車の中で
「ほい、到着っと」
「リーダー、車取りに行くだけでこれは時間かかり過ぎですよ」
俺が入口の所に車を置くと、早速文句を言われた。時計を見ると―――――うわ、十五分も経ってんじゃん。確かにこりゃ時間かかり過ぎだ。
「まあいいじゃん。どうせ襲われてたんだろ?なんか地面の揺れを感じたし、震脚でも使ったんじゃねえの?」
「まあね。大した実力はなかったけどね。どこかのチームを雇っただけで、実力は測ってなかったんだろうけど。弱かったよ。術でほとんどが一撃死。拍子抜けだった」
説明していなかったが、フェンリルというのはギルドみたいなもので雇われればなんでもするなんでも屋だ。雑務から探検、暗殺などなんでもござれ。だけど、護衛なんて物を任されるのは大体特務だけなんだけど。普通護衛なんて物を頼む奴には専用のSPがいるからね。
「いや、すいません。待たせちゃいましたね。どうぞお乗りください」
俺が助手席の扉を開いて神崎さんに手をのばすと、神崎さんはカバンの中をあさっていた。
?何を探してるんだろ?少しを待っていると、出した物はハンカチだった。ハンカチ?何故に?そう思っていると、神崎さんはそのハンカチを俺の頬にあてた。
「あの?何かありました?」
「リーダー、血が付いてたんだよ。それで怪我したんじゃないかと思ってるんじゃない?」
「え?違うんですか?」
「違いますよ。この血は返り血です。俺に怪我を負わせることなんて、そうそうできませんから」
「うわ、傲慢。でもそんなところが痺れる!」
「はっはっは。褒めるな。まあ、どうでもいいんだけど。まあ、その、ありがとうございます」
「いえ、これ位どうということはありませんから」
「リーダー、そろそろ行こうぜ。俺腹減っちまってさ」
「お前、いろんな意味で台無しにしてくれるよな。構わないけどさ。それじゃあ、乗って下さい」
俺は運転席、神崎さんは助手席。それに残り二人は後部座席に座った。俺の車はワゴン車だ。説明し忘れたから言っておく。そして車は動き始めた。
「そういえば、この車対策とか大丈夫なんですか?」
「何がですか?……ああ、狙われないかってことですか?それなら大丈夫です。この車は幻影色ですから。それに対魔法・魔術の素材でもできてますし」
「幻影色……ですか?」
「あれ、知りません?そんな有名じゃないのかな?
双眼鏡とかそういう媒体を使って見ても、こちらの事はわからないようにする物です。大体の人間は常識を持っていますから、人が多くいるような場所で撃ってきたりはしません。
まあ、撃ってきても俺の重力操作で捻じ曲げますがね」
「リーダーって、ホントに容赦ないからね。どうせ駐車場で戦った相手だって重力で押し潰したんでしょ?」
「だっていちいち相手にするの面倒だし。大体知ってるだろ?俺は光と闇の術式以外が苦手だって」
「知ってるけどさ。なんか無残じゃない?」
「そんなもん知るか。挑んでくるんだから相対するしかないだろ?全く話は変わりますが神崎さん」
「はい?何でしょうか?」
「後ろの二人が腹が減ったとうるさいので、目的地に行く前に俺の行きつけの店で昼食をとってもいいですか?」
「はい、それぐらいなら構いません。私もお腹は空いていますし、ね」
返答を訊いた俺は、俺の行きつけの店『カナリヤの涙』に向かった。
第五話です。主人公ちょっと傲慢ですけど、飽きっぽいです。どうでもいい情報ですが。それではまた今度会いましょう。バイチャ!(>_<)/