

「なるほど、分かりました。ならばこちらでも異変がないか警戒しておきましょう」

「そういえば偵察衛星では上から見れないのかな?」

「そうですね。衛星はインベーダーが拠点にしている暗黒の山脈を中心とした軌道をとっています。軌道を変えればイースディー聖王国の方も見れますが……」

シレイは語尾を濁す。

「難しいのか?」

「はい。軌道を変えたときに、敵が何かしらの行動をとった場合、対応が後手に回る可能性もあります。……申し訳ありません」

「分かった。じゃあ原因究明はアッシュさん達に任せるとしよう。何もなければいいんだけど……」

「そうですね。私達も不測の事態に備えます」

炎はジャスティベースから城に戻り、イーリスにシレイ達が支援してくれる事を伝えて、一日を終えた。

アッシュ達が出立したその夜から、エーヴィヒフリーデン、ヴェスジック両王国の空を雲が覆い雨が降り出していた。


イースディー聖王国の偵察に向かっていたアッシュ達は、順調に進んでいた。

その夜は野営をし朝になってから砦に到着する予定になっていた。

アッシュが自分のテントで装備の点検をしていると外から声を掛けてきた人物がいた。

「アッシュ隊長。今よろしいでしょうか?」

「おういいぞ。入ってくれ」

テントに入ってきたのは、三人いる副隊長の一人で、今回の偵察任務について来たフーカーだった。

「今のところ順調に行ってますな。隊長」

フーカーとアッシュはアッシュが隊長の地位に就く前から一緒に戦っている親友だった。

「フーカー。こういうときぐらいは堅苦しいのは抜きにしようぜ」

「了解。……いや分かったよ。アッシュ」

隊長の許可を得てフーカーの口調が副隊長から親友に変わる。

「で、改めて何の用だ? フーカー」

「これ持ってきたんだ。いつもみたいに一杯やらないか? 」

そう言ってフーカーが取り出したのは葡萄酒が入った革袋だった。

「お前、俺たちは今任務中だぞ。酒なんか飲めるかよ」

「いつも任務の前は葡萄酒を飲んでお互いの無事を祈ってただろ? だけど今回は急に決まっちまってそれができなかったからな」

フーカーは実力もあり、部下からも信頼されているが、迷信やジンクスを結構気にする男であった。

「分かったよ。少しだけだぞ」

アッシュは「一杯だけ」とは言わず「少しだけ」と言ったのをフーカーは聞き逃さなかった。

二人は油断しているわけではない。

勿論酒を飲めば判断力が鈍ってしまう。だが、今回の任務は偵察で必ずしも戦闘が起こるわけではない。

それに少々の酒に潰れるような二人ではなかった。

「勿論少しだけにしておくさ。さあ飲んでくれよ」

フーカーはアッシュに革袋を渡し、アッシュは一口グビリと飲む。

「くぅ〜美味いな! お前の親父さんの作った酒は最高だよ」

アッシュはフーカーに渡しフーカーも葡萄酒を飲む。

「そうだろう? (うち)の葡萄酒は王国一だぜ!」

二人は一つの葡萄酒を分け合いながら飲み、他愛もない話しをして盛り上がる。

その内気分が良くなってきたアッシュは持ってきた鹿の干し肉をツマミとして出し更に盛り上がっていた。

「そういえば外の見張りを見てきたが、あれはやっぱり何というかまだ慣れんな」

「? ああ、ゴーレムの事か?」

「そうそう、それだよ。そのゴーレム。見張りの部下がビクビクしてたぞ」

ゴーレムとは同盟を結んだヴェスジック王国から贈られた物である。

元々は魔法使い達が苦手な肉体労働をやってもらうために作り上げた物だ。

それに様々な改良を施され、アッシュ達の元にいるゴーレムは戦闘でも活躍できる物だった。

「しかし魔法というものはスゴイよな。あのゴーレムだって最初は緑の玉だったのに地面に投げたら、急に人型になるんだからな」

「ああ、俺も聞いてはいたがあれは驚いた」

ゴーレムは最初は掌に収まるほどの大きさの緑の玉でしかない。

それを地面に落とすとその場の土などを自分の体として人型となり晴れてゴーレムとなるのであった。

因みにゴーレムにはアッシュにしか命令できないように、最初に登録されていた。

そろそろ、チビチビと飲んでいた葡萄酒も底をつこうとし、干し肉も平らげてしまいそろそろお開きにするかとアッシュが思った時、フーカーがこう切り出す。

「……相変わらず奥さんと仲良さそうだな」

アッシュは何だ急にと思いながら答える。

「当たり前だ。……言っとくがうちの妻に手を出したらいくら親友のお前でも許さんぞ」

静かな口調だが、その中に宿る怒りを聞き逃さないものはいないだろう。勿論フーカーもその一人だった。

「おいおい、親友。俺は誓ってそんな事しないって、お前が一番わかってるだろ?」

「いや、お前が一番危ない!」

アッシュが真顔で断言するのも無理はなかった。

フーカーは若い頃から、遊び惚けていて今まで関係を持った女性は両手の指では数え切れないほどだ。

「信じてくれよアッシュ。俺は独り身の女性しか狙わないって知ってるじゃないか」

「……分かったよ、信じる。それで急にどうしたんだそんなこと言い出すなんて、結婚でもするのか?」

「…………」

フーカーは黙ってしまうが、その無言はアッシュの質問を肯定していた。

「本当にするのか! 今まで何十人と付き合ってきたお前がか?」

アッシュはリーベ一筋だったが、フーカーは対照的に若い頃から何人もの女性と関係を持っていた。一度に二、三人と同時に付き合うのも珍しくなかったが、誰とも長続きせず結局短い期間で別れてしまうのが殆どだった。

「ああ、今付き合っている()に結婚してほしいって言われちまってな」

「で、お前は何と答えたんだ?」

「返事はまだ返してないんだ。急にこの任務が入っちまったからな。まだ答えてないんだ」

「だが、お前の中で答えは決まってるんだろ?」

「そうだな決まっている。……と言うより今日の朝決まったよ。お前とリーベさんを見てな」

「? どういう事だ」

「今のままが気楽でいいやと思っていたんだが、ああやって心配して帰りを待ってくれている人がいるっていいなぁって思っちまった」

そのフーカーの告白を聞いてアッシュは思いっきり笑った。その笑い声は、野営地に響き渡るほどだった。

「おい、みんな起きちまうぞ!」

「ヒーヒッ、すまんすまん。お前がそんな事言うとは思わなくて、クククッ」

アッシュは腹を抱えながら笑いを堪えるがそれでも時々笑い声が漏れる。

「チェッ、お前に言うんじゃなかったよ」

そう言って立ち上がろうとするフーカーをアッシュが引き止める。

「待てって、悪かった怒るなよ。俺だって嬉しいんだから。ほら飲め。最後の一杯だ」

フーカーはアッシュが差し出した葡萄酒を受け取り残りを一気に喉に流し込む。

「その()のためにもさっさとこの任務を終わらせて帰るぞ! 後、結婚式には呼べよ」

「勿論だ。ちゃんと呼ぶよ親友!」

フーカーはその後上機嫌で見張りの様子を見てくると言って、テントを後にし、アッシュも朝に備えて身体を休めるのであった。


翌日。アッシュ達は朝一番に野営地を出発し、東の砦に向かっていた。

すると前方から兵士を乗せた馬が一頭、こちらに向かってくる。

「隊長。大変です!」

彼は斥候でアッシュ達に先駆けて砦に向かい

、砦に来訪する事をを伝えに行ったはずなのだが何故か血相変えて戻ってきた。

「落ち着け何があったんだ?」

「そ、その、砦が、砦が陥落しているんです!」

「何! バカな事を言うな」

「本当です! 砦の周りや防壁の上に兵達の死体が、死体が……」

斥候にとってもかなりのショックを受けているようで、言葉を詰まらせてしまう。それを見たフーカーは斥候を落ち着かせる。

「どうする隊長。一度退くか? それとも……」

「……砦の様子を見に行く。何が起こったか原因を突き止めねばならない」

「了解。全員聞け! 隊長の言った通りだ。このまま砦の様子を見に行くぞ」

何が起きたのか不安になる部下達をフーカーが叱咤激励する。

アッシュ達は斥候に先導させ砦に向かうのだった。

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