任務前日
「やっぱり私たちも付いて行きます!」
「駄目だ」
「なんでよ!?実力的に見ても、大丈夫でしょう?」
「あのね、君たちはちゃんと自分の地位を理解した方が良い。
かたや総局長の一人娘。かたや『一桁数字』のトップで主神だ。
そんな二人が始祖龍殺しに加担していたと知られたら、ろくな事にならない」
「それに二人を連れて行ったら、乾君は本気で戦えないよ?」
「あれほど言われた事を、今更忘れた訳ではあるまい?我慢する事も強さだぞ?」
あれから数日後、俺達は居間で言い争っていた。今頃になって二人がごね始めたからだ。
期限が迫ってきて現実味を帯びてきた所為だろう。あれからも俺は龍種の討伐をしてきたし。その度に怪我をしてたのが拍車をかけてるんだろう。
「俺はどうあっても、君たちを連れていく気はない」
「どうあっても?」
「ああ。例え君たちが連れていかなきゃ死ぬ!とか言っても、俺の意志は変わらない。
例え俺が連れていっても、死んでしまうのでは意味が無くなってしまうからだ。俺は、君たちに生きていてほしいんだよ。だから、ここにいてくれ。俺の帰る家を守ってくれよ」
「ッ!……それをここで言うのは、卑怯だよ」
「分かっているさ。そんな卑怯な手を使わなきゃいけない位、俺は君たちの事が好きなんだから」
「なおずるい。そんなこと言われたら……どうしようもないじゃん」
「期限はもう明日だ。明朝七時に白竜様を含め、六人の龍王様が玄関先まで転移してくる。そしたら、俺も移動する。一緒にいられるのはそれまでだな。とりあえず」
こうは言ってみたものの、俺がここに戻ってこられる確率はよくて二、三十パーセント程度だろう。それ位『始祖』の名は強いんだ。俺が戦った黒竜のランクは上から三番目らしい。つまり三番目でも結構な強さだ。
噂で聞いただけだけど、始祖龍と竜王の実力差はとんでもなく大きいらしい。俺にとっては、訊きたくなかった情報だな。
でも逆にいえば、俺がこの任務を生きて帰れればそれは俺の実力UPにもつながる。けっして、嫌な事ばかりじゃない。
「それじゃあ、今日は一緒に寝てくれますか?」
「……いいよ。でも、抱いたりはしない。ただ一緒の布団で寝るだけだ」
「はい!それで構いません!」
「じゃあ、行こうか。二人とも」
「「はい!」」
「それじゃあ、お二方もお休みなさい」
「お休み。また明日」
「ちゃんと見送りはするからな」
「はい。それでは」
それだけ告げると、俺達は寝室に向かった。誓って言うが何もなかったぞ。う、嘘じゃないからな!