狼の集団
「もう大丈夫かい?始めようと思うが」
「はい、大丈夫です。それでどんなふうに魔術を教えてくれるんですか?」
「俺の修練の方法は、基本的に実戦形式だ。という訳で、ついてきてくれるかな?」
「それは構いませんが、いったいどこまで?」
「せいぜい感謝でもしてくれ。こんな事が無きゃいけないぜ?――――神界になんてな」
そんな会話を経て。今現在、俺たちは神界のとある場所にいた。
基本的に神界という所には人がいない。なんせ自分達でもわからない魔獣が大量にいるからだ。分からないというよりは、把握しきれていないんだ。
まあ、黒帝と白皇の師匠はここからちょっと離れた場所に住んでるんだけどな。
「あの、乾さん。ちょっといいですか?」
「うん?何だい?」
「なんで俺たちはこんなに大量の狼に囲まれてるんですか!?」
そう。俺たちはついた途端に狼に囲まれていた。俺にとっちゃどうってことは無いんだけど、城宮君と真由美さんには刺激が強すぎたらしい。二人ともちょっと膝が笑ってるし。
「お前ら、どけ。さもなくば叩き潰すぞ?っていうか俺との契約を忘れたのか?」
「そん訳が無いだろう。ただ貴様を迎えに来ただけだ。他に人間がいるとは思わなかったが」
「おい、長老。迎えなんかいらねよ。頼むからこの変な状況の方を何とかしてくれ。取り敢えず若い奴らを下がらせろ。土産はちゃんと持ってきてるからがっつくな」
「ほう?それは朗報じゃな。――――お前達、早く村に戻って伝えろ。今日は祭りじゃとな」
「そこまで大層な物はないがな。まあ、とりあえずこれで我慢してろ!」
俺は持ってきていた好い加減に焼いたソーセージをばらまいた。どいつもこいつもジャンプして全部咥えて走って行った。
二人の方を振り返ると、驚いたような顔をしながらこっちに近づいてきた。ちなみに影の中に入っていた狼――――ジズレイルっていうんだが、そいつも走って行った。久しぶりに仲間に会えて嬉しそうだったな。
「あの、慎也さん。あの狼たちが前に言ってた?」
「そっ。俺と契約した狼たちさ。そんで、ここに残ってるのがその長老。ほら、長老。取り敢えず謝っとけよ」
「なんでそんな事をせねばならん。元はと言えば何も言わずにきた貴様が悪いのだろう。
それに人間風情に謝るなど御免こうむるな」
「頭が固いな。それぐらいどうってことないだろ?」
「狼はもともと孤高な生き物だぞ?そんな我らがどうして人間風情などに頭を下げねばならんのだ!?」
「だーかーらー」
「あの慎也さん。もういいですよ?そこまで私たち怒ってませんし。ねえ?」
「ええ。それよりも早く修練始めましょうよ」
「分かった。それじゃあ長老。俺たちは夜までに帰るから、この袋を持っていけ」
「ふむ、わかった。それではな。あまりこの辺を荒らすなよ」
そういうと長老は袋を引きずって帰って行った。さて俺らも移動するとしようかな。その時は手始めに肉体強化の練習をした。
走る事になったので、真由美さんをお姫様だっこにして運んだ。そして目的の場所に着いた時、真由美さんはバッと俺から離れた。顔がちょっと紅かった気がする。