契約の文言
状況は、はっきり言って劣勢だった。そう、竜王六人がかりでも圧しきる事が出来ない。むしろ五分五分といったところかな?
「どうした!?穢れし獣よ!立派なのはその口だけか!?」
「やかましいわ!クソ爺はそこで黙ってろ!」
俺は拳で殴りかかってきた始祖龍に対して、魔術の陣を五重に重ねて防いだ。と言っても、四枚位破られて、五枚目で何とか防ぎきったんだが。なんて馬鹿力だ。
白竜様が手元に魔力を貯めて一気にそれを放った。俺が一日かけても絞り取れない量だな。それをこうもあっさり使われるとは……やっぱり白竜様は凄いな!
「その程度!」
「くっ!やはりこれでは届かないか……!」
「甘く見るでないわ!この程度で勝てる訳があるまい!」
「がはっ!?」
白竜様が一気に殴り飛ばされて、城の外にまで吹き飛んだ。壁すらも破壊して、だ。こんなのに本当に勝てるのか?
『臆するな。我が半身よ』
「神喰狼?だが、今の状態じゃあ……」
『ふむ。確かに今のお前では敵わないだろうな。そこで提案がある』
「なんだよ?」
『我に半刻で構わない。体を貸してはくれないか?』
「……頼むから暴走だけはしてくれるなよ?」
『ふっ。それぐらいは重々承知している。それで、どうだ?』
「他に手もないしな……。しゃあない。呑んだぜ、その契約!」
『ならば文言を唱えよ』
その言葉と共に、俺の頭の中に文字の羅列が響いてきた。
「我、神をも喰らいし神狼なり――――」
「神を憎み、人を恨む――――」
「総てを喰らいし狼の覇者となりて――――」
『さあ、総てを喰らい尽くせ!』
「汝を極限の紅に染め上げよう――――!」
そしてその言葉を唱え終えると同時に、俺は意識を失った。