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白銀の鎧と黄金の剣  作者: あかつきいろ
~世界代表トーナメント戦~
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本戦五日目(1)

「それじゃあ、五日目か。そういえばレジル。お前本戦って八日間じゃねえか。なんだよ一週間位って。ちょっと表現が適当過ぎだろ?」

「いいじゃん。ほとんど合ってるんだから。それよりも大丈夫なの慎也?明日出番だけど」

「今までだって何回か出てたろ。大体俺のする事は変わらないって。是が非でも優勝して一花さんに挑む。ただそれだけなんだから」

「単純だよね。ところでジェルザと千葉家の次期党首。どっちが勝つと思う?」

「それどっちを言っても俺終わりだよな?」

「外れたら怒りでジェルザに殴られ、当たったら恥ずかしくて照れ隠しに殴られるしね」

「昔にやったらすごかったよな。二人ともぼこぼこにされたし。だから俺はしない。大体言う必要はないだろう。竜次君も確かに強いが、ジェルザには勝てないよ。あの鉄使いにはな」

「鉄使い?それってどういう意味ですか?」


 観戦席で俺達は始まるのを今か今かと待っていた。俺達はどうも早く来すぎてしまったらしい。まあ身内……と言っていいか分からんが、とにかく知り合いの試合とあってテンションが高まっていたらしい。とにかく暇だ。


「あいつは元素を操るんだ。鉄限定だけどな。だから普通の使い方じゃありえないような攻撃なんだよな。まず、槍みたいに飛んでくるだとか、鎚みたいに叩きつけてくるとか色々だ」

「元素を操る者ですか。珍しいんじゃないですか?」

「珍しいよ?あいつは地面にある砂鉄も操れるしな。あいつはまあ秘蔵っ子ってやつだよ。それでもよく前線に来るんだけどな。『紅の剣』ってのもあるがあれは条件があるから使わないだろ」

「あれはね~。見てるこっちが不安になる条件だからね。こちらとしては止めてほしいよね」


 まあ、それも相手の戦闘方針次第なんだけど。威力で来るか、それとも速度で来るか。どちらかによってあいつの方針も変わるだろうし。

 そんな事を考えていると、両選手がゲートから出てきた。竜次君はなんと二刀流だった。これは驚きだ。ジェルザの方は腕に鎖をまとわりつかせていた。

 二人は同時に魔法陣に乗り、転送された。そして到着した先は……市街地だった。市街地とはいっても、ほとんど風化しているような場所だ。

 しかもこんな土地には砂鉄が大量に含まれている。これは竜次君が不利になってきたな。


『それじゃあ、始めるとしましょうか。言っておくけど女だからって、手加減なんかしたら絞め殺すわよ』

『剣士としてそんな事はしない。こちらにも負けられない理由があるのだから』

『ふーん。それじゃあ戦いを始めるとしましょうか!』


 ジェルザはまず鎖を開放し、一本を槍状にして飛ばした。ちなみに解放した数は四。まだまだ腕には鎖が絡みついている。

 分かっていると思うが、ジェルザの鎖も鉄製だ。鉄はいろんな部分で利用されている大事な元素だ。だけど鉄にも弱点が存在する。例えば――――


『爆炎剣・剛!』

『なっ!炎の剣ですって!?まさかその刀は魔剣?』

『いかにも。数年前に父上から頂いた魔剣の一本である。そしてこちらが氷結剣・牙!』

『二種類の魔剣の同時使用……。なかなか厄介ね。でもその程度で私はやられないわよ!』


 鉄鎖が何かを描き始めた。それは巨大な空間魔術。そこに居るものとある制約を課す魔術。どんな物かはわからないが、とにかく危険を感じたんだろう。竜次君は近づこうとした。

 だが、それを許すジェルザでは無い。鉄鎖で何とか防ぎ、地面にある砂鉄を操り攻撃し続ける。


『ここに居る者に魔術による干渉を奪え!「無術牢獄(シャドウ・プリズン)!」』


 さて魔剣による力を奪われた。どうするのかな?


 魔術により魔術の使用が禁じられた訳だが(魔術のくせに魔術を封じるとはこれ如何に?)竜次君の刀身からは力が消え、ただの日本刀と同じような形になった。

 まあ、ただでさえ剣技で化物である千葉家に魔剣なんか付いたらシャレにならんからな。ジェルザの考えはあってる。だけど日本刀を持った千葉家に勝てる奴はそうそういない。

 一体どうするんだ?ちなみにジェルザの鉄を操る力は、魔力では無くそれとは別の力で動いている。


『まさか魔力を封じてくるとは思いませんでしたよ。まあ、これで純粋な剣技であなたに挑めるというものだ!』

『それもそれで大変なんだけどね。炎を使われるよりましよ。さあ、続きを始めましょう!』


 どうやら竜次君は速度を選んだらしい。認識が追い付かない速度で走れば、それは良い判断だ。だけど、相手はジェルザだ。あいつはぶっちゃけ空気の流れを読んでるから、先読みが上手い。

 鎖でどんどん追い詰めていく。だが、竜次君も負けていない。衝撃波だけでジェルザにダメージを与えていく。ジェルザも竜次君も両方ともダメージが大きい。


『さすがね。この空間で五分以上生き残るなんてね』

『もともと千葉の剣は魔力などを必要としない。だがそれでは進化は望めないと思い、私が取りこんだものだ。

それでも、まだ慎也君にはかなわない。私は本家で鍛えた身なのに、彼にいまだ勝てていない。

それを先生の差だとは思わない。彼がより努力を重ねているという事だ。彼と闘うために、否!それ以上の者達と闘うために、私は勝ちあがらねばならんのだ!』


 目標としてくれてるのは結構だが、それだけではジェルザには勝てない。あいつはそこまで数が多い訳ではないが、俺にすら勝った事がある人だから。

 それにあいつの能力の頂点『紅の剣』の条件はそろった。あいつの本当の力をもう一度を目の当たりにできる。


『……我が身を流れし血よ。汝はわが一部なり。いま我が手元に集まり、その力を顕現させよ!』


「始まるね。紅の剣の顕現が。あれを破壊できる剣はこの世界には存在しない」

「なんせ自分の血でできてるからな。あれを破壊できるのは精々がレ―ヴァテインの炎ぐらいじゃないか?」

「なんでも斬れるしね。昔僕の本気をぶつけたら真っ二つに切られたよ」


 ジェルザの猛攻は続く。紅の剣は所有者が傷だらけである事、そして大量の血それこそ大量出血寸前でもない限り顕現できない。

 命の危機により顕現が可能な力であるこの剣は、世界最強と言われても納得してしまうような切れ味を持っている上に、絶対に折れない。折ろうとしても血だからどんどん補強されてしまうんだ。

 最後は剣で斬りつける――――と見せかけて鎖を操って鳩尾に命中させて気絶させた。しかもジェルザも勝者宣告された直後に気絶してしまう始末だ。


 まあ、とにかく勝ったんだ。どんな状態であれ、良しとしよう。あいつは自分のできる限り戦ったんだから。

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