退院
「さて、と」
俺の体調が完全に復調したのは、あれからさらに三日後だった。荷物を持って病院を出た。色々と先生に言われたが、謝罪とお礼を告げると先生は静かに微笑んだ。
「生きていれば、それでいい。私が出来る限り手を尽くすから」
「はい。それでは失礼します」
俺は今一人。久しぶりだな。任務以外で一人になるのは。なんか、ちょっと寂しいな。そう思っていた自分に一番驚いた。
彼女らに会う前は、何時も一人だったのに。弟子とかチームのメンバーとか色々いたけど。俺はそれを『ただの仲間』として扱った。『家族』じゃない。あくまで『仲間』。
この差は小さいようで大きい。俺に取っちゃ取るに足らないものだと思っていたし、それに作りたくなかった。自分にとって本当に大切な存在というのを。
作ってしまったら、怖くなる。それを失う事に。そして失ってしまえば俺は壊れてしまうだろう。
「いや、いい訳か……。俺だって分かっていたんだ。いつか受け止めなきゃいけないって事ぐらい。それでも俺は……」
『そこまで怖がる必要はないだろう?我が半身よ』
「神喰狼……。訊いていても黙っていてはくれないか?」
『だが、断る』
「お前は少し漫画の読み過ぎだよ……。それにしても戦闘中でも無いのにお前から話しかけてくるとはな。少々驚いた」
『我にも語りたいと思う時ぐらいあるさ。傷に関しては……大丈夫そうだな』
「まあな。それで何の用だ?」
『なに貴様にそろそろ託そうと思ってな。……我に託得られし叡智の数々を』
「へえ。そりゃ楽しみだが……残念もうすぐ家だ。その話はまた今度な」
『ふむ、構わんさ。それではせいぜい楽しんでくれ』
?どういうことだ?今日なんかあったっけ?あんまり記憶にないんだが……。そう思って俺が扉を開けると――――
『ハッピーバースデイ!』
いきなり俺の目の前でクラッカーが鳴り響いた。な、何なんだ!?