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白銀の鎧と黄金の剣  作者: あかつきいろ
~終わり~
136/137

継承

 まあ、結局家では何もなかった訳なんだが。普通に家を出た。あの祖父ちゃん達にしては珍しいな、と思ったけど。


 多分祖父ちゃん達は理解していたんだ。俺が『滅び』の際にこの世界を去る腹積もりだったって事がな。祖父ちゃんは魔術師なのに勘だけはやたらと鋭かった。


「さて、そろそろかな。俺もこの世界を去らせてもらうとしよう」

「私達も行くわ。見送り、だけどね」

「……分かった」


 俺達は、あの交差点をまた訪れた。そこには、いわゆる天使と呼ぶ連中が大量にいた。どうせ誰かの差し金なんだろうけど。


「君が乾慎也君だね?」

「そうだけど。……貴方は誰だ?その圧倒的なまでの魔力、内に完全に抑えられているまるで獣のような力。どれをとってもただの人とは思えない」

「訊いていないかな?私はフィエルニクス。『観測者』の序列第二位の者だ。まあ、会う事になるのは今回だけだと思うがね」

「そうかい。まあ、邪魔するのなら殺すだけだがね」


 俺は鎧を顕現させ、完全に戦う姿勢に入った。今の俺を止める事の出来る奴なんかいはしない。相手の序列が何位だろうと関係が無い。


 邪魔をするのならば殺す。それが狼の力を持つ俺のあるべき姿なのだから。疲労は完全に消し去っていた。まあ、魔術での騙し騙しだけどな。今持てばそれでいい。


「余計な事をするな。フィエルニクス、お前は『神』の意向に逆らう気なのか?」

「アーチノイズ……裏切り者は黙っていろ!」

「『神』に逆らえば、お前とてただでは済まない。それ位は理解しているのだろう?」

「くっ……!」


 どういう事だ?神の意向?全ての世界を統括する『神』と呼ぶべき存在は一体何だというんだ?俺の行動に関して何か言ってきたのか?この様子だと否定的な事じゃないみたいだけど……。


「待たせたな、慎也。お前への継承の儀を始めようじゃないか」

「ちょっと待て。これは一体どういう事なんだ!?」

「?どういう意味だ?」


「『神』が俺の事をなんて言ったのか、って訊いてるんだ!」


「ああ、その話か……。なに、単純な事だ。『神』はお前が、我ら『観測者』の一員となることを許可したのだ」

「なんだと?」


 『神』は一体何を考えているんだ?神殺しの狼を傍に置く?何時自分にその牙と爪を向けるかも分からないのに?一体何を考えているんだ!?


「まあ、その代わりとして俺は抜けることはできんのだが」

「どういう事だ?力を完全に継承する、という事ではないのか?」

「正確には半分だな。それによって俺も序列落ちだな。まあ、時間も経てば元に戻るだろうし、大丈夫だろう。俺の技量が無くなる訳ではないからな」

「それは……」

「何も言うな。これで面倒な地位から解放されるのだ。何も迷惑ではないし、むしろ気が晴れたのだ。だから、気にするな」

「……分かった」


 俺がそう告げると、アーチノイズは俺の腕を引っ張ってとある魔法陣の前まで俺を連れていった。そして俺にそこに立つように告げる。


「これは?」

「この陣の中では、中にいる者の力を二分割させる事が出来る。それをお前に譲渡する、という訳だ。最後に何かしておきたい事はあるか?」

「一つだけ。この世界に最後の贈り物を――――『マホウ』という名の贈り物を」

「使えるのか?」

「今の俺ならな。俺はこの世界で色々な事をした。その恩返しという訳でもないが……」

「好きにしろ。お前が選ぶ事なのだからな」

「ありがとう。――――父さん」

「っ!?」


 アーチノイズはとてつもなく驚いた表情を浮かべた。俺も今までは分からなかった。でも、今の俺には分かる。この懐かしい波動といい、魔力の色。どれも父さんと同じだ。


 だから俺はアーチノイズに微笑を浮かべると、腕を空に向けた。俺の両腕が白色の光に包まれ、そこから波のように波動が広がっていった。


「我が身に宿りし白の力よ!今一度、この世界にて失われた命を!失われた者を!その全てを、この世界に帰せ!時の流れを一日前の姿に!」


『白神の奇跡』


 この技は、この世界によって失われた命をまたこの世界に戻す『マホウ』。輪廻転生の輪を歪め、死者をもう一度生者としてこの世界に戻す。


 正確には、時の流れを歪めてその者は死んでいなかった事にする。だが、この力で戻るのは死者のみ。生者には何ら関係が無い。


 だが時の流れを歪める際にさらにオプションを付けた。それは、『滅び』も同時に来なかった事にした。正確には時空の歪みによって『滅び』も同時に消え去ってしまったのだ。


「これがお前のマホウ、か。お前らしい。どこまでもご都合主義な御技だな」

「それほどでも。それじゃあ、始めよう」

「ああ」


 アーチノイズは、言霊を連ね始めた。同時に、陣が光りだし俺に力が流れ込んできた。そんな所にさらに二人の人影が入り込んできた。言わずもがな、というべきか真由美と花蓮だった。


「ちょっ!?」

「「やっぱり無理!」」


 魔術が完全出来上がり、俺達三人に力が流れ込んできた。そしてそれが完全に終わると同時に、魔法陣が扉の様になって俺達は落ちた。


「どわああああああっ!」

「「きゃあああああああっ!!!」」


 二人とも俺の腕につかまっていた。いきなり宇宙の様な空間に放り出され、気付くとそこは――――何もない空間だった。

次話でこの物語もついに最終話となります。これまでご愛読いただき、ありがとうございました。そしてこの話はあくまで作者の物語の冒頭です。

全ての作品はこの話に連動しておりますので、その辺はご理解のほどをよろしくお願いします。

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