Ex.フェンリル視点
この身体を使うのもこれで二度目か。やはり馴染むな。
「貴様、入れ替わったな!?」
『そうだよ。しかし、あの時生き残った小僧がここまで強くなるとはな。放っておいて正解だった、という事かな?』
「黙れ!!貴様の所為で、わが父は、母は!その命を失ったのだ!」
『それは、我の所為ではなく先々代がやった事だろう?我らにそのような感情をぶつけてくるな!』
我が半身と契約を交わした事で、我が半身は自身の身体で発揮できる百パーセントの力を開放できるようになった。だが、やはり人間の身体は制限が掛かる。
だから厳密には我が半身が使っている力は百パーセントでは無い。だが、我には制限などない。制限など軽く突破できる。
『だからこのような事も出来るのだ。我には蓄えてきた知識もあるしな』
――――其は白雷。総てを撃ち抜く物なり――――
――――世界を白へと誘い、その本領を見出す――――
――――さあ、汝の総てを今ここで発現せよ――――
――――“白雷天牙”――――
これは、神のみが使える神話魔術。上級も下級も存在する事のない、究極にして完全な魔術体系の上位神の身が使える術式。
白き雷が降り注ぎ、相手の身体を喰らい尽くす。そのあまりの威力の為、体ごと魂を喰らう場合もあるという神話魔術の中でも禁呪指定の術だ。
『まあ、貴様はこの程度は死なぬだろうがな』
「グォオオォオオォォォォォォオオオオオッッッッッッッッッ!」
体を、というか鱗を削ぎ続ける。こういう場合は龍の身体というのは不便だな。頑丈すぎる。雷は鱗をも貫通し電撃を流し続ける。魔力で体を回復し続ける所為で、永遠にも等しい痛みを味わう。
さて、これを放つと体がとてつもなく疲れる。さっさと終わらせるとするか。素材は自由と言っていたな。それならばこうするとしよう。
我は我が半身の右腕に我の牙の力を集中させ、一気に心臓の上にある部分に向かって放った。我が一撃は、一気に龍の心臓を喰らい始祖龍を絶命させた。