聖剣の契約
「汝我との契約を求める者よ。今ここに汝が誓いを立てよ」
「誓い、ね。そんな物が必要なのか。さて、どうしようかな。……決めた。
俺は汝を自分の為には振るわない。誰かを守るために振るう事を、わが命に誓う」
「……宣言は受理されました。それでは剣を引き抜いて下さい」
そう。今、剣は地面に突きたてられている。まるで話の通り、これを抜けた者だけが所有者だと主張するように。俺は剣の柄を握って一気に引き抜いた。
「ふんっ!――――ぐあっ!?」
「慎也!?」
なんだよ、これ!?王を選定する剣とはよく言ったもんだな!単にこいつの生気を吸い取る力に耐えきるのが試練かよ!?
だがよ、これがどうした。こんな痛みは俺が、真由美さんが味わってきた孤独の痛みに比べればな。俺はむしろこちらから生気を流してやった。
「軽いんだよ!これがどうした?その程度か!?聖剣の名が泣くぜ?そんなんじゃあな!」
「駄目だ!それ以上、生気を取りだしたら君の命が!」
「止めないでくれよ、叔父さん。大体、この程度で俺が死ぬ訳無いだろうが!
おら、どうした?もう疲れ切ったのか?ふざけんじゃねえぞ!」
こんな物じゃねえんだよ、真由美さんが耐え忍んできた心の痛みはな!だが、突如俺の手から握っていた剣の感触が消えた。そしてそこで俺は体勢を崩した。
しかし俺は、地面に頭を打ったりはしなかった。突然俺の後ろに真由美さんが表れて、俺の頭を自分の膝に置いたからだ。
「もう、駄目じゃないですか。あんなに生気を流し込んだりしちゃ」
「でも、俺は――――」
「分かっています。あなたの思いが私の中に流れ込んできたから」
俺は立ち上がった。生気を流し続けた所為もあって、まだ体は揺れていたがなんとか立ち上がった。
「さて、それじゃ行くとするか。花蓮、君には魔術師たちの統制を頼むよ」
「え?なんであたしが?」
「君は指揮したりするのなれていそうだから」
「あはは、冗談。私が出るときはほとんどの兵が死んだり倒れている時だから、指揮する時なんかないわよ」
「そっか。じゃあ、付いてくる?」
「もちろんよ」
そうした後にもう一回前を向くと、真由美さんが頬を膨らませていた。なんか可愛いな。そう思っていたが、俺の胸を叩き始めた。
「ちょ、ちょっと何?俺なんかした?」
「寧ろしてないのが問題なんでしょう」
「……もしかして自分も名前で、っていうか呼び捨てで呼んでほしいって事?」
思いっきり頭を縦に振っていた。ううん、しょうがないか。この様子じゃ呼ばない限り絶対動かなさそうだし。
「真由美。これでいいのかい?……ってなんで顔を赤くしてんのさ。ほら、早く行くよ」
俺は二人の手を握って歩き始めた。二人とも黙ってはいたが、顔を真っ赤にしていた。そんな顔をされるとこちらも恥ずかしいんだけど……。そう思いながら、俺達は静かに街を歩き始めた。