妹との対戦
「それじゃあ準備はいいか?」
「いつでもOKだよ。兄さんこそ籠手と木刀だけでいいの?」
「まずは様子見。前は開放させるまではいたらなかっただろう?お前がどれだけ成長したかも知りたいしな」
「その考えをすぐ否定させてあげるよ」
俺は木刀を二本と籠手を顕現させ、明美も木刀を二本構えていたが、こちらは背中にさらに二本引っさげていた。どれだけ使う気だよ。
俺たちは同時に構えてそれから一分近く、固まったままだった。動き出したのも同時だった。
俺は単純に振り下ろし、明美は突いてきた。力のかかるところを突かれた所為で、俺の態勢が崩された。
こんな隙だらけな状態を攻撃しないわけがない。予想通り明美は突っ込んできた。俺はバックステップの要領で蹴りを顎に叩きこもうとした。
もちろん千葉家でてほどきを受けているんだろう。地面を蹴って後ろに下がってかわした。面倒くさいな。
「さすがは『天皇剣』と恐れられてる千葉家だな。戦闘をよく理解してる。あそこに住んでいるのは伊達じゃない、ってことか。成長してるよ。確かにな」
「いや、普通に攻撃してる人に言われても説得力無いし。それに顔が余裕で満ち溢れてるよ」
「この程度で一撃もらうような、甘い鍛えかたはしてないからな。それにしても楽しいな。まさかここまでしてやられるとは」
俺はもう一度動き始めた。さっきは直線だったが今度はジグザグに。あいつにはもう、俺が地面を蹴っている所しか見えていないだろう。今回は身体強化の術をかけているからだ。
俺は強烈な突きをものすごい速度で放った。ぎりぎりの所で気づいたんだろう。木刀で受け流しつつ、もう一本の剣で撃ちこんできた。
確かに技術としては凄い。だが、そんな物を俺が許すわけがない。膂力だけで吹き飛ばした。その勢いに乗り、一気に後ろに後退した。
「兄さんいきなり本気出し過ぎだよ。左手痺れちゃったよ。これは私も本気を出さないわけにはいかないね」
「ほう、俺に手加減できるぐらい余裕だったと。それならもっとギアを上げた方が良いかな?」
「そういう問題じゃないんだけど、ね」
何をするかと思えば、背中にかけていた二本の木刀と片手に持っていたものと吹き飛ばされたもう一本が震えだし、明美の両手に集まりだした。ちょうど獣の爪のように。
おそらく魔力で連動させてるんだろう。そしておそらくその剣の軌道は自由自在。どうやっても読めないだろう。なるほど確かに剣士にこれは致命的だな。突き、払い、薙ぎ、捌く。これがより難しくなるのだから。
「だけど甘い。その程度分からない筈が無いだろう。天衣無縫と謳われていた母さんに剣を教わっていた俺が」
「そうだね。私も兄さんも母さんと同じ千葉家の血が流れてる。そして母さんはその純血で歴代最強の剣士だった。その母さんに直接教わっていた兄さんにはぬるいだろうね。それでも!」
明美は剣を連続で撃ちこんできた。俺はその全てを弾き続けた。そして千日手のように果てしない打ち合いが続いた。だけど、体力ではなく振るっていた剣の方に限界が来た。
そりゃあ、本来の剣の二倍だからダメージ量が蓄積されてだろう。俺の力を受け止めてるってのもあるしな。俺の木刀の両方ともがほぼ同時に砕け散った。
好機と見たか、俺に同時に打ち込んできた。俺は鎧を顕現させて同時の攻撃を全て捌いた。まさか全て捌かれるとは思っていなかったのか、隙だらけになった。
俺は拳の力で空間をふるわせることで、明美を気絶させた。ふう、まさかこんな力を使うはめになるとは。俺は気絶しているが、楽しそうな顔をしている明美の頬をなでた。
はい、兄VS妹の構図でやってみました。最後が簡単すぎるだろとか文句はあるでしょうが、楽しければそれでよし!なので面白ければOKです。できればもう一話できればいいなと思います。では!