護衛の始まり
第三話です。できるだけ定期更新しようと思いますが、用事でできなくてもご容赦ください。
「仕方ないな。俺は別にかまわないよ。でも、まさか俺だけにやらせるわけじゃないよね?」
「当たり前じゃろ。いつもの二人を連れていけ。あれでも一応はAAランカーじゃ。役には立つじゃろ」
それはもうあっさりと承諾した。正直な話、たかが護衛でAAランカー以上を三人も必要とする任務。一体どれだけ危険なのか、気になるという点もあったがそれよりも重要なのは―――――
「特務なんだろ?これは」
「支部長直々なんじゃからそうじゃろ。そんなこと訊かんでもわかっていると思っとったんじゃが」
特務――――要するに支部長、または本部から直々に送られてきた任務のことを指す。一応ここは日本支部。一応というのは、本部という物がぶっちゃけ存在しないからだ。総局長が滞在している場所が、その時々の総本部になる。いったい今はどこにいるのやら。
「それじゃあ、行くとしようか。準備はいいですか?」
「ええ、私は構いませんが……いいのですか?そんなに軽々しく受けてしまって」
「そんなこと気にしなくても大丈夫ですよ。こんなクソ爺からとはいえ、一応特務ですから。受けないわけにはいきません」
「そうですか……。まあ、貴方がそれでいいのならいいんですが」
なんか遠慮気味だな。彼女が依頼を持ってきたんじゃないのか?それとも、彼女が何か重要な役割を担っているのかな?まあ、それは置いといて。仕事をするとするか。
俺と神崎さんは支部長室を退出した後、任務の話をしていた。どうやら彼女を隣町のホテルまで護衛する、という任務のようだ。
思ったよりたいした任務じゃないないな。でも、それなら特務指定にされるわけがないし……まあ、いいか。悩むとか面倒だしな。俺は神崎さんを待合室に待たせて、受付に向かった。
「花音ちゃん。ちょっといいかな?」
「はい~?あ、慎也さんじゃないですか。どうかしたんですか?」
この子は達宮花音ちゃん。フェンリルで受付嬢をやってる元気な女の子だ。髪は明るい橙色。受付嬢というよりは、外で元気で遊んでいた方が似合っている女の子だ。基本的に任務の発注などをやっている。
「あの二人組の馬鹿がどこにいるか知ってる?ちょっと任務に連れて行きたいんだけど」
「ああ、それでしたら先ほどお見えになるって――――」
「誰が二人組の馬鹿だって?」
声のした方向を振り向くと、そこには男女二人が立っていた。俺が探していたやつらだ。
「お前らのことだ。っていうか、お前ら遅刻だぞ。もうすぐ昼時だぞ。また仲睦まじくやってて遅くれたのか?」
「ちげえよ。今任務が終わって帰ってきたところなんだよ。それで?俺らに何か用なのか?」
「そうだと言ってるだろう。月花、なんかやけに眠そうだな。またなんかしてたのか?」
「違うわよ!ただ恥ずかしいから顔を伏せてただけ!どうしてリーダーはいつも私たちをそういう目で見るわけ!?」
「そういう風に見えるからに決まってるだろ?ところでお前ら、任務だぞ。昼食を奢ってやるから手伝え」
「マジで!?行く行く!いやあ、腹減ってたんだよな。旨い店を頼むぜ?」
「食い意地張り過ぎよ、卓也。まあ、おなか減ってたのは本当だけどね」
この二人は俺が組んでるチームの二人、六道卓也と黒市月花だ。一応AAランカーだ。
ランカーの位は、Fを順当にE・D・C・B・BB・BBBと順番に増えていく。もちろんCからはプラスとマイナス判定も付く。まあ、Fから始まる輩で続くやつは少ない。
Fの地位はいわゆるなんでも屋みたいな雑事ばかり任せられる。そこで俺たちが守るべき市民の事を知るという意味も含まれているからだ。俺はそのFランクから始まった数少ない逸材なんだけど、ね。
「それじゃあ、護衛の相手を連れてくるから。車をとってくる間守っててくれよ?」
「え?任務って護衛なの?」
「ああ、それじゃあ迎えに行ってくるわ」
俺が待合室にいくと神崎さんは何かの本を読んでいた。あれはイギリス英語で書いてあるから、イギリスの本かな?さすがに内容とかはわからんけどさ。
「神崎さん、人の用意はできたんですが動けますか?」
「あ、乾さん。はい、大丈夫ですよ。それでその人は?」
「移動ついでに自己紹介させますので、付いてきてもらっていいですか?」
「そうですね。お願いします」
俺と神崎さんは、ホールに出て入口の所で待っていた二人のところまでいった。案の定二人はきっちりとした感じになっていた。いつもはふざけているが、仕事はまじめに取り組む奴らだからね。
「それじゃ、俺は自分の車をとってくるんでここで待っててもらえますか?護衛はこの二人に任せるので」
「それは構いませんが。大丈夫なんでしょうか?」
「?……ああ、車の事ですか?それなら大丈夫ですよ。一応狙われても大丈夫なようにコーティングはしてありますから」
「わかりました。それではここで待っているとします。それでは護衛、お願いしますね」
「はい。ちゃんと守り抜いて見せますよ。だからできるだけ早く戻ってきて」
「はいはい。まったく、台無しだな」
俺は車を取りに駐車場の方に向かって歩き始めた。
いきなりお気に入りにしていただいた方もいるようで驚きです。その期待に頑張ってこたえようと思います。それでは、また明日。