眷属
俺達の目の前にはもうすでに完全同調をしている花蓮がやってきた。八本足の馬・スレイプニールに乗って。
「そこから俺らを見る気分はどうだ?『オーディン』」
「そんな事を訊くのがお望みなの?『白き狼』」
「どうでもいいが訊いておくべきかと思ってな。それで、覚悟は決まったのか?」
「……うん。私は、貴方を殺してこの世界を救う」
俺がレーダーの様な物を張ると、異世界から来ていた奴らの四割がやられていた。さすがにそれぐらいはやられるか。
「それならこちらも準備が必要だな」
「そんな事をさせると思う?」
「それじゃ、真祖達。悪いんだけど、一分ほど耐えてくれ」
「なっ!?」
「わかった。それじゃ、仕事を始めようか」
真祖達がそれぞれ眷獣を呼びだし、相対していた。それでも大丈夫かは分からない。なんせあいつが持つ槍は――――
「知らないの?私が持つ槍は、絶対に当たる(・・・・・・)んだよ?」
花蓮の手元から一本の槍が放たれ、それを破壊しようと眷獣が攻撃をするが表面を破壊するだけでその芯を破壊出来ていない。
「零へと還れ『最終元素』」
俺が飛んできた槍を掴み『最終元素』の力を発動させると、槍はあっけなく消え去った。
それに驚いている間に、俺は魔術で転移の陣を編み出した。それを止めようと花蓮が魔術を放ってくるが、それらは全部迎撃された。
「さあ、我が下へ来たれ。俺の可愛い弟子達よ」
俺の弟子たちが俺の目の前に転移してきた。そして待ち望んでいた時が来たような嬉しそうな顔をしていた。
「いよいよなんですね?師匠」
「ああ。お前らの『力』返してもらう時が来た。これでお前らを攻める奴はいなくなるだろう」
「師匠。いままで」
――――ありがとうございました――――
そのお礼を言われた瞬間は分からなかったけど、少し経つと眼から涙があふれてきた。だってこんな俺にお礼だぜ?信じられるかよ?
「……お礼を言うのは俺の方、なんだがな」
「私たちは師匠に会えて幸せだったからね。それじゃあ、頑張って」
「ありがとう」
『さあ、我が下へ還れ。我が眷属達よ』
その言葉と共に、俺の目の前にいた子供たちの身体が白く発光しその光が俺の中に入ってきた。俺の中で力が『完全』に満たされた。
俺は子供たちを俺の研究所に転移させた後、歩みだした。『オーディン』に向けて。真祖達は眷獣を納め、俺の後ろに下がった。
「さて、準備は整った。俺達の闘いを始めようか」
そして始まった。世界に名高き主神と狼の『神々の黄昏』が。




