一話
白い空間。証明器具はないが目を瞑りたくなるくらい明るい空間。壁はなく、どこまでも何も無い空間が続いている。
「ではあなたの設定を決めます」
ふいに声がする、機械の声だ。同意として首を下に振る。
「種族は人間、身なりはあなたと全く同じになります。よろしいですか?」
ああ、と肯定の意を示す。
「では始まります。御健闘を」
視界が開けてきた。アルスは辺りを見渡す。五万人は入りそうな広場、東側には小さなステージもある。北側には町の外にでる門があり、南には道が続いている。
アルスはその真ん中より西側にいた。広場には二、三万人ほどの人間とヒューマノイドがいる。すでに、何人かで固まって話始めている者たちもいる。
ざわついている広場に機械の声が通った。ステージのほうからだ。ここからではよく聞こえないので近づいて耳を傾けてみた。
「ここは始まりの街、ハーメルンです」
ただのNPCだ、周りの奴らが面白がって話しかけているようだ。
下らない、とアルスは思い、とりあえず街を出てみることにした。周りの奴らはまだ順応しきれておらず、他人の様子を伺っている。自主性の無い、とアルスは嘆息し、気にも止めずに外に出た。
恐らくここでは自分の手で全てをやらなければいけない。金を稼ぐのも、身を守るのも、全てだ。なぜだかはわからないが、そんな気がする。体が覚えているとでもいうのか、この状況にまるで違和感を感じない。
深く考えようとすると頭が回らなくなる。なのであまり考えようとはせずに今から何をすべきかを考える。
確認したところ、身ぐるみひとつだ。金も装備もない。
じゃあまず金だなと思い、見渡すと手頃なスライムがいた、そいつを素手で殴り倒すと金が出てきた。特に問題もなかったので、そこらのスライムを狩り尽くし、もう一度ハーメルンに装備を整えに戻った。
とりあえず、剣を買うので金をほぼ使ったので、他は買わなかった。次の街にいくまでモンスターを倒しながら金もついでに集めることにしよう。