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白銀の鎧と黄金の剣  作者: あかつきいろ
~世界代表トーナメント戦~
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本戦二日目(2)

「おかえりー。中々格好良かったよ。あの二人をああもあっさりとやっつけちゃうとはね」

「こいつも強くなってるってことでしょ。まあ、あの程度の敵にやられてもらっては困るけどね」

「全く軽く言ってくれるな。そりゃあの程度の敵にやられるほど弱かねえけどな?」

「というか今回あの二人は不戦敗かな?二人ともやられちゃったし」

「まあ、そうだろ。……お、今度はちゃんと楽しめそうだな」

「天剣持ち?それって結構やばいんじゃない?」

「でも相手は格闘家の達人、李家の人間なんでしょ?だったら大丈夫じゃない?」

「お前は天剣持ちの実力を知らないからそんな事を言えるんだ。あの人外の度合いは、千葉家の比じゃないぞ。ランクは何位だ」

「確か十位ぐらいだったんじゃないかな?」



 喋っていると、試合が始まった。最初は李家の圧倒的な勢いだったが、相手が剣を抜いた途端にその勢いは終わった。

 なんせ一撃一撃が空間を切り裂いてるぐらいだからな。しかもめちゃくちゃ速い。これじゃあ、刃引きのルールとかもう完全に無視だな。

 まだ猛攻は続く。それこそ気の遠くなるような数の打ち込みが連発されているんだから。俺でもあれだけの剣戟に対応するのは大変だぞ。そう考えると、李家の代表は強いな。

 剣を唐突に放り投げ、油断した所に手刀、足刀、なんでもありの打ち込みを連発してぶち当てていた。あれはすごいな。多分鎧通し、つまり遠当ての要領で内臓に向かって当ててるぞ。


「勝負、付いたね。あれじゃもう立てないよ」

「確かにな。それにそうでなくてもやりたいとは思えないな。あれだけ打ち込めば、もう相手の気力も体力も十分に削いでるしな」

「あれが天剣持ちなの?とてもじゃないけど、勝てる気しないわね……」

「お前は何訊いてたんだ?あいつはまだ十位。一位はあんなもんじゃねえぞ。あれこそ現世の神、いやさ魔王と呼んでも差し支えのない存在だろう」

「異名も『剣の魔王』だしね。本物の悪魔も尻尾まいて逃げるレベルだよ」

「あんたたちにそこまで言わせる存在ってどんな実力持ってんのよ。私はやりたくないわね」

「俺らだってやりたくなねえよ。六位と戦って死ぬかと思ったからな。何とか倒しはしたが」

「もう地形が完全に変わってたよね。山をいとも簡単に平原にして見せたし。よく勝てたね、って思ったからね」


 そんな事を話し合っていると、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 後で訊いた事だが、この戦いで負けた李家の代表はこの戦いでの治療が終わるのに一年近くかかったそうだ。もちろん大きな被害を受けたのは心の部分だったらしいが。


 シード持ちにはとある特権がある。それは本戦で素晴らしい戦いをした選手と話し合う権利だ。相手はもちろん天剣持ち。不承不承死ながらも了承してくれて、今ここにいる。


「まあ、とりあえずは座ってくれ。立ったままじゃ話もちゃんとできないしな」

「……それで俺にどんな御用なんですか?」

「そう急かすな。事を急いては仕損じる。まあゆっくりしようや。それとも何か急ぐ理由でもあるのか?」

「分かりました。それでここに呼んだって事は、何か訊きたい事があるんじゃないですか?」

「取り敢えず君の名前を伺ってもいいかな?」

「シェルグ・アステルです。天剣持ちの第十位。

持ってる天剣の名前は『破邪の双星』フレンデスベルクです。他に訊きたいことは?」

「……訊いておいて何なんだけど、そういうの簡単に喋っちゃっていいの?」


 昔戦った天剣の第六位は、問答無用とばかりに襲ってきたけどな。アステル君は用意した紅茶を飲みつつ、俺の質問に答えた。


「喋る事自体に制約はありません。その能力をさらす事が問題なんです。ちなみに乾さん、天剣持ちの候補が何名いるかご存知ですか?」

「いや、知らないけど。うーん、三百人ぐらい?」

「残念。三百五十人です。まあどいつもこいつも化物みたいなものですが、一般人から見ればですが」

「第六位は普通にさらしてたけどな」

「六位……ああ、クライズさんですか。あの人はそういうの一切無視する人ですし、何より戦闘に快楽を求める人ですから」

「なるほど。やたら好戦的だった訳だ。それでも第一位はあまり動こうとしないよね。なんで?」

「トップはもう戦いに執着なんかしません。なんか一番上に辿り着いてしまうと達観してしまう物なんだよ、って言ってましたから」

「まあ、あんだけ強かったらそうそう上はいないだろうな。倒してみたい目標の一つではあるが」

「トップの実力を知っててそんな事を言えるんだったら、凄すぎますね。一度手合わせを願いたいものです」


 俺たちの目に殺気と言うか、薄暗い獣のような物が宿った。多分、そのまま状態で一分も過ぎたらアステル君も俺も、闘っていただろう。

 でも、とうとう我慢しきれなくなったのか、レジルが話しかけてきた。そこで俺たちの眼に宿っていた物がきれいさっぱり無くなった。


「ねえねえアステル君。ちょっと剣に触らせてもらってもいいかな?」

「本当はダメなんですけど……まあいいです。はい、どうぞ」

「ありがとう!うわあ、ここまで綺麗だとは。やっぱり近く見てみると違うね!」

「これ、鋼でできてる訳じゃないわよね?」

「ええ、何でできてるかはわかりませんが少なくとも、この世界と神界では無い事は確かだそうです」

「何でできてるか気になるわね。この硬度を私の鉄鎖でも再現出来れば……」

「いくらなんでもそりゃ無茶だろう。大体お前の鎖がこれ以上固くなったらやってられないぞ」

「いやはや、これはやっぱり魔力増幅器にもなってるみたいだね。構造がすごい似てる。これを作った人はまさしく天才だね」


 こんな会話を四人で繰り広げていた。思っていた以上にアステル君と話がかみ合った事に驚いた。

 まあ、当たり前というか観戦をそっちのけで話し合っていたせいで、後で爺に怒られた。まあ、いいか。明日に備えるとしよう。

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