帰宅
「それでどうしてこうなったんだ?」
話し合いも終わり、俺は久しぶりに家に戻ってきた。俺は基本的に家にいない。俺が受ける任務は、大体泊まりがけな物が多い。そこまでは別にいい。いつもの事だからな。
「なんであなたが俺の家にいるんですか!?真由美さん!」
「え?何かおかしいですか?」
「いやおかしすぎでしょ!俺とあなたは少なくともまだ、婚約者でも何でもないんですから!」
「じゃあ泊めて下さい。宿泊とかお世話になるつもりだったので」
「俺の家は宿泊施設じゃないんですよ!?」
何考えてるんだこの人は?あり得ないけど、もし間違いとかが起こったらどうするんだ?
それとも前の婚約者さんが相当な紳士だったのか?しかしギルフォードさんも止めるとかしようよ。なんで普通にOK出しちゃってんの!?
そんな事を考えていると、玄関が開く音がした。このタイミングでドアが開くという事はまさか!?
「ただいま、兄さん。あれ?お客様?邪魔だったら部屋にひっこんどくけど?」
「頼むから残ってくれ。明美。後この人をお客さんとは俺認めてないから」
「ふーん。まあどうでもいいけどね。はじめまして、千葉明美と申します。といっても旧姓は乾ですけどね」
「あ、これはどうもご丁寧に。はじめまして、神崎真由美と申します」
「もう聞いちゃいないな。神崎さん、客間でいいですか?基本的に用事があったら、明美に言ってください。俺は基本的に地下にこもってるので」
「地下?この家、地下もあるんですか?」
「正確に言うと地下じゃないというか……。それは置いといて、客間はこちらです。明美、お前自分の部屋片付けとけよ。お前この家に自分の荷物を送ってくるな。面倒だからな」
「でもあの家には置いとけないし。それにいいじゃん。もうすぐ私もこの家に戻ってくるんだし」
そういう問題じゃないんだけどな。俺の家はどこにでもありそうな二階建ての家だ。
ユニットバスに洗面所と客間。それに俺と明美と姉貴の部屋。もう使われてないけど、両親の部屋。あと台所と居間。他はほとんど物置状態だ。
そんな事を考えていると、客間に到着した。俺が客間のふすまを開けると、そこは和室になっていた。両親がこの家を建てる時に客間は和室にする、と言ってこうなったらしい。
「はい、到着。まあ、基本的に好きにしてもらっても結構です。なんせ全然使いませんからね。俺はお客さんとか基本的に呼ばないし、明美は千葉家に行ってますからね」
「あ、その事を聞こうと思ってたんですよ。どうして千葉家に行ってる妹さんが、この家に戻ってきてるんです?」
「この時期だからですよ。大事な行事があると、千葉家は忙しくなりますから。それで帰郷ってかんじで戻ってくるんですよ。それにもうすぐ期限ですしね」
「期限?何か約束でもしてるんですか?」
「明美が千葉家に行ったのは小学四年の時でその当時、俺は高校生でした。
俺の力と財力で二人分の学費を捻りだすのは不可能に近かった。
そこで俺が大学を卒業し、社会人となって養えるようになったら、明美を乾家に戻すっていう約束をしたんですよ」
「なるほど。あれ?でも確かお姉さんがいらっしゃったのでは……?」
言えないよな。もうその当時から行方不明だったとは。正直な話、行方不明なのはいつもの事だったから捜索願とか出してないしな。たまにふらっと絵手紙をよこすけど、それどこのだよみたいな絵手紙だからな。ぶっちゃけ全然場所がわからん。
そんな事を考えていると、ちょうどチャイムの戸が鳴り響いた。宅配便かなんかか?
「兄さーん。お客さんだよ。それも超大物」
は?超大物のお客さん?しかも俺に?いったい誰だろうと思いつつ、俺は玄関に向かった。
「なるほどな。確かにお前の言う通り、超大物だったな」
「でしょ~?いやあ、ドアを開いたときは驚いたわよ。え!?なんでここに!?ってかんじでさ」
「それでどうしてあなたたちがここにいるんです!?一花さん、二木さん、三橋さん!」
「え?一度君の家にって見ようかなと思ったから」
「まずい物でも置いてあるのならまだしも、別に構わないだろう?」
「それに連絡なんか入れたら、断られるのは目に見えているしサプライズ的な?」
なんだその理由は……。この三人は一桁数字のトップ。SSSランカーだ。
前に説明した一花花連さん。二木御剣さん。三橋白枝さん。この三人だ。
基本的にこの三人が戦闘に出てくる事はない。ほとんど行事ごとにしか出てこれない。いや、出れないと言った方が正しいか。力が強大すぎて同じ前線に建てる人がいないからだ。
三人は神の魂をその身に宿す者だ。
一花さんは北欧の主神、オーディンの魂を。
二木さんはギリシャ神話のオリュンポス十二神のトップ・ゼウスを。
三橋さんは日本神話のトップ・天照大神を。
それぞれの魂を宿している。そして前に単語だけ出てきた神話兵器も持っている。
一花さんはグングニルとニーべルングの指輪を。
二木さんは雷霆と金剛の鎌を。
三橋さんは天叢雲剣を。それぞれ持っている。
「それで部屋はどうするつもりなんです?この家に三人も泊める部屋はありませんよ。客間は真由美さんがいるし」
「それなら花連と白枝を神崎嬢と一緒に客室にして。私がお前の部屋で寝る。これでどうだ?」
「どうだ?じゃないでしょ……。客間はあいにく二人までです。そこまで広くないし」
「それなら妹君か姉君の部屋に分けるというのは……」
「明美の部屋は荷物満載だし、姉貴の部屋はそもそも俺じゃ開けられない。なんか術式かけてるからな。そうでなくても入ろうとは思わんが」
「それではどうすればいいのだ?」
「出て行ってもらうのが一番早いんですが……。しょうがない。あの部屋を開けるとするか」
「あの部屋とはどの部屋の事だ?」
「今は亡き……両親の部屋ですよ。掃除以外では開けたことないんですけどね」
俺は一花さんと三橋さんを両親の部屋まで案内した。両親の部屋のドアに手を掛けると―――――
――――ドクンッ!!!!
きたよ。この肺を絞められる感じ。両親を失われた時から出てる俺の発作だ。その息苦しさを意志の力でねじ伏せ、ドアを開いた。
そこには少し埃っぽいが、それでも昔と同じ状態であった。俺は少し安堵しながら、三人を招き入れて即座に部屋を出た。同時に発作も止まった。
「どうかしたんですか?」
「ちょっとした発作でね。息できなかったんですよ。ちょっと待って下さい」
「うん。それでここ使ってもいいの?」
「……構いません。使われた方が両親は喜ぶと思いますから」
「できるだけ、そのままにしておくね。ここは時間維持の魔術がかかってるから無駄みたいだけど」
分かってたのか。さすがだなと思いつつ、なぜか俺は気を失った。
全く関係ない話が後もう少し続きますがご容赦ください。もう数話で戦闘シーンも入れていきたいと思います。それでは後程、また会いましょう。では!