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情報戦  作者: ADJ
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1.情報科と通信科

ここからが本編になります。

 情報教育センターのデータベースシステムは、一日に一度、久里浜の通信学校にあるファイルサーバに軍用回線でバックアップされることになっている。システムのトラブルや攻撃によるデータ喪失を防ぐためである。無論、BluerayDiscメディアによるバックアップもまた別に行われている。


「よーし、バックアップ終了、やっと久里浜との同期取り、終了しました」


通信科の横尾がマウス操作から解放されると、ほっとしたような声を上げた。横尾は、立ち上がって大きく伸びをすると、肩と首をコキコキと鳴らす。


「バックアップまでは、どうしても緊張感が抜けないですね、これで一段落です」


 本日の担当者割では、ただの決まりごとで同学年とは言え、指揮官が中島、部員が横尾となっている。いざというときの責任と指揮命令系統をはっきりさせるためである。そして情報科と通信科。互いに顔見知りといえども、科が違うとちょっと会話がよそよそしい。


「お疲れ様です、お茶にしましょうか」

「ああ、どうもありがとうございます」


 情報科の中島が微笑を浮かべながら、茶の用意をする。茶道部の部長という別の顔をを持つ中島は、茶道の点前と同じような手つきで茶道具を取り出した。

 もちろん、ここで入れるお茶とは、煎茶でもなければ、紅茶でもない。手作りの茶筅で点てた抹茶である。もっとも、使える茶道具も湯を沸かす手段も限られているので、正式とは到底言えない。しかし、ポイントを掴んだ手練やタイミングを活かすことで、素人離れした味わいを引き出すことが可能となる。


「あちらの二人もお呼びしましょう、お菓子も残っていることですし」

「了解しました」


横尾が管理室から顔を出すと、珍しく情報教室に残っていた二人の下級生を呼んだ。宿題かレポートかですっかり煮詰まっていた下級生は、先輩の招きにちょっと緊張しながら管理室に足を運ぶ。


「お邪魔します」

「ゴチになります」


 下級生二人と横尾が応接用のソファに腰掛けると、すっと、横尾の前に茶菓子が出された。防女料理部で製造され、昼休み開始後数十秒で売り切れるという入手困難なスイーツである。横尾には知識がないが、タルトの一種らしい。切り分けた横の断面を見るかぎり、クッキー状の台に苺とアーモンドをあしらったカスタードクリームが乗せられ、更にシナモンやココアが振りかけられて、オーブンで焼き目が付いている一品のようである。


 このスイーツから目を離そうったって、そう簡単には離れそうもない下級生二人、多分自分がどんな表情をしているか自覚もなさそうだが、その意識をそらすために横尾は二人に話しかけた。


「んー、高橋さんと山田さんですか、えっと、ずいぶん遅くまで頑張っているみたいだけど、なにやってたのかな」





陸上自衛隊の職種を参考にすると、諜報、防諜は情報科の職種に入っているようです。

プロフィールをこちらに書かせて頂きます。


中島久美子:情報科二号生徒、諜報専攻、茶道部長、茶道の有名流派の傍系であり、代々名家の茶道師範と諜報を担った家系。


横尾加奈子:通信科二号生徒、ネットワークシステム専攻、知能情報研究会所属、長兄が某京大の工学部情報学科の教官(助教、工学博士)


ともに、応用情報技術者試験資格取得者。

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