仕事
さっき校長室と言ったが、本当の名称は理事長室だ。でも俺はほとんど利用しないから、校長室と呼ばれている。
それでその先にあったのは……書類の山と格闘している女性達の姿だった。校長と秘書たちだ。
学校に秘書なんかいる訳無いだろ!と思うだろうが、この学校の書類仕事は本当に大変だから、俺が雇ったんだ。扉を開く音に気がついたんだろう、全員がこちらを向いた。
怖っ!皆数日は徹夜してんじゃねえのか?凄い眼の下にクマとかできてるぞ。
「ひ、久しぶり。皆、大丈夫かい」
「り、理事長。ようやく来て下さったんですね。待っていました」
「ああ、悪かったな。後の仕事は俺がやっとくから、君たちはとっと帰れ。ぶっちゃけなん日徹夜してるんだ?」
「二、三日ほどですがまだ大丈夫です!」
「そういうのはしっかり休んでから言うんだな。帰る気が無いなら、さっさと仮眠室に行け!集中力を欠いている状態で、仕事がまともにこなせる訳無いんだからしっかり休め!」
「「はい、失礼させてもらいます」」
秘書の人たちはすんなりと仮眠室に向かった。よほど眠かったんだろう。まあ、俺のせいでもあるんだが。だが校長がやたらと頑なだった。
「いえ、私は校長としての義務があります。せめてこの書類の山を何とかするまで寝ません!」
「書類の不備があったらやり直さなきゃいけないんだから、それなら完全の状態できっちりとするべきだろう?」
「それなら私が最後まで責任を持ちますから!」
「そういう問題じゃないんだよ。あんまりグダグダぬかしてると、強制的に眠らせるぞ?」
「やってみてください!私は梃子でも動きませんよ!」
「この者を深き眠りに誘え。『眠り仔』」
さすがにこの術には耐えられなくて、すぐに眠りに落ちた。でも、本当に椅子から動こうとしなかった。どんな根性で働いてるんだよ?
仕方ないから空間魔術で別の場所に移動させて仮眠室まで運んだ。ん?どうやって運んだかって?お姫様だっこみたいに運んだけど。二人は羨ましそうな目で見つめていたが。
「さて、この仕事を片付けるとしようかな。しかしこんだけなら二時間もあれば終わるな」
「「え!?」」
「うん?どうしたんだい?」
「これだけの量を二時間ですか?」
「そうだよ。見たところ大体二百枚ってところかな?これ位なら軽い、軽い。むしろ長期休みの時とかは大変だね。移動とか色々あるから、一万枚以上はあったんじゃないかな?」
「「一万枚以上!?」」
二人とも驚き過ぎじゃないか?まあ、とにかく俺は二人用に紅茶を用意した後、書類仕事を始めた。校長のやった分はほぼ完璧だったが、秘書のやった分は何枚か不備があったので訂正しておいた。
そして確認と残っていた書類仕事を二時間半ほどで終えた。そして二人の方を見ると、唖然とした表情でこちらを見ていた。?どうしたんだろ?
「紙が空中を舞ってた。あんなの初めて見た」
「っていうかあの手の動き、はっきり見えました?私全然見えなかったんですけど」
「とやかく言わないでよ。さて、これ以上は書類も来ないと思うし俺は行かなきゃ」
「?どこに、ですか?」
「皇宮に、だよ。俺はあそこにお呼ばれしてるんだから。一時間ぐらい前から気配みたいなのがガンガン伝わってくるんだもん。これ以上は無視できない」
「それなら私達も」
「ついてきても何もできないよ?俺が交渉するだけだし、君たちが何言っても変わらんし」
「それでも付いていく。私たちだって当事者なんだし」
「そう言う問題じゃないんだがな。ま、いいかな?それじゃあ、行こうか」
俺は置き手紙を書いた後、二人を連れて皇宮に向かった。ちなみに手紙の内容はこうだ。
『全員一週間の休暇を与える。もしこれを受けなかった場合、次に来た時に強制的に帰らせるので、ちゃんと体を休めるように』だった。