花蓮さんの想い
「慎也君、どうしてこんな所で黄昏てるの?」
「花蓮さん……」
あれから一時間後、それぞれ自由に行動し始めた。花蓮さんはさっきまで風呂に入っていたのか、髪が濡れていた。俺は、と言えば庭で星空を見ながら黄昏ていた。
さっきまでは叔父さんと魔術の話で盛り上がり過ぎたから、その熱を冷ましているっていう面もあるんだが。
「さんはいらないよ。それで何してんの?」
「見て分かりません?星空を見上げていたんですよ。この世界は俺達の世界よりもはっきりと星が見えますから」
「ん~?ああ、確かにね。でも、多分それだけじゃないんでしょ?」
「よく分かりましたね。ただあなたに訊きたい事があったんですよ」
「ふ~ん。それで訊きたい事って?」
「あなたは、俺の事をどう思ってるんですか?」
「どういう、意味?」
「俺は、今まで俺に対する感情を理解しようとしてきませんでした。それは、俺が怖かったから」
「何が怖かったの?」
「もしその人が俺に対して愛とか、そういう感情を抱いているとしたら。俺はそれに応えなくちゃいけない。でも、本当の事を話せばその人は俺の傍から離れて行ってしまう。
言いましたよね?俺には昔、付き合っていた人がいたって。あの人に本当の事を話し、その結果あの人は俺の傍から離れた。あんな思いはもう、したくないと思ったから」
「だから理解しなかったっていうの!?それは――――」
「ええ。ただの逃げですよ。それでも一緒にいた人に拒絶されるっていうのはそれだけ痛みを背負うんですよ。でも、俺はもう逃げない」
空から目を離し、花蓮さんの眼をじっと見つめた。すると怯んだように、体を後ろに下げたけどまたすぐに元に戻して俺達はそのまま一分ぐらいじっと見つめ続けた。
「だからこそ、俺は知りたい。あなたが俺に対して、一体どんな感情を抱いているのかを。
だから教えてくれないか?あなたの想いを」
「……はあ、仕方ないかな。これだけ言われて語らなかったら一生の恥だし」
そして一回深呼吸をした後、真剣な顔つきでその『想い』を語った。
「好きです。ううん、これはもう愛してる、かな?出来るならば一生を共にしたいと思ってる」
「……そうですか。ところで、そろそろ出てきたらどうです?真由美さん」
「「え!?」」
俺が家の方に目を向けると、窓を開けて真由美さんが出てきた。気配で分かってたんだけどね。
「もしその人が――――」の辺りから訊いていたのかな?
「答えさせてもらうなら、俺としてはOKですよ。でも、俺は同時に真由美さんの事も大切なんですよ。異性として、ね」
「慎也さん……」
「俺としては両方に幸せになってほしいんだよ。さて、どうしたものか……」
「何か考え事してる所なんだけど、そろそろ家に入ってきたらどうだい?一応初夏とはいえ、まだ夜の風は冷たいんだから」
「あ、叔父さん。そうだね。戻るとしようか、二人とも」
俺は二人を引き連れて家の中に戻っていった。そんな楽しい日常も翌日には脆く儚く砕け散るとも知らずに。