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白銀の鎧と黄金の剣  作者: あかつきいろ
~異世界旅行編~
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異世界の『滅び』(2)

「儀礼として言っとくけど、止まってくんね?」

「「「はあ?」」」


 いきなり空中に現れた俺に驚いたのか、相手方の全員に動揺が広まって全員の動きが止まった。その中で六枚羽持ってるしそいつがリーダー?とか思った奴に声をかけた。


「いや、どうせ止めるんだろ?」

「まあね。でも平和的な方が良いじゃん?」

「そら、そうだな。それで?お前さんは何者だ?」

「俺か?俺は異世界の住人さ。ってそりゃあんた達も同じか」


「この羽が見えるんだから、そうに決まってるだろ。俺は、まあ聖書風に言えばアザゼル」


「わお、神を見張る者『グリゴリ』のトップか。俺は乾慎也。神喰狼(フェンリル)を宿す者にして、今は聖皇剣の主だ」

「こりゃまた強敵だな」

「それはどうでもいいけど。それじゃ、こちらの要求は一つだ。とっとこの世界から出て行け」

「それが出来るなら、この世界には来てないぞ。悪いが、今いる奴ら以上の者を抱えている俺としては飲めない要求だな」

「それなら、あとは――――」

「戦うのみ、ってな!」


 アザゼルは出現させた光を剣状にして。俺はエクスカリバーを光を纏わせてぶつけた。光と変化した魔力が辺り一帯に咲き乱れた。


 それは同時に、戦争の始まりを表す光景だった。アザゼルの傍に控えていた副官みたいな男が、腕を振って叫んだ。


「突撃!」


「しゃらくせえんだよ!デュランダル!」

「やらせる訳無いだろうが!」


 アザゼルは持っていた光を今度は槍状に変えて、俺に投げてきた。これ使ったら面白くないって事で花蓮との試合の時は使わなかった術を使った。


「はじき返せ!『無限鏡(フォーチュン・ミラー)』」


「何だと!?」


 飛ばした光が跳ね返ってきたんだから、そりゃ驚くだろう。これはアマテラスが持つ絶対の盾『八咫鏡(やたのかがみ)』を術式版にした物だ。


「我が眼前の敵を薙ぎ祓え!俺の大切な者を守るために。力を貸せ!デュランダル!」


――ゴオオオオォォォ!


 デュランダルから強烈なほどの光が伸びた。しかも聖の力を纏っている。なんで分かるのかって言うと、俺が魔の力を宿している所為で肌がチリチリして痛いからだ。


 ともかくその力で五十人以上を薙ぎ払った。これで少しは楽になるだろう。そう思ってアザゼルの方を向くと怒りの表情を浮かべていた。


「よくもやってくれたな。俺の民を!」

「そう思うならとっと帰れって言ってんだろうが!」


 それからしばらく、俺達は刃をぶつけあった。しかし実力が均衡している所為で決着がつかない。これはどうするべきだ?


 それは唐突に起きた。花蓮が隠れていたビルが破壊された。もちろん、それで傷つくようなやわな鍛え方はしていないだろう。


 でも、地面に着地した所で他の堕天使が放った槍に当たりかけた時には、さすがにひやっとした。その後も危険を強いられていた。そして一発の攻撃が肩に当たると俺も我慢の限界だった。


 アザゼルの腹に強烈な蹴りを叩きこむと、俺は反転して花蓮の元に駆けつけ周りにいた堕天使の連中をデュランダルで撫で切りにしてやった。


「俺の家族を傷つけた事を後悔させてやるよ!神喰狼(フェンリル)!」

『なんだ?何か用か?』

「俺との契約を認可しろ。こいつらをまとめて吹き飛ばすためには力が足りない。それにもう時期だろう?」

『まあ、いいだろう。我を宿してもう二十年も経つしな。

汝に問う。我との契約を交わし汝は何をする?』

「喰らう。俺の家族を傷つける全てを喰らってやる。手始めに、この堕天使どもだな」


 神喰狼(フェンリル)がニヤッと笑ったような気がした。ちなみに仮契約の状態の俺が百パーセントで最大同調(パーフェクト・シンクロ)をしても、大体六十パーセントぐらいしか力を引き出せない。


 聖皇剣の加護が無くなり、鎧は黄金ではなく全てを反射する白銀の色となっていた。


「デュランダルを右籠手に着装」


 デュランダルは剣の形ではなくなり液体状となって、籠手に纏わりつき固まった。もちろん解装すれば元に戻るけどな。


 俺が右手を払うように振ると、その線上にあったあらゆる者が切断された。ビルの破片、飛び交う魔術、光、堕天使の肉体、果ては雲すらも切り裂いた。


「何なんだ、それは!?」

「見ても……分からんか。仕組みは単純だ。右の籠手にデュランダルの性能を宿しただけだ」

「デュランダルの能力はその圧倒的なまでの破壊力にあるからか。厄介な!」


「期待はしないが、一応最終警告だ。さっさと自分の世界へ去れ。これ以上戦闘行為を続行するのならば、俺はお前らの世界に乗り込んでお前の民を全員殺すぞ。老若男女、差別なくな」


「くそっ!」


「アザゼル、ここは退くべきです!」


 上を向くと、そこにはアザゼルと同じように六枚の黒い羽根を備えた男が立っていた。っていうかこいつ、さっき見た副官の野郎じゃん。傍には筋肉質な男が立っていた。


「何を言ってるんだ!?ここ以外に攻める場所など無いだろう!?」

「同じ場所になるのは癪ですけど、悪魔側と同盟を結び他の世界を攻めましょう!」

「それでいい。とっとこの世界を去れ。俺は手を出さない」


「だがそれではこちらの気が持たないのでな。傷の一つは負って貰うぞ!」


「!?止めろ、べリアル!お前に勝てる相手じゃない!」

「それでも皆が逃げる時間ぐらいは稼げる!さあ、行けアザゼル!我らが王よ!」

「来る者は拒まない。だがあんたみたいな武人に剣は卑怯だな。真由美、離れてろ。デュランダル、解装」


 エクスカリバーの実体化を解いた真由美にデュランダルを任せた後、俺達は向かい合った。他の堕天使の連中は空間を割いて違う世界へ去っていった。


「行くぞ!」「いつでも」


 俺は拳を鳩尾に叩きこみ、べリアルは俺の脇腹に蹴りを叩きこんだ。同時に吹き飛び、ビルにぶつかった。


 結果から言えば、俺が勝った。だけど、べリアルは最後に残った力で光を飛ばしてきた。さすがに不意を打たれた所為もあって左目をやられた。


 その代わりに俺は、べリアルの心臓を掴み潰した。そして俺は格好悪いが気を失った。でもこの世界の『滅び』はこれで終わった。

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