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白銀の鎧と黄金の剣  作者: あかつきいろ
~過去語り編~
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剣戟の円舞・第一幕

 翌日、俺は朝っぱらから道場に呼ばれていた。


「なんか用なのか?」

「用が無いなら、貴様をこんな場所に呼んだりはせんわ」

「そりゃごもっとも。……それで?」


「今ここで、全力を持ってわしにぶつかってこい」


「……本気か?」


 正気か、ではなく。本気か。俺の力はその当時から一線を介するほどになっていた。木刀の試合でさえ、このムカつきはするが実力を認めている爺から一本とれる位に。


「当たり前じゃ。その代わり、殺すつもりで行くからの。死んじまっても恨むなよ?」

「あんたの本気か……。そりゃちょっと楽しみだな。それでも、俺は負ける訳にはいかないからな」

「……いい眼をしよる。あの時の絶望しきった顔をしていた小僧とは思えんな」

「守る者が出来たからな。それに、まだ志半ばなんでな!こんなとこで死ねるかってんだ!」


 俺は自分の刀を抜き、爺もこの世に数本とない強度、切れ味。全てにおいてトップクラスの刀を抜いた。あれは爺自らが封印してきた物だ。


 そのあまりに圧倒的な力がゆえに。あの刀は絶対に砕けない。どういう材料で出来ているのかは分からないが、そういう風に創られたらしい。作られた、ではなく創られた、だ。


「それは確か……」

「こいつか?俺の知り合いが創った最高傑作さ。『忍隠れ・夢』と『忍隠れ・幻』だ」

「神界の鉱物で出来ておるんだったか?まあ、相手としては不足は無いじゃろう。この『覇刀・夢幻』の相手には、な」


 あの剣は『神喰狼(フェンリル)』のあの文言と同じで、特定の文言を唱える事によってその力を各段にはね上げる。しかも通常なら暴走する所なんだが、この爺は完全に制御して見せるんだよ。


「さすがは剣刀士、だな。剣や刀でとんでもない事をする事すらも可能なんだから。世界でも数少ない最初の段階から異世界の存在を知っていた存在」

「おいおい、そこまで言うか?俺達はただ人よりもちょっとばっかし多く知っていただけだ。それ以外は他の奴らと何ら変わらねえ。ただのよわっちぃ人間さ」

「あんたほどの実力で弱いって……」


「忘れんじゃねえ。人間な、自分は強いなんて思ったら終いだ。それ以上は強くなれねえ」


「……」

「そんでもう一つ。死ぬ気でやれって言葉があるがな。死ぬ覚悟ができちまった人間には生きる資格がねえ。分かってんだろ?」

「分かっているさ」

「なら、これ以上は喋る必要はねえな。さっさとおっぱじめようや」


 死ぬ覚悟ができた人間は生きる資格が無い。つまり、死を恐れる存在こそが、ただがむしゃらに『生』を望む存在、それこそが人間なんだ。


「いくぞ爺さん」

「来い、若造!」


「破刀・夜天開き」

「白刀・瞬光断裂」


 この道場には自動再生機能と、そしてこの道場で起こった衝撃を地面を通じて外に逃がす仕組みになっている。そんな道場の中で。


 三本の刀が剣戟という名の音楽を奏で始めた。


 端的に言うと、道場の天井が衝撃だけで吹っ飛んだ。床は裂けてるし、もはや空間に穴が空いているほどだ。ぶっちゃけこの道場、もう無理じゃね?


「最後に打ち合ったのは何時ぶりだったか?あの時よりは強くなっているな!」

「当たり前だ!こんなとこで負けてられるかってんだ!」


 振る、薙ぐ、払う、弾く。剣戟によって奏でられる円舞曲(ワルツ)の様に、音が音楽を奏でているかの様に鳴り響く。皆もそんな俺達の試合を見ていた。


「破極刃」

「絶界」


 カウンターもバッチリかよ!まったくやってらんねえぜ!絶界っていうのは、相手の攻撃を異世界に受け流す技だ。


 俺が使った破極刃は、本来は武器破壊用の技だ。俺はそこを刀身を振動させる事によって、相手に持たせないようにしようと思ったんだが……。


「甘いわ、若造。こんな小手先の技で、儂に敵うと思ったか?笑止千万!」

「そりゃ、俺にだって分かってるさ。こんな技じゃ、あんたには勝てないって事位はな。だがな」


「こんなとこで諦める俺じゃないんだ!」


「……本当に変わった。五年前の、あの時とは全然違う。嬉しい限りじゃな!」

「そりゃ、どうも!」


 俺達の、この戦いはさしずめ剣を使う者にしか分からない極致。でも、こんな力を求めなければいけない位人は不安を抱えている。


 だけど、強すぎる力はただ災厄を招くだけだ。でも、最後に振るわれるのはやっぱり力。暴力、権力、その他etc。


「余計な事を考えるでないわ!」

「ちぃっ!」


 弾く。弾く。弾く。弾く。弾く。弾く。どこまでも、何時までも終わる事のない剣戟の円舞曲(ワルツ)を奏で続ける。でも、終わらない物は無い。


「カハッ!」

「……さすがにここまでか。お前はよくやった。だが、わしには届かねえ」

「俺は……」


「いいか、慎也。何時だって最後に勝つ奴ってのは腕っ節が強いだけじゃねえ」


「なんだと……?」

「最後には勝つのはな」


(ここ)が強え奴の事を言うんだ!お前にゃ、まだそれが足りねえ。もっと望め、もっと渇望しろ!求めて、求めてその果てに――――燃え尽きろ」


「……無茶ぶりを言う爺さんだな」

「今に始まった事じゃねえだろ!それで!?どうすんだ!」

「決まっている。――――俺は生きて、求めて求めてその果てに、手に入れるんだ!燃え尽きるんじゃねえ!俺は手に入れる。俺の望む物を!」


 どこまでもどこまでも求め続ける。俺は無限と混沌を象徴する闇じゃない。俺はただ全てを『無』に帰する『白』の眷属の一員だ。


 だからこそ、諦めない。俺は『人』だ。俺は『神すらも喰らう神狼』では無い。俺は人であるが故に求める。どこまでも貪欲に。


「それがテメエの覚悟だってんなら……その道を最後まで貫きな。道半ばで諦めんじゃねえぞ?どこまで時間がかかっても、必ずやり通せ」

「分かってる。俺はもう諦めないと誓った。だから!」


 俺の身体が、白銀の光に包まれた。そして光が消える頃には全身鎧(プレート・アーマー)に包まれていた。


「こんなとこじゃ負けない!あんたに勝って、俺は理想に一歩近づく!」

「そうだ!テメエはそうじゃねえと面白くねえ!」


 剣戟の円舞の第二幕が――――今、始まる。


 剣戟の嵐はまだまだ続く。俺は鎧を纏った事で速度と筋力がさらに強化された。そうなると道場の中はさすがに危険という事で、外で打ち合っていた。


「天龍の嵐」

「地龍の咆哮」


 剣戟で放った衝撃波は、爺の咆哮一発で消え去った。マジかよ!?まあ、その程度の事で驚いている暇は無く。


――――ギャリィィィィィィィィィッ!


 刃と刃が擦れ合う音というのは、どうして此処まで不快なのかな?あんまり訊きたい類の音じゃないんだよな。


「その状態になれば、まあ勝てるかもしれんな」

「そうは思えないがな。あんたはこんだけやっても全然衰えた感じがしねえ。どんだけだよ」


 もう齢八十を超えている爺とは思えないな。ここまでいくともう化物とか言われても全然おかしくねえ。


「まだまだ若い者には負けられんよ。それにここに面白い奴もおるしな!」

「白狼剣・神牙」


 この技は完全に俺のオリジナルだ。イメージは神喰狼(フェンリル)の『神を喰らいし牙』。相手にはその剣迫によって、牙が己に向かってきてるように見える、という技だ。


「カァァァァァッ!」

「……まあ、効く訳が無いか。この程度の技なんか」

「ふん。幻覚なぞ効く訳が無いじゃろ。そのような手会い、いくらでも相手にしてきたわ」

「なら使おうかな。もはや剣は必要ない。……おい、爺」

「なんじゃ?」


「これから使う技は正真正銘、俺にとって最強の技だ。俺のとっておきを披露してやるから覚悟しろよ?下手したら死ぬからな」


「ほう!面白い、やってみろ!」


 俺は右手を固く握りしめると、その右腕に全てのエネルギーを集中させた。神すらも射抜き殺す力。それを人外の様な力を持っているとはいえ、人間に放つ。


 後後、色々文句を言われるんだろうな。まあ、今はこの戦いを楽しむとしようか!


「全ての神を射抜け。全ての神を殺す槍となりて――――」

「全てを断つ剣よ。万物を切り裂く神剣となりて――――」


「我が敵を貫く真なる聖愴の力を、今ここに!」

「全てを切り裂く神なる剣の力を、今ここに!」


 俺の右腕が光り輝き、まるで槍のような形になった。イメージはイエス・キリストを殺したとされるロンギヌスの槍だ。


 爺の剣も光り輝いた。その剣から放たれた力は純粋な神気。全開状態の花蓮すらも上回るほどの力だった。


神葬槍(ロン・ギヌス)ッ!!!!!」

神剣(レイム・ブレイブ)ッ!!!!!」


 その強大な二つの光がぶつかった後、俺達は――――

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