叔父との再会
「久しぶりだね、莞爾叔父さん。元気だった?」
俺は久しぶりに、父さんの弟である莞爾叔父さんと再会を祝っていた。
「まあね。問題は特に無いよ。っと、これは失敬。初めまして。私、雨宮莞爾と申します。旧姓は乾ですが」
「初めまして。神崎真由美と申します。一応慎也さんの婚約者です」
「初めまして。一応名前は訊いておりましたが、自己紹介しておきます。一花花蓮と申します」
「婚約者、ね。君も隅に置けないねえ、慎也君」
「止めてよ叔父さん。はい、これ頼まれてた本だよ」
「おっと、済まないね。そちらの世界に行く用事が無いから、中々行けなかったんだよ」
「そんな事よりも叔父さん、訊いたよ?叔父さんが『現代魔術』を作ったんだって?どうして教えてくれなかったんだよ?」
「まあ、落ち着いて。はい、ダージリンティー。好きだったでしょ?」
「まあね。それでどうして教えてくれなかったの?」
「その技術はまだ不完全だからさ。今は携帯に入っているあるシステムが、自動で術を作りそれを僕が作ったサーバーで自動収集しているんだよ。だから――――」
「現代魔術師はそのサーバーからデータを取り出しているにすぎないから、実用化まではいって無い。そういう事?」
「そうだよ。相変わらず頭の回転が速くて助かるよ」
「それでも娘の魔術ぐらい、ちゃんと教えなよ。『メタトロン』の術式間違ってたよ?」
なんで炎系統の術なのに、光系統の術に変わってるんだよ。元々その術式を作った先人に対して失礼にも程があるよ。それにこれ第三種の禁忌の術式なんだけど。断罪光は特急の禁忌魔術だ。
「そう言うって事は君も習得してるのかい?禁術を」
「当たり前じゃん。魔術の名家『乾』の名が泣くよ?というか、普通に地下の書庫漁ってたら有ったんだけどね」
「兄さんってば、そういうとこズボラだよね。亡くなった人を悪く言うのは嫌だけど、変わらないよね」
「叔父さん、万物は変化するのが定めなんだよ。俺の今の関係も境遇もそうだ。変化しない物は存在しない。俺はそれを『零』にするのが役目なんだ。だから、早い内に戻ってきた方がいいよ」
「滅びは近いのかい?」
「さあ?神託を受けるのは俺じゃないからね。分からんよ」
「それもそうだね。まあ、今日は魔術の事で色々と語り合ってもらうが」
「あの~?ちょっといいですか?」
顔を向けると、真由美さんが不思議そうな顔をしていた。逆に花蓮さんは苦々しい顔をしていた。
「『滅び』って何ですか?」
「「「はあ!?」」」
叫びはほぼ同時だった。お偉方や実力のある人は知っている単語を、総局長の娘であるこの人が知らない?どういう事だよ!?




