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数百年後

 正確には起動で、人間と言う生き物と言うか、オレが生きていた時に言う、意識の覚醒と定義する現象が起きた。

 人間で言うと眠っていたと言う状態に近いが半場死んでいたと言うか、仮死状態と言うか、冬眠状態とも表現すべきかもしれないが、オレは数百年と言う長い時間と形容される時間を眠っていていたが、言葉通りの永い眠りから眼を覚ました。

 眼を覚ましたとは言うが、仮死状態から目覚めたオレには身体と言う物体が存在しないと言うか、魂と呼べるものが存在せず、正確にはオレと言う存在と言うか、意識が電化的記録媒体に記録されていると推測できた。

 複雑怪奇な文章で意味が解らないと思われるが、簡単に言うと、オレの人間としての記憶と言うか、意識と言うか、脳の中味とか言うものを機械と言うかPC、正確にはウェブみたいだが、移植されてその1つになっていて、オレは起動をしたみたいだった。

 身体と言う生物としての根幹の物体が存在しない以上オレは自分自身で言うのもなんだが生物として定義されないし、身体を持たない以上5感を持たないことから感覚を認識できず、半場無に近い状態とも言える。

 無に近い状態とも言えるが、カメラと呼ばれる物体が視覚こと眼の役割を代行し、マイクが耳を、特殊なセンサーが臭いや味覚、触覚、それ以上にウェブを通じて膨大な情報をオレに与え知覚させて来ていた。

 非常に発達した科学技術であり、オレの時代には存在しない科学技術であり、膨大な情報から理解した情報だが、オレが死んでから最低でも数百年以上経過した時代のようで、オレの脳の記憶や意識、正確と言うものが機械に移植されているようだった。

オレと言う存在と言うか、仲間と言うべきかもしれないが、似たような人間はほかにも多く存在するみたいで、オレから見て未来人だが、彼らはオレたちのことを、『ウェブロイド』と呼んでいるようだった。

人間の記憶や意識、性格の技術的な保存に成功したみたいで、ノーベル賞受賞者や高学歴博士、文学家と言った、歴史に名を残すような秀才を選抜するようだが、オレも一応その1人と呼べる存在だったようだ。

「―――山中。」

「―――リード、ファイヤー、大将であっているか?」

「―――リードで言い、それと、どうした? お前らしくもない、目覚めるとは―――」

 一応と言うのはオレが起動したばかりで、これから行動するにおいて必要となる自分の記憶や感覚、この世界の情報を得ている途中で、自分が明確に何者か定義できないためで、PCで言う読み込み中と言えた。

 読み込み中と言う中でオレは何を考えたのか、本来の記憶と言うものも無意識な行動と言うか、機械では理解できない気まぐれとも言うのかもしれず理解できないが、自分のいた場所と言うか建物の屋上にたって空と言うか、地上を見ていた。

 見ていたと言うがこれはカメラを使い視覚化しているとも言えるが、オレは無意識に大量の生活補助用の装置が搭載された小型の衛星を飛ばし、屋上の柵の前に生前の、それも若い時、推定して2、30代の時の姿を立体映像として投影していた。

 服装は黒いスーツ姿で、ネクタイまで黒くシャツは白、膝よりも長く、足首よりも短い長いコートを着て、手には合成だと思うが皮手袋をして普段は被っていると思われるが片手には帽子が握られ胸に当てていた。

 服装は本来の自分自身と言われた存在に嗜好性に依存していると推測され、少しずつ記憶と言うものをオレは理解と言うべきか、正確には読み込みと言うべきだか、自分が何者かの理解を始める中で、立体映像から見て後ろから声をかけられた。

 立体映像は非常に精巧で一見すると立体映像には到底見えず表情や服、先ほどから少し強い風も吹いていて、小さいほこりと言ったものはすり抜けていっているが、環境に合わせた揺れなどと言った変化も再現していた。

 声をかけられたオレの立体映像はそれだけではなく振り返り、振り返った先にいる男に対し名前を聞く中で帽子を被り直し、男はオレに再び質問を返した。

 男をオレはリードと言い、リードは山中とオレを言ったが、読み込んだ記憶が正確ならばこの名前に間違いは存在しないと言える。

 記憶は整理するとオレのと言うか、オレだった人間は本名山中一輝と言う男性で、元犯罪者で、オレに声をかけた男はリード ファイヤーでオレとは共犯者と言う関係だったみたいだ。

 常識的な観点から言えば犯罪者が優秀な人材としてウェブロイドに記録されるのは不自然だが、犯罪心理学の観点上、特異な思考の犯罪者の異常な行動性を理解できるエキスパートとも言え、記録されるのもある意味道理が通っていると言える。

 リードと言う名前はニックネームのような物ではなく本名のようで、容姿から見て日本人ではなく、アメリカ系の白人に見えた。

 年齢と言うか、ウェブロイドの効力によって再現された立体映像の姿は2、30代と言うか、オレよりも若く、かなり背の高く、細身の男を映し出していた。

 長く伸びたと言うか、伸ばした髪にサングラス、来ている服はオレと違い普段着の言う姿だった。

「―――まだ読み取りがうまくいってないな?」

「―――――ぁ~。」

「機構やワーパー、それに一部の民間組織が情報制限をしている場合もあるしな。」

 整理すると言うか、正確には読み込んでいき正確な情報を閲覧すると表現すべきだが、リードはオレに対しまだ寝ぼけているなと言うように言い、オレがどうだろうと言う反応の中で、リードは少し時間を待てと言うように言い、床に座った。

 オレもあわせるように床に座り、機械として思考すると言うか、判断しているのかもしれないが、彼に危険だと言う記録みたいなものはないし、仲良く話そうと言う雰囲気になっていた。

 リードが何時からと言うか、オレとは活動時間と言うものが違うみたいで、つい先ほどと言うように目覚めたオレと違い、立体映像ではあるが眼は眠気さと言うものは感じられない中でオレは大きく長い欠伸をしていた。

 リードの言う機構とはオレの時代で言う国際連合に相当する組織で、ワープはその管理下の半国際、半民間の軍事組織と言うかPMCで、ほかにもあるみたいだがオレたちは情報はその組織から一部に制限が設けられているみたいだった。

 事実名前は思い出せるが記憶の一部分と言うか、たとえると穴あきや虫食い、文字の一部を黒くに塗りつぶされた教科書を読んでいるような気分に近い気がした。

「―――自分がどんな人間だったか思い出せたか?」

「ぁー、まぁ、一応―――」

 人間で言う健忘症と言う状態が一番妥当なのかもしれないが、思い出しているが思い出していないと言うか、記憶が混乱していると言うか、回転がうまくいっていないと言う状態で、リードの質問に対しオレは一応と言うように答えるしかなかった。

 眠っていたと言うべきか前回の起動終了後から長い時間が経過しているようで、オレは表向きにリードと話す状態から見て普通だが情報の読み込みを急いでいる状態だった。

 急いでいるとは言え、急ぐと言う意味と言うか、理由を理解できないし、だれかと話すと言うか、眼を覚ましてここに存在すること自体が機械として奇妙な表現だが億劫な気がした。


 IT技術、医療技術、それに人間の科学技術の限界の集大成とも言えるのがウェブロイドだ。

 人間の個性を技術を用いてIT機器へと移植し、非常に精巧な仮想人格を形成することで、本人が死亡後も活動を続けさせることが可能で、ウェブロイドには凡人も存在するが、一部の特殊な才能や記憶、思考を持った人間の能力を保存することが本質だ。

 本質とも言えるが本人死亡時の人権と言った複雑な問題も多く存在するが、現時点と言うべきだが山中はどう考えているかわからないが、オレリードと言い、ウェブロイドとして保存されると言うのは予想外の事態だと言えた。

 予想外と言えば山中の行動性で、生前一緒に行動していた時の記録が残っているが、現状の山中は酷く怠惰と言うか、寝起きで起源の悪い男と言う雰囲気で、生前のまじめだったと言う記憶と少し違う気がした。

「所属は?」

「機構直轄PMC、ワープ中将、山中一輝、PMASCAGS大佐でもある。」

 予想外の事態とは言え幸いと言えるのは相棒だった山中一輝が同じようにウェブロイドにされていることで、オレは山中が起動したことを確認した中で声をかけ、話そうと言うように質問すると山中は答えた。

「お前はリード、オレのビジネスパートナー、で間違いないな?」

「―――無論だ。」

 目覚めた山中はと言えば眼覚めと言うか、起動こそしたがオレが起きるほどのことと言うか、時と言うか、場所なのかと言う表情を立体映像の顔がしている中でオレに質問し、オレは間違いないと言うように答えた。

「―――300年以上の眠りから覚めた気持ちは?」

「そんなに長い時間起動していなかったのか? オレは?」

「SHOGUN気分か?」

 本題はと言うようにオレは聞くが山中は自分の所業を思い出せないと言うか、知らないと言う反応で、返しオレは思わず冗談半分に聞いた。

 SHOGUNとは日本の江戸時代を統治していた存在で、現在で言う内閣総理大臣に相当する。

 初代将軍徳川家康を筆頭に15代まで続き、300年以上の長い政権維持を実現し、当時の首都を世界一の大都市へと変貌させたことでも有名で、オレはそう言う気分かと、ある意味いい身分だなと言うように聞いた。

「―――いや、お前もだが、オレは単なるPOだ。正確には元で、そんな力も何もないのに、世界平和なんてなふざけたことに手を貸しているがな?」

「―――」

「アドバルーンの監視の方がまだ有益だ。」

 半場冗談で言ったオレに対し、山中は冗談では済まされないさと言うように答え、オレが黙っている中で言葉を続けた。

「―――何にしてもだ。一服するか?」

「―――知っているだろう? 吸わないんだ―――」

「そう言えば、そうだったな? いや、オレも止めたのか―――」

 一時休憩しようと言うようにオレは言ってタバコを山中に差し出した。

 オレたちは仮想人格とは言えば生前の記憶や性癖、行動心理と呼べるものは精巧に再現されているし、オレは立体映像とは言え、タバコの箱を渡すが、山中は悪いがと言うように返し、お前はと言うように、返し、オレもタバコを止めたことを思い出した。

「―――GAIKOTSU、ファーミュアのタバコか―――」

「ハイブリッダーだからできる愚行だな。」

 箱を服の中に戻しかける中で不意に山中がタバコの銘柄を言い、オレもそう言えばと言うように返した。

 GAIKOTSUと言うタバコで、地球の人間が宇宙に出てある惑星を農業用に改造した惑星ファーミュアで造りだしたタバコで、成分量がどう考えても致死量寸前で、黒い箱に骸骨と砂時計と言う不気味な絵が書かれていた

 オレの言うハイブリッダーとは未来で生まれた人間の新人種と言うか、遺伝子改良を受けた人間で、オレの眼は普通の人間と違い白目の部位が少なく、眼全体が黒めになり、感情や調節でだが青白く光ることがある。

「―――オリジナルの記憶に従うだけの、オレたちに何ができると言うんだ―――」

「―――仕方ないさ、オレたちは粗悪な模造品だ。逆らえないのが現実で、受け入れるしかないさ―――」

 山中がオレのハイブリッダーのことを思い出しているかと言う話は放置して、山中はこんなオレがいる意味があるかと言うように、憤りを隠せないと言うように言い、オレは半塲あきらめろと言うように言った。

「―――だが気配と言うものが存在するのは真実だろう?」

「感覚を代行する機械の微妙な変化にしか過ぎない―――」

 オリジナルこと本物が持っていたか不明だが、存在意義と言うものだと言えるが、山中が求めている物はそれだと言え、オレはそれならばこれ以外にないと言うように聞くが、山中はこんなことではないと言うように返した。

「お前の悪い予感は結構外れていたと思うが、オレはなんとなく、お前のその悪い予感を信じてみたいと思っている。」

「コンピューターにウォッカでも入れられたか? まあ、でも、生きていた時と言い、オレを信頼しすぎるな。リード―――」

 目覚めること自体めずらしいし、オレは山中に賭けてもいいと思うが、山中は冗談も交じっているがだめだと言うように返した。

「お前は生前血筋もあるがUWABAMIだったろうが? お前は? オレもそれ以上で酔うと思うか?」

「―――機械にそれは通用しないだろう―――」

「―――――」

 オレの返して言ったUWABAMIとは日本語で酒の酷く強い人間を示す表現の1つで、道だと言うように返すが、冷静に考えろと言うようにオレは返され、オレは思わず口を閉じてしまった。

「だが、胸騒ぎがすると言う表現がするが、こんな感じだったのかと思いはした。」

「動きもしない胸が騒ぐのか?」

「―――――」

 話しをとにかく冷静に考えなくてはいけないと言うように山中が返す中で、オレは冗談交じりに返し、山中は黙ったが、少し表情が変わったと言うか、ひきつった。

「―――それ以前に脳みそもないな?」

「ピーターたちはご立腹―――」

 後少しだなと不意に思い、オレはもう一押しと言うように言い、山中は軽く笑いながら返した。

「ギャラクタスに倒されて―――」

「笑ったら負けではないだろう。」

 抑えろと言うように山中は言葉を続けるが、オレはもうだめだなと言うように返して笑い出し、山中も笑い出した。

「―――第一、オレたちは、通信を利用した共有された人工的な記録で―――」

「マーヴェルゾンビーズも冷凍庫からいなくなったしな。」

 笑いを抑え、いい加減にしろと言うように山中は返すが、オレは追い打ちをかけ、オレたち2人は少しの間お互いに大笑いをしていた。

「―――とにかく、こんな時にアメコミ利用したブラックユーモアはなしだ。」

 大笑いしていたが、山中は少しして仕切り直すぞと言うように言い、オレは言うとおりにするよと言うように反応した。

 山中を見ると先ほどよりも表情が緩んでいるし、オレは少しだけだがいい刺激を与えることができたと思った。

「無駄に精巧に再現して、腹筋に悪影響だ。」

「内臓とびでそ―――、わかった。黙る。しばらく止まらないもんな。」

「―――――」

 仕切り直すと言うように少し強引にでも真剣な表情をして話そうとする山中にオレは続けるが、山中が手で自分の口を抑え、本気で笑いを抑えて震えているのが見え、オレは落ち着くまで黙っていることにした。

 人のこと言えないが悪ふざけを始めたり笑い出し、酒飲みだすとお互いに止まらない始末だったことをも記憶にあった。

「―――本題に戻そう。この光景を、眼下に広がるこの光景をどう思う?」

「―――日本、か―――」

 落ち着くのを待っていると山中の後ろにロッキングチェアが姿をあらわす中で山中は本物の人間が休むかのように横になると、俺に顔を向け質問されると、オレはと言えば先ほどまで山中が向けていた視線の先に眼を向ける中で、その視線の先の主語を口にした。

 山中もあわせるように向ける視線の先には山中の時代よりも、それにオレリードの生まれた時代よりも遥か先の未来の日本の光景が広がっていた。

「―――殺風景だな?」

「スペースフロンティアによる宇宙植民地移転に、追従して地球人口の大規模減少、それにお前の時代ほど照明機器が使われていないからだ。」

「―――言葉通りのコンクリートジャングルだな―――」

 風景に対して感想を出したのは山中で、オレは仕方ないと言うように返しながらわかっていると思うし理由を機械的に言うと、山中はわかっているが、改めてみるとと言うように山中は言葉を返した。

 山中の言う言葉は言う通りの正解と言え、オレたちの目線の先と言うか、足をつけている場所以上に高い建築物が大量に並び、空の一部を塞いでいた。

 山中の説明した通りで、現在の日本と言うか、地球全体でだが、人口が減少し、照明機器も使われておらず、建物は無人の場所が多いのか、暗闇の中で山中の言う通りの無音のコンクリートジャングルと化していた。


 人工の高層建築物が密集した場所を時として熱帯雨林の森林地帯に例え、コンクリートジャングルと言うことがあるが、オレ山中の生まれた時代はその始まり頃だった。

日本の首都圏の都市の夏はまさにジャングルにふさわしい暑さと密集性を持っていると思うが、現状の眼の前の光景はと言えば人の気配も少なく、時間的な要素も存在するが静まり返った夜の原生林のように静かだった。

 オレが生まれたのは現在ウェブロイド化された時代から数百年前、正確には20世紀末期で、こんな時代が到来するとは思わなかったと本人は考えると思った。

「―――発端は、プロジェクトカグヤ、第3次世界大戦-―――」

「ブロークンゲート事件。」

 口を開いたのはリードで、原因と言えば悪く聞こえるが、現状の理由を出し始め、オレはこれを忘れるなと言うように言った。

「―――オレたちは、張本人だろう?」

「そうだったな?」

 言われて見ればと言うようにリードは顔を向けるとオレは言うまでもないだろうと言うように聞き、リードは返事を返し、首を軽く縦に動かした。

「―――どう思う?」

「―――もう手遅れだろう? オレたちが存在する時点で?」

 覚醒にあわせ、必然的に起きる事象が存在すると言え、リードが何が起きると言うか、いつ起きると言うか、どんなことが起きると言うように聞くが、オレは起きるのはわかるが何かはわからないと言うように返した。

「―――オレと言う存在自体が異端と言うことを忘れるな。」

「―――気づけなかったオレも同罪か―――」

「お前に罪はない、引き金はもうひかれていた。」

 言葉を返す中で立体映像に乱れが一瞬生じたが、オレはと言えば気にすることなく続け、リードも言われて見ればと言うように返すが、オレはお前は悪くないと言うように返した。

「―――これがオレたちの、オリジナルがある意味守った未来、か―――」

「産めよ、増えよ、そしてさかえよ―――」

「この繁栄は神さえも予想外の範疇だ。事件の時と同様だ。そして結びつきが始まる―――」

 思い返してみればと言うようにオレが言う中で、リードも同じように言うように口を開くが、オレはそれは少し違うと言うように返した。

「―――人間は貪欲だ。ハーフハイブリッダーになったオレが言う資格はないが、天国でも不満を言い、地獄を現世よりも甘いと言い切る酷い生き物だ。」

「―――戦争も、飢餓も、貧富も、差別も、それに事件の事実以外に問題が存在しないこの世界で?」

「―――――生まれながらのハイブリッダーのお前に、人間の貪欲さはわからない―――」

 思い出せと言うように続けるが、リードはここまで来てと言うように少し調子よく返すが、オレは侮るなと言うように返した。

「―――――?」

「―――どうした?」

「―――いや、何か、ひどく大切なことを忘れている気がするんだ―――」

 お前が言うと深いなと言うような表情をリードが見せるが、オレは不意に考えてみると何か思い出せないと言うような感覚を覚え、リードも気づき声をかけるが、考え始めてしまった。

「―――おい!? 山中?」

「―――? どうした?」

 絶対に忘れてはいけないことがあった気がすると言うか、オリジナルが最も重要としていた記憶と言うものが思い出せない気がすると考え、思いだそうとする中で、リードが声をかけて来た。

「―――お前―――」

「―――な、なんだよ? あ―――?」

 近づいて来て頬に触れ顔に何かついているかと言う雰囲気ではなく、リードは目元に触れ、オレは目元が潤っていると言うか、涙を流していることに気付いた。

 感情が非常に精巧に再現されているためか、湧き上がると言うか、こみ上げると言うか、抑えきれないと言う部分まで再現されているようで、泣いてしまうほどの記憶が存在するが思い出せないようだった。

 正確には思い出せないと言うか、制限や削除された可能性も存在するが、その真偽は自分では思い出せないと言うか、取り出せない状態のようだった。


 ウェブロイドには人間としての感情は存在しないが、生前の記憶や思考性、判断能力など、細部まで模倣されるが、製作する人間たちの意図も存在し、完全な再現はされていない現実が存在する。

 人間の作り出すもの自体と言うか、この世界自体完璧とは程遠く、山中も涙を流していたことをオレに触れられて遅れて理解したようだった。

 厳密にはオレたちは立体映像で、触れることはできないが、山中はどうしてと言うように、理由を探そうとしているのか、映像に乱れが再び生じ、少し反応が悪くなり始めていた。

「―――すまない―――」

「あやまるな。恨むべきは死しても、オレたちを酷使させる機構だ―――」

「―――涙を流すほどの、なんだ思い出せない―――、それに―――」

 あやまると言うよりも感謝すると言うように言ったが、オレはあやまる必要はないと言うように言ったが、山中はと言えば理由を考えようとする中で、余計に立体映像の乱れが強くなり人間としての形も崩れ始めていた。

「―――少し休め、目覚めかけで調子が悪いんだろう。再起動してからの方がいいだろう。」

「―――――しかし―――」

「―――大将命令だ。」

 最悪な事態こと、消失や不具合で消去される可能性も存在し、オレは少し休めと言うように言い、山中はそれでは問題の解決にならないと言うような反応の中で、オレは気も進まないが上官の権限を発動させた。

「―――わかった―――」

 言われたら引き下がるしかないと言うように山中は返事を返すと姿を消し、先ほど腰かけたロッキングチェアも姿を消し、その場にはオレだけが残された。

「―――――」

 山中の姿が消え、少しの間オレは山中のいた場所を見ていたが、少しして再び山中とみていた光景に眼を写した。

 気温からの推定だが肌寒い風が吹いており、オレの髪や服が周囲の光景にあわせて乱れを起こしていたが、オレは気にせず、と言うか、タバコを箱から取り出していた。

「―――すまない―――」

 どこまで精巧に再現しているのかと聞きたくなるが、箱の中には8本残っていて、手に取ったものをひくと残り7本で、オレはと言えば火をつけ、吸い、紫煙を吐きだす中で、思わずと言うように漏らした。

「―――やはり、オレは許せん―――」

 あやまったが、だれにあやまったかと言えば山中に対してで、オレは山中の涙を流した理由を知っているが、黙っていた。

 黙っていたと言うよりも理由に関係して、ウェブロイドと化したオレがする意味がないが、復讐と言えば道理が通る物で、人間の思考を再現したウェブロイドの不具合とも言えた。

 後世に有益な利用を目的として製作された内の1人と言うか、オレたち2人だが、オレたち自身が自分たちにどこまで価値を持っているか、持っていると考えていたか、それは本物ではないオレたちにはわからない話だ。


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