学校の玄関
それで俺達は城宮君の家から歩く事、二十分ほどが経った場所――――つまり学校に着いていた。見た目だけは変哲も無い、どこにでもありそうな学校だった。俺も疑わなかっただろう。結界が無ければ。
そう、もう明らかに結界が張ってあるんだよ。信じられるか?結界だぜ?ここはどこの軍事主要施設なんだよ、とでも言わんばかりに厳重だし。
「なあ、城宮君。思いっきり結界が張ってあるんだけど、俺達は入れるのか?」
「あ、大丈夫ですよ。この書類に名前とか書いてくれれば、俺が印章押しますから」
「ふうん。っていうかこの学校、生徒は全員魔術師かい?」
「よくわかりましたね。そうですよ」
「いくらなんでもこれはわかるよ。ねえ、花蓮さん?」
「さんはいらない。ま、そうだね。このむせ返るほどの量の魔力。一人じゃ無いなら複数。でも結界が張られている所から見て、全員が魔術師だと判断するのが妥当だろうね」
そうなんだよな。どう見ても、この量の魔力は普通じゃありえない。
え?魔力は見えるものなのかって?厳密にいえば、見てる訳じゃない。うーん、なんていうか気配みたいな物だと考えればいいのかな?
見えないけど、そこには確かにある物……とでもいうのか。ま、空気みたいなもんだ。しかしこの中でも際立ってるのは、ざっと十人ぐらいかな?
「さてと、これでいいのかい?」
「はい、これで大丈夫です。それよりも神崎さん、どうかしたんですか?」
「えーと、もう人来てるみたいなんだけど……」
「え?」
周りを見てみると、確かに何人かの生徒が立っていた。しかも猛烈な敵意をぶつけられている。そして代表の……明らかに高慢な女生徒が出てきた。
「おい、貴様ら。この学校に何の用だ?」
「一応、職員室の先生とか彼の友達とかに用事があるかな。そういう君たちこそ何?それだけかい?」
「無論、まずは退いてもらおう。確かにそこの生徒は、失踪中だった城宮貴也君なのだろうが。それでもまずは連絡を入れておくのが普通ではないか?」
「なるほどね。確かにそりゃそうだ。でも、こちとらそんな事は知ったこっちゃないのさ。
君たちに選択肢をあげよう。普通に退くか、俺に倒されて退かされるか。どっちがいい?」
「貴様、ふざけているのか!?」
「そこまでにしなさい」
全員が声のした方を向くと、そこには副会長の腕章をはめた女生徒がいた。うん?っていうかもしかしてあの子は……。
「ふ、副会長。どうしてこちらに?」
「それは私のセリフよ。どうして君こそこんな所にいるのかしら?私は貴也を迎えに来ただけだけど」
「こんな不審者を放置する訳には参りません」
「……ん?もしかして君が雨宮竜美さん?」
「ええ。そうですけど……失礼ですがあなたは?」
「あはは、覚えてないか。久しぶりだね、『タッちゃん』」
「もしかして……慎也さん?でしたらその呼び方やめて下さい」
「ご明察。今はこんな状態だけど。しかし、君が副会長ね。中々面白そうじゃないか」
「貴様、副会長になって口を訊くんだ!この人は学園で二番目の実力者なんだぞ!」
「そうかい。じゃあ、君は黙ってなよ。雑兵には欠片も興味無いから」
「貴様、ふざけるなよ!」
その高慢な子は、俺に無詠唱の魔術を放ってきた。属性は氷、か。甘いな、甘過ぎる。
いくら無詠症とは言え、この程度しか出せないのか。なんだかがっかりだな。俺が手を打ち払うと、その衝撃にすら耐えられず粉々に砕け散った。
「これで満足かい?もう面倒だし、行こうか」
「ま、待て!」
「まだ何か用か。これ以上俺達を無駄な事で立ち止まらせると言うのなら」
「言うのなら?」
「怪我ぐらいは覚悟にしろ。そしてまだ智恵が回るうちにどっかいけ。俺はもう優しくないぞ」
俺の止めの言葉が効いたのか、その生徒と取り巻きの子たちは黙って俺達を見過ごした。少々厳し過ぎじゃ?とも言われたけど、俺はああいう輩が嫌いだ。
自分の持っている力が他の人は持っていないと分かると、そいつはやたらと図に乗る。俺はそうやって他人を蔑む輩が嫌いなんだ。
そう告げると、俺は竜美ちゃん先導のもと職員室に行った後、城宮君の教室に向かった。