ビッグブラザーズ
映像資料
少女に手をひかれる青年の背後には数多くの追手が迫り距離もそう遠くはなく、進みゆく道さえも入り組んでいて味方とはならず、追手も追い詰めていながらも用心に越したことはないと言うように全速力で追っていた。
全速力と表現したが、その追手が全速力と呼べる力を出しているかは明確には不明と言うか、追手自体が普通に見ると正体不明の物体と言えた。
追手は全員大まかな外見は人間に酷似しているが、全身が白くまるで彫刻のような姿をしていた。
「―――!?」
「行き止まり!?」
青年の手を引いていた少女が不意に立ち止まり、青年も進行方向に眼を向けると言う通りの行き止まりで、袋のねずみにされてしまった。
「伏せて!」
「―――――」
万事休すと言う時だったが、不意に少女が腰に手を回すと銃を取出し、追手に向け、青年はと言えば言われたとおりに地面に伏せると少女は引き金を引いた。
銃声が響き渡ると銃弾が発射され追手に命中するとその身体の一部は砕け倒れ、ほかの追手にも銃弾が命中し、同様の効果が得られた。
「―――――」
銃弾とは限りある物で、少女の撃った弾丸はすべて追手に命中し、沈黙させたが、人数分の銃弾は装填されておらず、予備もなく、銃口を向けているが弾丸は切れ、追手が少しずつ迫って来ていた。
「―――相変わらず見事なものですね?」
「―――アーウェー―――」
迫って来ていた中で不意に歩みを止め、少女が何事かと言う反応の中で追手は後ろからだれかと言うか、指示する偉い人間が来て道を開けると言う動作を見せた。
追手は片手を胸に当て、頭を下げ、それに中央を開けて道を開くと中央にはスーツ姿で切れ目で狡猾と言う言葉が似合いそうな顔の女性が歩いて来るのが少女の眼に見えた。
女性がここまで持ちこたえたのはほめるけどそこまでだと言うように言うと、少女はあなたがここに来るなんてと言う反応を見せた。
「プロジェクトヤーウェーが失敗した現在、ジェホーヴァは新たな計画を始動し、わたしにその指揮権を与えた。」
「―――それじゃあ、このヴァリーの変異体は―――?」
「無論。彼を捕獲するためのものよ。」
アーウェーと呼ばれた女性はあなたの反応に対しての答えはと言うように言い、少女がもしやと言う反応の中で、アーウェーはもしやではなくてその通りだと言うように返した。
「―――――」
「捕らえなさい。安心して。殺す気はない。」
少女の言うヴァリーと呼ばれた追手と言うか、アーウェーの従者は話しを終えるのを確認すると少女たちに眼を向け、少女が銃を向けてこそいるが、弾丸もないで、アーウェーはあきらめなさいと言うように言った。
「―――そんなことだろうと思ったぜ?!」
「!?」
「―――ずる賢さに腹黒さ、それに用意周到さはそっくりだが、読みの浅さと隙の多さはあいつ以上だな?」
ヴァリーが少女たちに迫る中で不意にアーウェーの背後と言うか、少し遠くから呼びかけるように言う声が聞こえ、アーウェーが振り返り少女たちが眼を向ける中で、同じように別の声が聞こえた。
アーウェーが振り返り、少女たちが眼を向けると光が差していて人間としての姿しか見えないが、2人組の姿が見えた。
大人の男2人組と言う雰囲気で、1頭身ほどの背丈の差が存在しているがどちらも手に何かを持ち、肩に背負っているように見えた。
「貴様らは―――?」
「何者だ? だと?」
「聞かれたならば答えてやろう―――」
アーウェーはお前らはもしやと言う反応の中で別の声が答えると、最初の声が合わせるように口を開いた。
「敵でも味方でもない。正義でも悪でもない。たとえて言うと―――」
「調節者だ!」
「調節者だ!」
声の主が続ける中で、差し込む光の位置が変化し、2人の姿や表情が明確になる中で、2人はこれが正体だと言うようにあわせて名乗った。
最初の声が背の低い男で、次の声が背が高い男で、2人は白いシャツ以外ネクタイまで黒いスーツ姿で、背の低い男が日本刀、背の高い男は大型の機関銃を手に持ち、肩に背負っていた。
「リード ファイヤー? 山中一輝? あなたたちがなぜここに? きさまたちはアメリカでアームドスーツ鎮圧に―――」
「お前の罠だってのはまるわかりなんだよ?」
「それにオレたちが苦戦するとでも思っているのか? 確認して見ろ!」
アーウェーがおどろいている中で銃を持った男が甘いぞと言うように返し、もう1人もその通りだと言うように続けた。
「細かいことは抜きだ。リード、先に切り刻ませてもらうぜ?」
「オレも撃ちまくるから当たるなよ?」
「Wasshoi!」
アーウェーがこれはと言う表情の中で刀を持った男が抜き放ち、好戦的な笑顔で言う中でもう1人も同じような表情で銃の弾丸を装填しながら答えると、刀を持った男が心得たと言うように言って飛び降りて来た。
飛び降りてきた後は言うまでもなく瞬時に大攻勢へと変化した。
アーウェーの前に立ち、少女にヴァリーと呼ばれた怪物が胴体から真っ二つにされたのを筆頭に、言う通りに切り刻まれ、銃弾を撃ち込まれて破砕された。
暴れる中で刀を持った男は銃を持った男の銃撃を見事に回避するように動き回り、銃を持った男も仲間に命中させないかのように銃撃は男に命中しなかった。
教室内にいる人間全員がだと思うが、1度は似たような光景を見たことがあり、これはと言う反応の中で映像は続くかと思う中で不意に教師が映像を止め、半場小さな劇場となっていた教室が本来の教室へと姿を戻した。
教師はと言えばこれ以上は見せなくてもいいなと言う表情で生徒たちに眼を向け、生徒たちも彼が何か話すなと言うように眼を向けた。
教師も問題はないことを確認する中で背後と言うよりも教室の前面に表示された立体映像のボードに字を書き始めた。
「―――言うまでもないことだが、あの2人がだれかわかっているな?」
「ビッグブラザーズ」
「―――それは彼らの内1人が自らに皮肉を込めて言った愛称だ。本当の名前は?」
教師は生徒たちに質問すると前側から5、6番目の人間が手を上げて発言すると、教師は一応正解であり間違いだと言うように返し、再度質問した。
「Commanderリード ファイヤーとAgent山中一輝です。」
「名前はあっているが、呼称と言うか、愛称と言うか、別名だ。本当の身分は?」
「リード ファイヤーが大将、山中一輝が中将で、2人ともワープの緊急時対応部隊総司令部、別名バランサー部隊の創設者にして、ブロークンゲート事件の最大の容疑者、いえ、被害者です。」
確認する中で別の生徒が補足するように言うが、教師は同様に少し違うと言うように返す中でまた別の生徒が答えを言った。
「事件の事実を公表後ワープを辞職、R & Y Security Companyを書類上企業、その後事件の事実調査を口実としたゲートイン後行方不明になっています。映像は事実の公表前を舞台にしたアニメです。」
「そうだ。それであっている。合格点だ。」
別の生徒は続け、教師はと言えばわかっているならばいいと言うように答えた。
「でも先生、どうしてこんなこと学校の授業や幼い時から何度も教えるんですか? アニメや映画、本がたくさんできていて、だれでも知っていることだと思います。」
「そうです。わたしの幼稚園の弟だって知っています。弟はハイブリッダー何ですがリード大将と山中中将に強く憧れています。」
「はい。オレは山中みたいに女神さまと1つになりたいです。」
教師がわかっているならいいんだと言う表情の中でこれまで答えていた生徒とは違う生徒が答え、あわせて似たような意見も飛び出し、最後にと言うように1人が言うと教室内が笑いに包まれた。
「―――そう。彼らはあまりにも日常生活に浸透した。彼らの存在はグローバルスタンダードで、授業がある意味も表向きにはない。だがその姿は事件の事実公表後、機構の広報活動、言わばプロパガンダの下で非常に着色された英雄として変化した。」
「英雄? 違うんですか? 彼らは現に世界を救ったんでしょう?」
「山中はリードをふくめ自分たちをビッグブラザーズと呼んだ。これはジョージ オーウェルと言うSF小説家が書いた『1984年』から来ている皮肉だ。偉大な兄弟、ビッグブラザーに支配された世界でだれもが偉大な兄弟を妄信している。」
教師はと言えば冷静に対応し、話しを続けると生徒が納得できないと言うように質問すると、教師は質問には答えるだけこたえるからあわてなくていいと言うように答えた。
「それは代行者のする洗脳のような効力に近いですか? VHE感染者でもあり、代行者の地位をも受け継いでいた彼にはできたんでしょう?」
「いい質問だ。それに近くも遠いが、山中はたとえ事実だとしても懐疑の念を向け続けることを忘れるなと言いたかったのだろう。事実君たちの中には彼らをよく知らない人間が多く存在している。機構のプロパガンダに踊らされた結果とも言える。」
別の生徒が教師の話に対して質問すると教師は授業を熱心に受ける生徒がいてうれしいと言うように答える中でスクリーンにはスーツ姿の2人の男が写った写真が教室の壁に映し出された。
2人の知らない内に撮影された写真のようで、2人から見て斜め右ほどから撮影され、ビルの屋上と思われる場所の柵に背を預け、楽しそうに談笑しているように見える写真で、2人の顔には屈託のない笑顔が見えた。
「これが現実の2人だ。記録が正しいならば事件の事実公表数か月前に撮影されたものだ。見てもわかるが山中一輝は日本刀は持ち歩いていない。リード ファイヤーも日常的に銃をさらけ出してはいない。」
「本物なんですか? まるで昼休み中のサラリーマンみたいです。迫力がない。」
「これが事実だよ。彼らも同様にわたしたちと同じ人間だった。女神の言葉を引用するならば、等しく人として脆弱で、等しく孤独に脅え、等しくだれかに愛されなければならなかった。」
教師はこれが真実だと言うように言い、生徒が信じられないと言うように聞くが、教師は紛れもない事実だと言うように返した。
「事件の事実公表から300年以上が経過しているが、これは彼らの暗躍の恩恵や、わたしたちの日々の努力の結果、それに事実が虚偽だったと言うわけではなく、長い時の中で再び安全神話と呼ばれるものの創造が始まっている。」
「でも彼らはウェブロイド保存がされているんでしょう? 疑似的と言え記憶や感覚、そして思考を高領域で精巧に再現されているならば危機を察知して通達してくれるのでは? 反応がないのは絶対に安全だからこそで、来るべき日に備え身を潜めているのでは?」
「それが安全神話だ。ビッグブラザーズが自らの確実性を否定する中で君たちは妄信を続けている。それにウェブロイドは結局機械で完全な本人ではなく、本人も普通の人間であり決して完全でない、警告への信頼は薄い。本当に信頼できるか?」
教師は関係ないかもしれないがこれが重要だと言うように続けると生徒がそれはと言うように返すが、教師はそうとも言えないと言うように返す中で、授業の終了を知らせる合図が流れた。
「―――この授業はここまでだ。参考として『1984年』を読み、任意でいいので1年以内に読書感想文の提出をしてほしい。そしてビッグブラザーズは決してわたしたち見守っておらず、たすけに来ないと言うことを決して忘れてはならないことを頭に入れて欲しい。」
合図を聞いた教師は切りがよく終わったが最後にこれだけは言っておこうと言うようにつけたし、課題を出された生徒たちからはほんの少しめんどうだと言うように声が漏れたが、多くは暗黙の内に了承したか声は出なかった。
授業が終わり一息を入れていたと言う可能性や、いやだと意見を言っても課題は変わることもなく、任意とも言ったので、黙っていた生徒もいると思うが、教師はと言えばそれを調べる余裕がないのが世の常とも言える。
教師、それに生徒が明確には何を考えたのかわからないが、教師は次があると言うように教室を出ていった。




