ハッピーバースデイ!
「え……?」
「お誕生日おめでとうございます!」
「誕生日?俺の?」
「他に誰がいるのよ?」
俺の誕生日を祝うだなんて……もうそんなの数年前からやって無かった。一人でやるなんてもの悲しいだけだし、それに普段は家にいなかったし。
「兄さん、驚き過ぎじゃない?いくらなんでも、さ」
「……しゃあ無いだろ?こんなの父さん達が生きていた時以来なんだから」
「まあね。それでも今の兄さんにはこれだけの人がいるんだよ。それにレジルさんとジェルザさん達も来てるんだよ?」
「あいつらが?」
まさかあの二人まで来てるとは思わなかった。俺は靴を脱いで居間の方に入ると、色とりどりの料理と「誕生日おめでとう」と書かれたケーキが置いてあった。
「やあ、慎也。お久しぶり」
「お前ら……。よく来れたな?」
「ま、何とか日程を設定してね。いやあ、驚いたよ。まさか今日が慎也の誕生日だったなんて」
「教えてなかったからな。当然だろ」
「なんで教えてくれなかったんだい?みずくさいんだから。事前に教えてもらっていたらもっといい物を用意できたのに」
「……教える事が出来なかったんだ。そういうの苦手だったし、それに――――」
「それに?」
「なんか恥ずかしいだろ?この歳になってまで誕生日を祝ってもらうって」
「違いないね。それでも今日は皆の好意を受け止めなよ」
俺達はその後、ケーキを食べたり喋ったりしながらパーティーを楽しんだ。俺は庭に出て空に浮かぶ月を眺めていた。そこに真由美と花蓮が出てきた。
「楽しんでる?」
「二人とも……。うん、楽しいかな」
「それは良かったです。企画したかいがあります」
「明美に教えてもらったんだろうけど、よく開こうと思ったね?」
「当然じゃない。そんな事」
「「だって、貴方の事を本当に大切な人だと思っているから」」
この二人は本当に……。俺は何も言わずに二人にキスしていた。二人とも何も言わずにそれを受け止めた。
「さて、それじゃあ家に戻ろう。ここは寒いからな」
「「はい」」
俺は二人と一緒に居間に戻り、ドンチャン騒ぎに参加した。その時間は俺が今まで送ってきた時間の中でもトップ5に入る位に楽しかった。