力の片鱗
俺が駐車場に到着すると、そこには一般人の格好をしているがその実力は少なくとも、Bランク以上の実力はあるだろうという気配を漂わす奴らが十人以上いた。その中の最も強い気配を放っていた男がこちらに向けて歩いてきた。
「先に訊いておきたいことがある。お前はあの女とどういう関係なんだ?」
「どういう関係ってなんだよ。俺と彼女はただの護衛と護衛対象ってだけだ。それより、あんたらも同業者だろう?何故彼女を狙う?いくら認可されているとはいえ、一応罪にはなるんだぞ?」
「こちらも依頼なのでな。仕方がないのだよ」
「そうかい。こんな大量の人員を雇えるってことは相当の金持ちだな」
俺達の会話をしり目に、ほとんどの奴らは俺を囲んでいた。そしてナイフや銃をこちらに向けて構えている。俺がそれを分かっているだろうに動かないでなおも喋っているのがじれったくなったのか、一人の男が俺に向かってきた。それに釣られて十人近くの人間が動き出した。
「やめろ!勝手に動くんじゃない!」
リーダー格の男はがそう叫ぶと、全員の動きがぴたりと止まった。いい統率力だ。だけど、それはやっちゃいけない選択だったよ。俺は片足を思いっきり上げ、思いっきり地面に叩きつけた。
叩きつけた足で地面を揺らしそこにいた奴らを行動不能にした。そしてその足で動いた十人を包み込む程の魔法陣を展開し、その陣に魔力をつぎ込んだ。揺れが問題ないほどになる頃には、もう術は完成した。
「―――――重力術二式・輪環―――――」
その陣から発生した普段人間が浴びている重力の約二十倍もの重力をたたきつけた。もちろんそんな物を浴びた連中は十秒と持たず肉塊、いや肉片も残らず消えた。まだ生き残っているのはリーダー格の男と、四人だけだった。
「……さすがは護衛を任されただけの事はあるな」
「お褒めに預かりどうも。でももったいないことをしたね。俺に挑むなんて愚を犯さなきゃ、まだ生き残っていられただろうに」
「そのようだな。さすがにこれは引かざるを得ないようだな。最後に教えてくれ。君は一体何なんだ?」
「へえ、さすがだね。あれが見えたんだ。いいよ。教えてあげよう。あれはな―――――」
―――――神喰狼だよ―――――
俺がそう告げると、男たちは顔色を変えた。俺はそれを無視して、自分の車のところに行きエンジンを動かした。そして俺が男の隣を通り過ぎようとしたところで、男はぼそりと呟いた。
「その力は、いつか君すらも喰らうことになるだろう」
「それぐらいこの力を受け継いだ時から覚悟しているさ」
俺はそのまま車を動かし、駐車場から出て行った。
第四話です。昨日は更新できず、すいません。それでは、またいずれ。