第2話
けたたましいサイレンが鳴り響く。
悲鳴を発しながら、人々が逃げ惑う。
巨大な何が近づき、耳をつんざく鳴き声が聞こえて地面が震え、車の警報装置がけたたましく悲鳴をあげ、ビルの窓ガラスが割れて雨となり降り注ぐ。
そして現れる直立した巨大なトカゲ。
全長一〇〇メートルを越えるそれが 巨大な足跡を残しながら近づいてくる。
邪魔なビルを破壊し道路を陥没させ、車を潰しながら、人々を追いかけきた。
「怪獣だ怪獣が来たぞ」
「逃げろ逃げるんだ」
「一体何処に逃げろっていうんだよ」
そんな中、親とはぐれたのか、男の子が一人ポツンと取り残されていた。
どうやら親とはぐれたらしい。怪獣はその巨大な足で男の子を踏み潰そうとする。というよりも怪獣には見えていなかった。
その時、怪獣が動きを止めた。
けたたましいサイレンが鳴り響く。
人々が逃げる方向から巨大な人影が近づいてきた。
それは全長八〇メートルの巨大ロボットが近づいて来ていた。
「来てくれたぞ。バーニンガーが来てくれた」
人々は現れた鋼鉄の巨人に声援を送る。
バーニンガーが怪獣と正対し怪獣が咆哮を上げ威嚇しながらバーニンガーに迫る。
バーニンガーも迎え撃つために拳を突き出す。
その時、三たび鳴ったサイレンの音で彼は目が覚めた。
「あ〜夢か」
ある怪獣映画で使われていたサイレン音の目覚まし時計を止めてむくりと起き上がる。
目覚まし時計には二〇一X年六月十九日と表示されていた。
ひどい寝癖だ。このひどい寝癖の持ち主の名前は豪快炎高校3年生である。
炎は毎日の日課である自分の部屋を見回して、目を覚ますと同時にテンションを上げる。部屋の壁には様々なロボットアニメや怪獣映画のポスターが貼ってある。彼はオタクだった。
ポスターだけではなくDVDは必ず限定盤を買い、気に入った物は複数買ったりしてしまう。
なのでグッズや本も出来る限り買っていくせいで、部屋はどんどん狭くなる。
(しょうがないだって欲しい物は欲しいんだから)炎はそう思いながら制服に着替えて二階の部屋から一階に下りた。
「おはよう。炎、朝ごはんできてるわよ」
「ありがとう」
炎はあくびをしながら母が作った朝食を食べる。
今日のメニューはこんがり焼き上げた食パンに目玉焼きとカリカリのベーコン、それとサラダとヨーグルト。
いつもと変わらないメニューを平らげ牛乳で流し込んだ。
(母さんはご飯は美味しいけど、メニューが少ないのが玉に瑕かな)そう思いながら炎は完食する。
「じゃあ、行ってくるよ」
いつもと同じ時間に家を出る炎。
彼はまだ知らない。この日が当たり前の日常から非日常の始まりの日だという事を。
炎の通う公立高校まで徒歩で十五分なので、彼は高校3年間、遅刻とは無縁の登校生活であった。
「兄さん、ちょっと待ってよ」
後ろから控えめな声が掛かる。振り向いた先に彼の妹がいた。
「日向、早く来いよ」
彼女は豪快日向。
因みに彼女はみんなから委員長と呼ばれている。日向が小中高とずっと委員長をやってきたので、もはやあだ名として定着してしまった。
炎は昨日観たアニメの感想を日向に話す。日向はそれこそ『日向』の名前の通り日の光のような暖かい笑顔で炎の話しを聞きながら2人で学校に向かっていくのだった。
炎の家族は4人家族で、父親はロボット工学の第一人者で今も世界中を飛び回っている。
炎のロボット好きも父親の影響で、幼い頃に見たロボットアニメが今の炎を作っていた。