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決着

　あの獣の力は、私たちの想像の域を超えていた。なんせ出す攻撃のほとんどをかわされるし、当たりかけた攻撃も全てかき消されるんだから。

「……ここまでとはね」

『我も驚きだよ。ここまで弱いとは思わなんだ。あの爺の足元にも届いていない』

「余計な、お世話よ！」

『天叢雲剣か……。あらゆる者を切り裂く剣。だが、使い手がまだまだひ弱過ぎるな！』

「ガハッ！」

　白枝が剣を振るっても蹴り飛ばされた。その光景を見た御剣が凄いぶちギレたんだよね。あの光景にはさすがに私も驚いた。

「白枝！……貴様、殺す！」

『フン……。女を傷つけられただけで怒る位ならば、そもそも連れてこなければよいのだ。戦場に立つのならば、死ぬ覚悟ぐらいしておけ』

「汝は雷霆。あらゆる者を射抜き、我が面前に骸を作り上げよ！」

――――雷霆(ケラブノス)――――

　言っておくけど、御剣は滅多な事じゃ能力を使わない。そもそも私たちは忘れ去られがちだけど、世界でも三強と言われる『一桁(ファースト)数字(ナンバー)』なんだからね？

『その程度か？』

「何だと！？」

　でも、そんな強烈な一撃でさえ神喰狼(フェンリル)には届かなかった。なんて言ったって魔力を凝縮させただけで打ち消したんだから。

　そんでもって、御剣でさえ吹き飛ばされてもうすっごいピンチの状態に陥ったんだよね。さすがにこれはやばいかな……？と思った時だったんだけど――――

「……に、逃げろ」

「え？」

　いきなり相手がそんな事を言うから驚いて動けなかったんだけど……。それにいきなり頭を抑えだしたのも要因の一つだね。

『我が半身よ……何故邪魔をする！？』

「まだ、その時じゃ、ない。俺はこんな所で……不必要な事はしない。だから！」

『それが甘いと言っているのだ！そんな事では、いざ『滅び』となった時にこ奴らを殺せぬかもしれぬのだぞ！？』

「そんな事は関係ない！俺は、俺の意志を持ってこの人達と相対する！そのために、こんな所で俺を殺すのも躊躇しているような人達を……殺(や)らせる訳にはいかない！」

『くっ！この……分からずやが！』

「それはお前だ！……一花、さん。俺を撃て！」

「で、でも……！」

「いいから！俺がこいつを抑えられている内に、やれ！」

　私が迷っていると、白枝が剣の峰で空中に吹き飛ばした。それに御剣が雷霆(ケラブノス)を空中から三発ぐらい放射した。

　そこで私も覚悟を決めて神槍(グングニル)を空中に十本ぐらい生み出して、一気に体中に刺した。それで慎也の身体は空中から落下した。

　まあ、流石に私たちの攻撃を受けた所為もあって満身創痍。それでも私を見ながら、笑いながら言ったんだよね。

「ありがとう」

　ってね。さすがの私たちも驚いたけど、流石にそのままじゃまずいから身体を治療してそれで本隊に連絡を取って合流したんだよね。それで慎也は回収された、って訳。