修練
そしてホテルの一室に着いた俺たちは、荷物を置くとすぐにフロントで修練用の場所がないかどうか聞きに行った。
「それでしたら、裏庭は素振りぐらいのスペースはありますよ。それでもよろしいでしょう?」
「それでかまいません。ありがとうございました」
俺たちはすぐに、裏庭に歩いて行った。そこには模擬戦闘にもってこいの広さがあった。確かに素振りだけのスペースと言えるだろう。
「それじゃあ、模擬戦を始めるから準備をしとけ。といっても柔軟運動程度だがな。俺は結界を張っておく。周囲に影響を与えないようにな」
「「はーい」」
二人が柔軟運動をしている間に、俺は結界を張るためにぎりぎりの所に四枚の札を張りに動いた。四端にある木に張った。そして札に魔力を流し込み、結界を完成させた。よし、これで終わり。
「これで良し。それじゃあ、そろそろ始めるぞ」
「それで武器はどうするんです?まさか素手でする訳じゃないですよね?」
「当り前だ、武器はこれ。世界樹の枝から作られた剣と槍。これなら存分に振り回せるだろ」
「了解。ところでこれ、どんな結界なんだ?影響を与えないって言ったってどうやって?」
「この部分だけを異界につないだ。つまりいくら振り回してここを傷つけても、現実世界に影響は出ない、というわけだ」
二人に剣と槍を渡して、俺は二本の木刀を構えた。素手による近接戦闘は俺の得意分野だから、ひょっとしたら間違えて二人の武器を破壊してしまうかもしれない。それじゃあ、修練にならない。だから俺は、二番目に得意な双剣を選んだ。
そこから俺たちは修練を始めた。初めは軽めに、だけどだんだんと激しく動き始めた。周囲には俺たちの掛け声と、ぶつかり合う音が鳴り響いた。
「どうした!?動きが鈍ってきてるぞ!もう疲れたとか言ってくれるなよ?」
「当り前だろ。天心流剣術――――崩天黒刃!」
卓也は一本の剣で同時に三連撃を叩きこんできた。その剣撃を俺は全ていなし、容赦なく手首に一撃を叩きこんだ。
「隙が多すぎるぞ!次、来い月花!」
「分かってるよ!北竜葬送流槍術――――葬竜演武!」
槍頭と石突きの両方で俺にぶつけようとしたが、双剣を石突きの時にぶつけて体勢を崩した後、卓也と同じく手首に容赦なく叩きこみ武器を落とさせた。
「ほい、これで終わり。あのな、お前らそんな隙が多い技を使わなくてもいいんだよ。これが模擬戦だったからいいけど、もし実戦だったらお前らが攻撃を当てられてたのは手首じゃなくて頭か、体だ。
いつでも隙は少ない方が良い。まあ、わざと隙を見せて挑発するって手段もあるけどお前らにはまだ早い」
「「はーい、わかりましたよ」」
「そうふてくされるな。前にやった時よりは技の連度も実力もはるかに上がってる。そう悲嘆に暮れることはない。ま、今のまんまじゃ俺から一本取るのには相当時間がかかるがな」
そんな事を話していると、突然俺が敷いた結界が壊れた。何事かと思ってそちらの方を向いてみると、そこには神崎さんが立っていた。
続けて書いてみました。いや、面白くなったと思うので楽しんでください。
では、また。(>_<)/