謁見
城に入ってみると、驚く事に近衛兵のような者が全然いない。もぬけの殻と言ってもあながち間違いじゃないレベルで、人というか龍がいなかった。
「これは……一体どういう事なんです?」
「これが我らが行動しようと思った理由の一環でもあるのだよ」
落ち着いた声で言ったようだけど、その中に潜む静かな怒りのような物が隠しきれていなかった。確かにこの有様は酷すぎる。
そのまま、歩いて行きどでかい門の前に立っていた。どうやって開けるんだ?これ。そう思っていると、竜王の方々が同時に身体から魔力をあふれ出していた。そしてその時になってようやく分かったんだ。
――――この門の向こうにいる存在の圧倒的な強さが。
下の者にはその力すらも感じる事の出来ない程の、圧倒的なまでの力の差。今からこれに挑むのだと思うと、血が滾ってくるな。
門は静かに厳かに開いた。そしてその向こうにはあり得ない光景があった。たくさんの龍たちの死骸だった。そしてその先にいた者の口はどっぷりと血に染まっていた。
「我らが始祖よ、また若き者の命を狩ってしまっわれたのですか?」
「それがどうした。命など放っておけばいくらでも育つだろう。それで、貴様たちは何の用だ?」
「始祖よ、どうかその暴挙を止めていただきたく我らは揃って参上した次第にございます」
「まどろっこしいの。直接言ってはどうだ?我を殺しに来たのだ、と」
俺はその言葉を訊いた瞬間に、鎧を纏い動き出していた。その土手っぱらに目がけて、魔力を集中させた拳を叩きこんでいた。
さすがに不意うちは訊いたのか、カハッと腹から空気を吐き出していた。そしてそこから五人ほどの龍が出てきた。俺はそれらを魔力でからめ取り、一気に外に放り投げた。
「白き狼か!貴様のような穢れし獣が我に苦痛を与えるとは、万死に値するぞ!」
「ほざけ!貴様のような身内すらも大事に扱おうともしない輩が、そんな事をほざくとはな。笑止!」
「よくぞ吠えたものだな!貴様は魂ごと焼き尽くしてやるわ!」
「やれるもんならやってみろ!このクソ爺が!」
そんなしょうもない罵倒のしあいから、戦闘は始まった。各龍王様も、同時に戦線に参加して下さった。全員すっきりしたような表情を浮かべていた。