異世界への出発
大会が終わり二日たった今日、俺は城宮君を彼の世界に戻すために彼を連れて異世界へ行く事になった。一花さんが座標を調べてくれたらしく、準備が終わったら自分も行くらしい。
その事を真由美さんに伝えると、「だったら私も行きます」と言ってきた。理由を訊いてみると、こう答えられた。
「だって、花蓮さんって慎也さんとの距離が近いんですもん」
と言われた。距離?なんの事かいまだにさっぱりわからん。そう告げると、でしょうね。って呆れられたような返答が帰ってきた。これひどくね?
「さて城宮君。準備は大丈夫かい?」
「はい。最後までお付き合いしてくださって、ありがとうございます」
「気にしないでよ。俺も君にいろいろと教えてもらったし。ギブアンドテイク、だろ?」
「あはは、そうですね。乾さんって何回異世界に行った事があるんですか?」
「数えたらきりが無いからわからん。まあ、十回以上は軽く行ってるよ。なに?次元移動術でも知りたいのかい?」
「ええ。欲を言うなら。たぶん無理なんでしょうけど」
「別に無理じゃないよ?失敗してもいいなら、だけど」
「え?」
えーと、どこに入れたっけ?俺は担いでいた袋を開いて、中身をあさりだした。後ろで城宮君の何をしてるんだろう?という視線を感じるが無視。お、あったあった。
「はい、これ。次元移動術の術式の論理とか構成が書いてある本だよ。ま、自分で練習してみなよ」
「あ、ありがとうございます。……でもいいんですか?こんなのもらっちゃって」
「大丈夫、大丈夫。俺はもう使えるし、それにもう数冊書庫に入ってるから」
「「お待たせ(しました)」」
二人が準備を終えたらしく、一緒に現れた。っていうか二人とも化粧してるんじゃないか?
「なんでオシャレなんかしてんの?まあ、綺麗だとは思うけどさ」
「いいじゃん。っていうかさらっと褒める辺り誑しの才能あるんじゃない?」
「止めて下さいよ。っていうかそろそろ教えて下さいよ。城宮君の世界の座標。一花さん全然教えてくれないから、分かんないんですよ」
「そこだよ。賭けで私が勝ったんだから、名前で呼んでくれないと教えてあげない。後敬語禁止ね」
「分かったよ。それじゃあ、教えてくれよ。これでいいのかい?花蓮」
「バッチリ!この紙に書いてあるのが座標だよ。まあ、見なくても私の肩に手を置いておいてくれればいいんだけど」
……やっぱりこの世界か。なんとなくそうじゃないかと思ってたんだけど、ドンピシャだったな。俺と真由美さんが肩に手を置き(何故かわざわざ手を重ねてきたけど)、城宮君はなぜか手を握られていた。
「それじゃあ、行くよ」
掛け声と共に、俺達は今いる自分達の世界を旅立ち異世界に向けて出発した。