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思い出したくない人物
「そういえば話は変わるけど、慎也の御爺さんってすごい人ばっかりだよね」
「ん?まあ、俺が尊敬しているのは『大魔術士』の名前を持っている『乾』の方の家だけだけど。『千葉』のクソ爺は尊敬なんかしねえ」
「口悪いわね……。何がそんなに嫌なの?」
「何度も死にかける様な修行してれば、そら嫌いにもなるわ!」
「大げさな……。今生きてるんだから別にいいじゃない」
そういう問題じゃない……。あの爺は一太刀で山を割るとか、飛行機とか船に乗るのが面倒だからって海を割って渡るとかいう芸当をする人間だぞ?
どう見ても、どう訊いても人のなせる業じゃねえ。しかもあの爺、俺が父さんに似てるからって問答無用で襲いかかってくるんだ。
「そう?優しかったけど」
「あの爺は、女性に関しては優しいんだ。男に関しては……」
思い出したくも無くなるほどの、強烈なトラウマを埋め込むけどな!トは、到底口にする事が出来なかった。
この二人が、両家の人と会ったのは正月以来か。俺はさして思い出したくもないのだが、取り敢えずその時の情景を思い返していた。
あれは……本当にひどい状態だったな。