騒々しい二人
基本的にこの家がとんでもなく広いのは魔術の研究をする際に必要だからだ。試し撃ちとかを余裕でするからな。被害出ないように、だ。
とはいえ、この家は一定時間が立つと勝手に家自体が修復を始める様に術式が編み込まれているから、問題、というよりも心配はいらないんだけどな。
「だーかーらー!そうじゃなくてだな!」
「ここの術式が明らかに間違ってるんでしょう!?そうじゃなきゃあんな事故が起こる訳が無いでしょう!」
「いやいや、どう見てもここだろう!?」
「何騒いでるんだ?二人とも」
「おお、慎也に明美ちゃんじゃないか。久しぶりだ。それで今日はどんな用事なんじゃ?というかそこの美人さん二人組は誰?」
「今日は正月だよ。取り敢えず二人とも落ち着きなよ。疲れてるからこんなずさんな間違いを起こすんだよ」
「なんですって?」
「だってここでしょ?間違ってるの」
俺がさっきから二人が怒鳴り散らしていたのとは全く別の場所を指す。そこを二人が覗きこんでみると、組み合わさっていた術式同士が干渉しあって崩壊寸前だった。
「分かってたんなら早く言わんかい!」
「二人が訊き耳もたなかっただけじゃん……。それじゃ、俺達は居間の方にいるから。料理だけでも作っておくよ」
「すまんな。……それでそのお嬢ちゃん達は誰だ?」
「うん?……ああ、俺の恋人だよ。こちらが一花花蓮さん。それでこっちが神崎真由美さん」
「「よろしくお願いします」」
「「何だと(ですって)!?」」
なんか二人が叫び出した。一体何だというんだ?なんて考えていたら二人がこちらに詰め寄ってきた。
「あの慎也に彼女だって!?」
「あんなに大切な人を作ろうとしなかったこの子が?本当にそうなの?明美ちゃん」
俺の言葉はそんなに安心できませんか!そうですか。すいませんでしたねえ!彼女の一人も作ろうとしない人間で!
「本当だよ。もう三人ともラブラブだよ。多分一夫多妻制の国に行ったら三人ともとっくの昔に結婚しちゃってるレベルだよ」
「ほう!それほどなのか!」
「本当に良かった……。不肖の孫ですけど、よろしくお願いしますね」
「もういいから!ほら!二人とも、もういくよ!」
「ああ、ちょっと!」
「待って下さい!」
ああ、もう!顔が本当に赤くなっているのが分かる位だよ!すんげえ恥ずかしいんですけど!なんでこんな目に新年早々会わなきゃいけないんだよ!