帰還
俺は術を使って、家の前に着いた。しかし、疲れたな。でもまあ、こんだけ早く終わったんだし良しとしよう。
「ただいま。――――って、おわ!?」
「「お帰りなさい!」」
扉を開けた瞬間に、いきなり二人が抱きついてきた。持ってた鱗と爪を地面に放り投げて、何とか抱きとめる事が出来た。
「どうしたんだ?」
「怪我とかしてない?」
「だ、大丈夫だけど」
「そうですか。……よかった」
今度は一緒にへたり込んだ。一体二人はどうしたというんだ?
「嬉しいんでしょ。貴方が無事に戻ってきたから」
「そうだな。しかし始祖龍と相対しても、無傷か……。本当に化け物じみてきたな」
「え?無傷じゃありませんよ?今は魔力で支えてるだけで、結構やばいです」
「は?」
えーと、あばら骨がやばいかな?戦闘中は大丈夫だったけど、これひょっとして内臓にも刺さってんじゃないの?それに殴った右腕は複雑骨折。それに足は左の骨が粉砕状態、かな?
何とかごまかしてやってきたけど、結構厳しい。俺は前のめりに倒れかけた。二人が支えてくれたけど、さらに痛みは襲ってくる。仕方なく、先生に治療要請のメールをした所で意識を失った。
「あら、起きたのね」
「……先生?ここは?」
「動かないでね。ここはフェンリルの特別集中治療室。あれから、二日経ってるわよ?高熱に想像してた通りの消耗と怪我の数々。よくもあんな状態でいられたわね?」
「ははは……。その通りですね。まあ生きていられただけ、儲けもんでしょう?」
「そりゃあね。どんな傷でも私が治療すれば何とかなるわ。寿命や心肺停止とかそういう例外の死は無理だけど」
「そんなのも治療できるなら、それはもう神の御技ですけどね」
「そうね。……さて、それじゃあ私はもう行くわ。後はごゆっくりどうぞ」
「え?」
先生とは反対方向を見ると、そこには二人が肩を寄せ合って眠っていた。俺はそれを微笑みながら見ていた。そこには生きている、という実感があった。