回想
理由を黙って訊いていた訳なんだが……。なんだろ?ちょっと恥ずかしい……。昔の俺を今から一発ぶん殴りたいぐらいに恥ずい……。
「ほい、飯だぞ」
「お、待ってました~。それで、どうだった?」
「すっごい恥ずいな。……まあ、それでも俺にとっちゃあの時の花蓮の言い方は無いと思ったんだよ。その場にいる者の命をすくわない。それは、直接死ねというよりもひどい事だと思うから」
「……まあ、その通りなんだけどね。それでも、他の人にはそんな余裕は無いよ。ただ自分が生き残るだけでも必死なのに、他の人に労力なんか払えないよ」
「……それでも。己が繋いだ命は、また新しい可能性を導き出すかもしれない。俺はそう思うからな」
「そう、だね。貴方はその思いを貫いてきた。貴方に対する感謝状みたいな物はたくさん届いてるみたいだよ?仁徳の賜物だね」
「止めてくれ。俺は自分のやりたいと思う事と、そのための力を持っていただけだ。感謝されるような事じゃ無い」
事実、俺はたくさんの人を救ってきたけど今回はそのたくさんの人々の敵に回った。俺は所詮、自分の願いの為にしか動けない人間なのだから。
「それでもね。私たちにとって、貴方の意見は革命に近い物だった」
「大げさだな。俺は、何時だって自分に出来ることしかしないんだから。二人と一緒にいるのだってそうさ。俺が求められたから。一緒にいるんだ」
「慎也。私たちは、何時だって貴方に感謝していますよ?だからこそ、今回の事は許せないんです」
「……どうして?」
「一言も相談してくれなかったからです。どうして言ってくれなかったんですか?」
「……いったら絶対に反対するじゃないか。どうしてそんな見えすいた事をしなきゃいけないんだ?」
「それ位は最低限の義理でしょう。私たちはまだ諦めていませんからね」
「はあ……。もう好きにしなよ」
もうこの二人は俺が何言っても諦めさせる事は出来ないと思う。俺は、ほとんど諦めかかっていた。もう面倒くさいな。
「そういえば、あの吸血鬼さん達はどうしたの?」
「そういえばそうだな。とはいえ、どこかにはいるだろう。今この世界は外から入る事は出来ても、出る事は敵わないからな」
「そうなの?」
「ああ。そういう制約が掛かってるんだよ。とはいえ、俺が『契約』を完了すればその余波でその制約を破壊するがな」
「……出来るの?」
「出来るさ。そして去る暁には、一つの『奇跡』を送るさ。とんでもない、『神』の領域すら犯してしまうほどの領域の物をな」
そして俺は、思いだしていた。二年間に旅している途中にこの二人と廻ってきた世界の事を。