神殺し
「でも、『神』はどうして異世界なんて創ったの?」
「創ったんじゃない。勝手にできたんだ。因果という『神』にすら操れない物によってな」
「……どういう事?」
「異世界というのは『原初』の世界から別れた物だってこと。なんだかんだと言っても、神は万能じゃないってことさ」
「それ、問題じゃない?」
「これが問題じゃないなら、他に何が問題なんだ?」
ぶっちゃけた話、世界で起きている紛争だとか自然環境の崩壊とかは『奇跡』を使えば、どうとでもなる。一瞬で回復、終了だ。
「さあね?でも……」
「『神』はそんな些事は他の者に回すのさ。そして世界は『神』の知覚外へ移行しようとしている。完全に『神』の手から離れた時、俺は奴を喰らう」
「神殺しの任を担うっていうの!?」
「これは俺の意志さ。高みに立つ馬鹿を俺が殺す。この話は姉貴を除けば俺しか知らない。ま、まだあいつには届かないだろうが。もっともっと高みへ俺は行く」
「それが、貴方のしたい事なんですか?」
「そうだよ。何時だって俺は、俺のしたいようにしてきた。今回もその一環さ」
現段階では俺には『神』に抗しうる術が無い。相手は万能と謳われる存在。しかもそのすぐ傍には、聖書で言う熾天使と呼べるほどの『観測者』が存在する。
アーチノイズが言うには、全員が忠誠を誓っている訳ではないようだが。それでも数百、或いは数千年の時を生きているんだ。簡単な相手ではない。
それでも、今は必要な準備段階の時。こんな初歩の初歩みたいな場所でけっ躓いている場合ではない。もっと大きな物を相手にしなきゃいけないんだから。
「……分かった。でも、たまには顔を見せてよ?」
「出来れば、な。でも、可能な限りそうするよ。といっても、俺は歳を取らなくなるみたいだけど」
「ええ!?何それ!ずるい!」
こんな他愛もない無駄話を出来るのも今だけなのだと思うと、結構心が苦しい。そう思わざるを得ない一瞬だった。