総局長との邂逅
「そういえばここには人がめったに住んでないって言ってましたよね?」
「うん。言ったけど?なんか見た?」
「ええ、空を飛龍が飛んでたんですけど……。その上に人影らしきものが見えたんですよ」
「……見なかった事にしろ。なんとなく想像はつくけど会いたくない」
「どんな人なんですか……?」
「とてつもなくウザい。その一言に尽きるな。というかどこ行ってるのかと思ったら神界かよ……」
両方とも魔力の使い過ぎでこれ以上の修練は不可能という事になった。そんなわけで二人で真由美さんの魔術の修練に付き合っていた。
前にあった時からバルブを閉めっぱなしにしていたおかげもあって、真由美さんの魔力は目測だが城宮君と同レベルぐらいはあった。
城宮君の魔力は俺の魔力を十万としたらそこにマイナス一万、つまりざっと九万ぐらいはある。それと同レベルというのは結構すごい。
「さて真由美さん。そろそろいいですか?」
「あ、はい。大丈夫れす……」
「ちょっと調子に乗って言いすぎましたね。魔力の消費が半端じゃないし」
「ぶっちゃけ、魔力を込めすぎなんですよね。でもそういうと、今度は極端に少なくなるし……。
この状態だと、帰りも俺がお姫様だっこなりする事になるのかな?あれ結構恥ずかしいんだけど。まあ仕方ないか」
「…………」
そこで黙るのはやめてくれないだろうか?俺も恥ずかしいんだから。そんな事を思っていると、向こうの方からなんかこっちに手を振っている奴がいる。
「あれは……。まさか」
「おうおう、久しぶりじゃな!何しとんじゃ?お前さんこんなとこで」
「総局長……。あんたなんでこんなところに居るんだ?それよりも連絡しろよ。あんたがいない所為で滞っている仕事が大量にあるんだぞ?」
「そんなもんは知らん!がははは!」
「だから嫌なんだよこの爺。こっちの話なんか全然聞きやしねえ。おい、総局長。自分の娘の前でそれはないんじゃないの?」
「……ん?おお、真由美。大きくなったな。会うのは二年ぶりぐらいか?」
「……本当にお父様なのですか?」
「おう。お前の父、神崎雅臣だ。今は近づかない方がいいがな。臭いから」
真由美さんはそんな言葉を無視して、総局長に抱きついた。そして人目も気にせず、泣き始めた。それだけ嬉しかったってことだろうな。俺と城宮君はその親子の姿を静かに眺めていた。