地下施設
眼を覚ますとそこは、居間のソファの上だった。意識を失う寸前の事を思い出し、ため息をついた。体を起こすと、明美が立っていた。
「起きた?兄さん」
「なんとかな。俺どんぐらい寝てた?」
「一時間ぐらいだよ。もうすぐご飯もできるから早く動いてよ」
「ご飯?誰が作ってるんだ?お前……なわけないか。それじゃあ二木さんか?あの人の料理めちゃくちゃ美味いからな」
「本人を目の前でそこまで言わなくてもいいじゃん。作ってるのは三橋さんだよ。試食させてもらったけど、なかなか美味しかったよ」
あの人料理できたんだ……。俺はなぜかそんな微妙な所にショックを受けていた。そして食卓の方を見ると、確かに食欲をそそる匂いがした。これは期待できるかもしれないな。
そんな事を考えていた数時間後、俺はコーヒーを淹れていた。めちゃくちゃ美味かった。二木さんのと遜色が無いぐらい美味かった。
俺は淹れたコーヒーを持って階段の最初の段の所で止まり、地面を叩いた。魔力を纏わせてな。すると地面から不思議な扉が出てきた。そこをくぐると、俺の研究施設がある。
あの扉は、この地下の空間のゲートの役割を担っている。このゲートを出現させるには、ある一定量の魔力を纏わせて地面を蹴る必要がある。多すぎても少なすぎてもだめ。通った後には、あのゲートは消える。
俺はコーヒーをすすりながら研究所の扉を開けて椅子に座った。目の前に置いてある資料を眺め始めた。ついこの間、支部長にもらった資料だ。タイトルは『新魔法の開発の危険性について』。
ここは別に俺が作った訳じゃない。ここを作ったのは俺の両親、乾莞爾と乾瑛美。両親はとある魔術の研究の為に、この研究所を作った。
俺がちょうどコーヒーを飲み終えたころにゲートが開き、明美が入ってきた。何の用だ?
「兄さん、ちょっといいかな?」
「ん~?何か用か?明美。っていうか皆には伝えてあるのか?ここにいるって」
「もちろんしてきたわよ。それでさ、ちょっと相手してくれない?どれだけ兄さんに近づけたか、知りたいし」
「構わんぞ。武器は持ってきてんのか?」
「模擬戦みたいなものなんだから、木刀でいいでしょう?」
「真剣で来られても困るがな。多分折っちまうから」
俺は拳から音を鳴らしながら、修練場に向かった。明美は木刀を下げながらついてきた。
はいここまで行きました。次の話では妹・明美との試合です。最も試合では終わりませんが。(にやり)というわけでお楽しみに!