喫茶店にて
ホテルにある喫茶店で俺たちは談笑していた。
結界を破壊された時は驚いたが、それは彼女の手に聖属性が混じっていたせいだった。俺がこの周辺に張った結界は闇属性。異なる属性の力に反発し、耐えきれなくなり壊れてしまったんだろう。
それでも、長時間触れていて砕けたならまだしも、彼女の顔を見るにあれはただ触れてしまっただけで壊れたという感じだ。どれだけ内包量と密度が高いんだよ。
もしかしたら、さっき来てた執事さんが何かしたのかもしれないけど……。
「それで、神崎さん。どうしてあんな所に?」
「え!?えーと、相手が来てなくて散歩をしてたんですけど……」
「要するに、暇だったんでしょ?」
「……はい。その通りです」
着いたはいいけど、相手が来ていなくて散歩してたら偶然ここに着いた、か。いや、違うな。彼女は俺の事を探っている感じがする。暇はその通りなんだろうけど、こちらの事も探ろうって感じか?
まどろっこしいのも嫌だし、ここはもういっそ単刀直入に言っとくか。
「それで?神崎さん、俺に何か用があるんじゃないんですか?わざわざ執事さんを俺にけしかけるぐらいなんですから」
「……気づいてらっしゃったんですか?あれでもギルバートは元S+ランカーの実力者なんですよ?」
「それが何です?そんなことはどうでもいいんです。
大事なことは、貴方が俺にどんな用があるのか、という事なんですから」
「……では率直にお伺いします。あなたはクラスト最後の純血種なんですか?」
……やっぱりその話か。結構うんざりするな。爺たちがこの情報は隠蔽してるけど、やっぱり純血種にはわかるのかな?
「その答えはイエスとノーの両方。確かに男でクラストの純血を継いでいるのは俺一人だ。
だが、人間の純血種が俺一人か、と訊くとそれは違う。俺には一応だが、姉と妹がいるからな」
「一応?どうして一応なんですか?」
「……姉貴はどこ行ってるのかもわからない。その上生存不明だし。妹に至っては、もう俺と同じ乾姓を名乗っていない。千葉家の養子ということになってるからな」
「数字持ち(ナンバーズ)。それも番外ですか」
「そうだよ。俺が爺たちと相談してそうしてもらったんだ。俺はまだしも、あいつはまだ未熟。
俺の傍にいて狙われるよりは被保護者としては格式も高い数字持ち(ナンバーズ)、それも番外の方が良い」
数字持ち(ナンバーズ)とは、名字の方に一から十の数字を持つ者たちの事だ。一桁の者はファースト二桁の者はセカンド、三桁の者はサードそしてそれ以上が番外、つまりエクストラとつけられる。
噂だけのレベルだが、番外の番外つまりオリジナルエクストラである零の位を持っている者がいるそうだという物もある。面倒すぎるぞ、この制度。誰が考えたんだよ。
「それは総局長の娘であるあなたが気にすることじゃないでしょう?」
「どうしてそんな事をあなたが知っているのです?」
「否定になっていませんよ。それは俺があなたの父である、神崎宏隆総局長と知り合いだから。何回かあなたのお話は聞いていますよ」
「……お父様はなんと仰っておられたんですか?」
「誰にでも気がきいて、そして優しい自分にはもったいない娘だと。でもただ一言、構えないのが残念だと。自分は仕事にかまけてあなたに構ってあげられなかったのが、残念だと言っていましたよ」
「そうですか。お父様はそんな風に……」
神崎さんは静かに声も出さずに涙を流していた。俺たちはそれを静かに眺めていた。
はい、今日は土曜なので昼から投稿してみました。ここ最近は説明ばかりですが、そのうち派手なバトルも入れていこうと思いますのでよろしくお願いします。
それではまた後で。あるいはまた今度。さいなら~。\(>_<)/