予選初日
あれから数日が経ち、この日を迎えた。そう。トーナメント当日を。とはいっても今日は予選だけなんだけど。
「皆さん、お待たせいたしました。ここに世界代表トーナメントの開会を、宣言致します!」
「「「ウオオオォォォオオーーーーーーーーッ!!!」」」
こういう行事ごとの為だけに作られた国立の特別ドームに、もう隅から隅まで人、人の山だ。ちなみにこのドームは最高十万人近くの人を収容できるらしい。
そんな事を言っている俺は現在、特別選手用の席に着いていた。今日一日、ここから見ていろとの御達しだ。面倒だな。
「面倒くさそうな顔してるね。そんなにここに居るのが嫌なのかい?」
「確かに面倒だけど、別に嫌って訳じゃないよ。そういうお前は平気なのかい?レジル」
「そりゃあ僕だって暇だけど、まあ役得って事でいいんじゃない?こちらの手の内を明かさずに、相手の実力がわかるんだから」
「何か黒いぞ。大体ここに選ばれる人間は、そもそも能力も実力もばれてるだろう。
なあ、そうじゃないかい?『四元素』殿?」
「その呼び名は嫌いだよ。そんなこと言ってるなら僕もこう呼んじゃうよ?『白銀の神狼』君ってさ」
「ああ、それは御免だな。ところでどうしてここに俺ら三人しかいないと思う?っていうか黙ってないでお前も喋れよ。ジェルザ」
「別にいいでしょ?静かにしてたって。っていうかレジルはまだしも、なんで慎也もいるわけ?」
「……ちょっと事情があってな。そこはあまり突っ込まないでくれ」
「そう。それなら構わないわ。もう始まるわよ。ちゃんと見てなさい」
「ヘイヘイ、わかりましたよ、っと」
この二人は前回大会で四位と三位になったレジル・ハルベスと、ジェルザ・ヘレウス。とある任務で一緒になって、そこで話して意気投合した。今じゃすっかり友達だよ。
レジルの二つ名は今説明した通り『四元素』。四元素、つまり炎、水、風、土の属性を自由に操り、混合させたりして使う所からその二つ名がついた。
ジェルザは『黒銀鉄鎖』。文字通り黒銀色の鎖をもう自由自在に操る技術を有している。
俺はもうまんま過ぎだろという『白銀の神狼』だ。俺が鎧を纏って走る姿から、神喰狼が連想で来たから付いた、そうだ。そりゃ神喰狼身に宿してますから……。
予選はバトルロワイヤルによる数減らしと一対一の試合形式のこの二つを行うらしい。この予選参加者、千人ほどいるらしいからな。縛りが特に無い所為らしいが。
「お、彼女とか強そうだね。あそこで双剣使ってる彼女」
「ん?……ああ、ありゃ俺の妹だ。おい見ろよ、あの盾持ち。ひょっとして『無敵防御』じゃないか?」
「え?あ、ほんとだ。彼の防御破るのって難しいんだよね。ああ、可哀そうに。向かっていた人達皆、吹き飛ばされてるよ。あれ攻撃全部跳ね返すからなあ」
「ある意味チートだよな。まあ跳ね返せるのが物理攻撃だけなのが唯一の救いだが……」
「そうだねえ。ねえジェルザ、あれ誰かわかる?あの黒い剣振るってるの」
「あれは『黒帝剣』でしょ?さすがは世界代表トーナメント。今年は一段とレベルが高いわね」
「ああ。ざっと見ただけでも、有名な奴らが大量にいるし。これ何人になるまでやるんだっけ?」
「確か僕たちシード組合わせて三十六名だから……三十二人だね」
「この分なら早く終わりそうだな。本戦の方が時間かかりそうだし。予選三日、本戦を一週間ぐらいかけてやるんだっけ?」
「そうね。そうそう簡単に負けないでよ?あんたらと戦える機会なんてそうそう無いんだから」
「「もちろん。あたりまえだろ(でしょ)?」」
俺たちは予選の観戦を尻目にこんな約束をしていた。結局この日は最後まで、最後の残る一人は来なかった。いったい何があったんだろ?
できるだけ毎日一本のペースで書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。昨日のユニーク数が百人を突破して気分がハイになってるあかつきいろです。
そんなわけで始まりましたよ、世界代表トーナメント。主人公や仲間たちの活躍を描いていこうと思いますので、どうぞお楽しみください。それでは、アディオス!