事前交渉
「ええええーーーーーー!?」
俺はすっとんきょうな声を上げていた。だ、だってしょうがないだろう!
いきなり『婚約してくれませんか』だぜ?しょうがないだろ!?
「おい、爺!これは一体どういう事なんだよ!?」
取り敢えずクソ爺―――もとい。支部長に助けを求めた。ところが支部長も顔が歪んでいた。
え?もしかしてあんたも、真由美さんがこんなことを言うとは思わなかった派なの?
「ああー。真由美くん?少し詳細を話してもらってもいいかの?」
「はい。乾さんはクラストの純血種だと訊きました。私もサルジストの純血種です。
なので、婚約して下さいませんか?と申したんです」
うん。見事に話がわからない。っていうか全然話がかみ合ってない。意味わかんねえ……。
「いやいや、待て待て。キミの婚約者は九条君じゃろ?他の男と婚約などできる訳ないじゃろ」
「婚約は解消していただきました。とある条件付きで」
「条件って何なんですか?」
「九条さんが今度行われるトーナメントで優勝したら、もう一度婚約関係に戻る、という条件です」
「というよりもなんで俺と婚約なんてするんです?
九条といったら一桁数字でしょう?
家柄もバッチリ、実力もあって言う事無しじゃないですか。なんでその婚約を断って俺なんかと婚約するんです?」
「あなたはクラストの純血種というのが、どういう意味か分かっていない。その血がどれだけ稀少か」
―――――ガンッ!!
俺は目の前にあった机を叩いて立ちあがった。ひょっとしてふざけてるのか?この人は?
「俺はこの血を保つための入れ物じゃない!俺は俺だ!
この血が滅びた処で、あなたにとってはどうでもいい事でしょう?
最初から無かった事になるだけなのだから」
「……すいません。失言でした。話はもう少しで終わりますから、もう少し辛抱していただけませんか?」
「それで、貴女は俺にどうしてほしいんです?俺にそのトーナメントに出ろとでも?あれは世界中の人が予選に勝ち残って出る物でしょう?今からでは遅すぎるでしょう」
「そこで支部長にお願いがあります。確か東京支部は前回の大会でベスト4に入っていましたよね?」
「ああ、そういう事か。ベスト4に入った支部は次の大会で一人だけ特別選手を選ぶ事が出来る権限を得る。それを使ってこやつを出せ、と?」
「はい。それにこの大会で優勝すれば、一桁数字の人に挑戦する権利を得ることができます。いかがでしょうか?出ていただけますか?」
「……やりましょう。優勝すれば俺は一花と戦える権利を得られるんでしょう?
それなら、俺は一向にかまいません」
「それでは交渉成立、という事で。ちなみに優勝したら婚約してもらいますから」
それは結構嫌なんだけど。まあ仕方ない。一花と戦う権利を得られならば、と俺はうなずいていた。結構嫌そうな顔をしながら。
短いかもしれませんが二話目の連続投稿です。
ここからは~世界代表トーナメント編~の開始です。どうぞお楽しみください。