初試合
「咲乃さんはずいぶんとご機嫌ですね。何かいい事でもありました?」
「正月なんだからいいじゃないか。祝い事には酒精がつきものだ。違うかい?」
「酒を飲めてうれしい、と。まあ、酌ぐらいはしましょうか」
「お、悪いね。ところで、竜次君と試合をするのかい?」
「試合というほどの物ではありませんが……まあ、新年初試合という事で軽い運動をね」
「絶対に軽くならないと思うけど……。まあ、私も見に行くよ」
という事で、俺達は道場に歩いて行くとすでに胴着に着替えて木刀を持って座禅を組んでいた。俺も胴着に着替えて、適当な木刀を選んだ。
「……準備はできたかい?」
「ええ。そちらも……準備は万端みたいですね」
「新年初試合だからね。しかも相手が君なんだよ?燃えない訳が無い」
「それじゃあ、咲乃さん。合図をお願いします」
「いいよ~。それじゃあ……いざ尋常に。試合、開始!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
開幕早々に竜次さんは攻撃してきた。闘技大会の時よりも細く、鋭く、素早い。見切るのが中々難しい。それ位だな。まだ本気を出していないのかな?
「嘗めるのもほどほどにして下さいね?」
「ぐっ!?」
相手よりもなお速く、鋭く、敵に斬りつける。何事にも本気で挑む。『獅子は狩りをする際にも本気で挑む』と訊く。確かこれで合ってたか?
まあ、とにかく例え運動程度であっても本気で攻撃する。相手もだんだんギアを上げてきた。だけど、やっぱり一本じゃやりにくいな。
「白刀昇華」
「煉鉄剣舞」
ガガガガガガガッ!たった一本で何度も何度も音だけが鳴り響く。剣はって?いや、単純に速過ぎて刀身が見えない。結構腕も痺れてきたし、この辺にしとくか。
「緋天・花開き」
ドオンッ!強烈な一撃で相手の刀身を吹き飛ばす技。しかも強烈な衝撃を与えられる所為で、相手の腕を痺れさせて行動不能にする。その間に相手をぶった切る技だ。
「くっ……。やはり強いな。まだまだ精進、か」
「それ、誰にも言える事ですけど、ね!?」
バカンッ! いきなり背後から刀身が降ってきた。何とか受け流したけど、それから周りに飛んできた剣は木刀で上から叩き落とした。
「風花・舞」
風属性を付加し、その風圧で周りの剣を押し返した。そこで何とか脅威は消えたんだが、周りは刀剣だらけになった。
「なにすんだ!この、クソ爺!」
「ふん、なんだ慎也。テメエ、あんま隙が無かったな」
「いきなり襲ってくるような爺がいるもんでな。警戒は何時も怠ってねえんだよ」
「ふん、なんだ面白くないな」
「俺はテメエの楽しみの為に生きてるんじゃねえんだよ!千葉玄宗!」
「何時だって周りには気をつけろ。どんな要因で刃を向けられうか分からないからな」
「一番俺に刃を向けてくんのはあんただ!」
傍若無人にして、問答無用。俺の中で最高の問題児、それが俺の祖父千葉玄宗だ。