その後
客観的な視点から見てたわけなんだけど。何これ?この無双ゲーの様な圧倒的な差はなんだ?ぶっちゃけ結構頑張ってた俺ら、無駄じゃね?
『気にするな。我が半身よ』
いや、気にするだろ。しかも勝手に心臓なんか喰らっちまって。とんでもない量の情報が流れ込んでくるし。これ捌くの、結構大変なんだぞ?
『それ位自身で何とかしろ。我は働いたからな』
こいつは……。もういいや。まあ、龍種の知識が俺の頭に結晶として集まっていく。ぶっちゃけ始祖龍というだけあって、量が半端じゃない。知識、記憶、感情その他諸々が一気に流れ込んでくる。一体何年生きてんだ?
『ざっと鑑みて、千二、三百年と言った所か?放って置いたのがいけなかったのか?』
っていうか先々代の人、だっけ?迷惑な事だな。つうか、先々代の人って誰?確かお前、父さん達が封印を破ったんだよな?
『あ奴等は、先代が死んで冬眠の状態だった我を強制的に覚醒させたのだ。まあ、そのおかげで我が半身の身体の中に入る事が出来たのだから、良しとしよう』
そう言う問題じゃないと思うんだが?……よし、これで仕分け終了っと。さて、意識を元に戻せ。
『もうか?』
俺の身体の使い勝手が良いのは分かったけど、もう半刻過ぎてるから。契約には従え。
『仕方ないな。これで良いのか?』
「ああ、戻った戻った。……あれ?どうかしましたか?白竜様」
「ああ、いや……。君はいったい何者だ?」
「は?質問の意味がよく……」
「始祖龍様を圧倒するほどの君は、一体何者なんだ?」
「俺は乾慎也。その身に神喰狼を宿し、その力を行使する者。今のは俺の実力と言うより、神喰狼自身の力です。俺自身はどこにでもいる、ちっぽけな人間です」
「そう、だな。しかし始祖龍様の心臓を喰らうとは。驚きだな」
「そうですね。めちゃくちゃ硬いですもんね。さて、俺は素材をいただきます」
「構わないが、分かりにくい場所にしてくれ。後で土に埋めて埋葬するから」
「分かりました。とはいっても俺が欲しいのは爪と鱗を数枚だけなんですが」
「……それだけでいいのか?」
「ええ。元々その予定でしたし。……さてこれで良し、と。それでは、俺は失礼させていただきます」
「ああ。ありがとう」
「いえいえ。この服、どうすればいいんですか?」
「貰ってくれ構わない。せめてもの礼だ」
「それでは、失礼したします。これからいろいろと大変でしょうが、ご健勝をお祈りしています」
俺はそう告げると、足元に魔法陣を展開して元の世界へ移動した。最後に竜王の方々が全員で『ありがとう』と告げたのが聞こえた。それで、俺はもう十分だった。
始祖龍が死んだ事で、龍の世界は一時期だろうけど混乱する。暴動も起こるだろう。それでも、あの方々なら。本当に民の事を、世界の事を考えられるあの人達なら、何とかなるだろう。俺はそう信じている。