初めての談義
「それで?黒竜を討伐したとか言っていたか?よく五体満足の状態でいられるな」
「……貴方がやれば、一瞬で消し炭レベルでしょうが。俺はいずれはあなた方に勝てる位にならなきゃいけないんだから、五体満足じゃなきゃダメでしょうが」
「言葉だけなら何とも言える。難しいのはそれを実行する事だ。そうだろう?」
「……つまりあなたには何を言いたいんです?」
「君は強くなったってことさ。白枝が何を言おうと気にするな。……とは言わん。だが、そこまで気に病む必要はない」
「貴方も相変わらずですね。見ている身としては、歯痒い限りですよ。付き合えばいいのに」
「俺と白枝が、か?それこそ、マスコミが騒がしくなるだろう。俺はそういうのは好かん」
「……本当に相変わらず、ですね。まあ、いいですけど。それで、どんな御用で来たんですか?」
俺と二木さんは、地下の研究施設に来ていた。そこで男二人だけの会談の最中さ。酒を飲みながら、だけどな。
これまで、俺の家に有名人が来る、なんていう事はそうそう無かった。たまに支部長の爺が新年の挨拶に来たり、とかそんの程度だ。
「それはな。君が変わったからだよ」
「俺が?変わった?」
「ああ。昔の君は、どこまでも研ぎ澄まされた刃のようだった。色んな物を切り裂くような、な。だが、今の君は誰かを厭う心を持っている。これは大きな変化だ。
それに君は気付いていないかもしれんが、君に惚れている人間はたくさんいる。それを見ているこちらこそ、歯痒いの一言なんだぞ?」
こんな俺に惚れている人たち、か……。それは俺の外面だけを見て、かな?外見だけならカッコいいと言われた事はいくらでもある。そういうのとは違うんだろうか?
「それは俺の外見だけなのでは?」
「いや、違う。君は、君が思っている以上に、色んな人の事を助けている。君はちゃんと自分のやっている事を把握するべきだと思うぞ」
「……そうです、かね?」
「ああ。おっと、酒が少なくなってきたな。悪いが、他に酒はあるか?」
「ええ、ありますよ。ちょっと待ってて下さい」
俺はそう言いつつ、新しい酒を取りに行った。もう五本近くからにしているんだけどな。外見からは想像できないけど、結構な酒豪だったんだな。あの人。