VS神喰狼
それで現場に到達した私たちなんだけど、そこではちょっと驚く事に空中で眠っている人がいたんだよ。私たちの気配に気づくとそこから降りてきた。
『この気配……そうか。貴様らは三大神か』
「そうだよ。忌み嫌われし狼を宿す者」
『我が半身の事か……。貴様らの様な輩にそんな事を言われるような人間ではいがな。まあいい。我の目の前に現れたのなら、喰らうだけだ』
「……止め、ろ。この人達まで巻き込む必要は……ない」
「今のは……?」
『黙っていろ、我が半身よ。出来る時に出来る事をしておくのが当たり前なのだろう?』
「こういう事の……ために、言った……訳じゃ、ない。他人を……巻き込むな」
『悪いが、その話は訊けん。貴様はもう少し我が内の中で眠っているのだな』
それっきり声は聞こえなくなった。あの時は驚いたわね。神喰狼が身体の持ち主をかばったのもそうだけど、その制御に抗った事もそうだね。
通常体の制御を奪われた者は殺すのが当たり前なんだよ。だって魔獣から身体の制御を奪い返すなんて言うのは、並みの人間じゃ出来ない。
そんなの武器を持っている人に素手で掴みかかるような物だもの。つ・ま・り、ものすごく無謀な事って事。私もやれと言われても出来る気がしないわ。
「今のって……。魔獣の制御に抗った?」
「馬鹿な。そんな事できる訳が無い」
「……そうじゃないと、今のを説明することは出来ない。でもまずは」
「こいつの相手が先って訳ね」
『グルァァァァァァァァッ!!!』
咆哮を上げながら、その身に鎧を纏っていった。後で訊いた話だったんだけど、その当時まだ慎也は体に鎧を纏う事が出来なかったんだって。
でもそこから使えるようになったんだって。それまでは籠手や甲冑を生成するのがせいぜいで、まだ自由に扱えるレベルじゃ無かったんだって。
「くっ!なんて速さなの!?」
「なるほど。これは確かに三人でないと対処できないレベルの代物だな」
「……でも、これでどう?」
私は慎也の周りに五本の槍を創りだして、それを一気に放った。一本一本は対処する事は出来ても、五本同時は無理だろう……そう判断した私は、正直甘かった。
だってそれら全部を一気に破壊しちゃうんだもん。一本は拳で、一本は蹴りで、一本は肘で、一本は膝で。そして最後の一本は……握りつぶされた。
「……嘘、でしょう?神槍をこんなに簡単に破壊するなんて」
『この程度。最終戦争当時のオーディンはもっと苛烈で凄まじい槍を飛ばしてきたぞ?』
「……くっ!」
その闘いは、組織の歴史に載るほどの物となった。そしてこれはまだ戦いの始まりだったんだよ。