模擬試合
同時に動いた俺たちだったが、先に機先を制したのは真由美さんだった。もう何がすごいって、その突撃力と剣捌きだね。一瞬で俺の懐に入って、俺の鳩尾の部分を本気で突こうとしてきたし。殺す気かっての。ま、全部弾いたんだけど。
「護衛されてる時から感じてましたけど、さすがに強すぎじゃありません!?開幕の連撃を全部弾くなんて!」
「そりゃこっちのセリフ。なんでこんだけの実力があるのに護衛なんかいるんだよ?」
「それは……私が魔術を使えないからで……」
「…………」
なんじゃそりゃ。サルジストの純血種なのに魔術が使えないってどうよ?もしかして聖属性も自発的に使ってるわけじゃなくて、垂れ流し状態なのか?どんだけ内包量がとんでもないんだ?
魔術などの知識が世界的に知られることとなった現代において、魔術を使えない人というのは絶滅危惧種並みに稀少だ。火をつける魔法とかで使用されることもある。まあ、そのせいで犯罪も増えてるんだけど。
「初歩の初歩、火の術は使えますよね?」
「それが全然だめで……なんでできないのか分からないって先生に呆れられたぐらい」
「まあ、いいか。今は関係ないし。それで剣をより磨くと。それなら、もっとアクセルを上げた方が良いですかね?」
「そうですね。お願いします。手加減は抜きで」
「言いましたね?後悔しないでくださいよ?月並みなセリフではありますが」
俺は体の中心に小さな炎をイメージした。これが普段の俺だ。そしてその炎の火力を段々と上げていく。そんな俺の気配をあやしく思ったのか、真由美さんはレイピアを構え猛攻を仕掛けてきた。
両腕、両足、右肩、脇腹、肋骨の部分。とてつもない嵐のような猛攻、だが一発一発の威力は小さく大したダメージにはならないが量が量だ。じりじりと溜まっていく。
そんな猛攻に耐えながら、炎をイメージし続けた。そしてそれが頂点に達した時、一気に爆発させた。それは俺の体の隅々まで肉体強化の術を掛ける物だ。これによって俺の身体能力は格段に上がる。普段の五倍ほどに。
いきなり俺の姿が消えたことに驚いたのだろう。真由美さんは周りを見回していた。さっき身体能力が上がると言ったが、俺が上げたのは脚力と感覚神経。それによって俺は今―――空中にいた。
いやあ、我ながら跳びすぎた。久しぶりすぎて加減が難しいな。神崎さんの五メートルほど後ろに着地すると、神崎は驚きながら振り返った。
「いったい何をしてたんですか?」
「ちょっとした術を体にかけてた。時間かかるからね、あれ。それじゃあ改めて、始めよう」
俺は強化された脚力で真由美さんに双剣で居合抜きをした。それを真由美さんはすんでのところで回避した。鋭いな。攻守は完全に逆転した。俺の文字通り嵐のような猛攻に、真由美さんは回避することで事なきを得ていた。俺の剣は真由美さんと違って重い。そんな物を連発されていたら相手としては、やっていられないだろう。
それでも何とかこちらの動きをつかみ、鳩尾を中心とし星の形で突きの五連発を浴びせてきた。そして鳩尾に掌底を食らわしてきた。それは魔物用の魔術だった。星の加護を使い聖属性の掌底で相手の急所を突く。とんでもない技だ。
その技を放ったことで固まった真由美さんを魔力で吹き飛ばし、一本の剣を両手持ちにして大上段で斬りつけた。すると真由美さんの持っていた木刀が半ばで粉々に砕け散った。
「そこまで!勝負あり!」
月花の声が響きわたり、俺たちの模擬試合は終わった。ああ、体中が痛えなあ。
はい連続投稿第三段!できたぜ!読んでくれる方も増えてうれしいです!
バンザーイ!というわけで次話でまたお会いしましょう!では!