それぞれの信念
俺と対峙する二木さんの表情は、それこそ復習に燃える人間のそれだった。
「そんなに許せませんか?俺が三橋さんを倒した事が」
「……そうだな。腸が煮えくり返りそうな位、怒りに燃えているよ」
「死んじゃいませんがね。俺が喰らうのはあくまで『神』。『人間』は喰らわない。まあ、天照の力が大きすぎた所為でその反動で眠っちゃいますが」
「生死の問題じゃないんだよ。単純に、白枝が君に負けた。その時自分が傍にいられなかった。それが悔しいのだよ!」
威圧の力が強くなってる……。一撃必殺でかける気なのか?確かにこの人工島の狭さには極大ともいえる『神極雷霆』を放つのが一番だけど……。
なんせ避けようがないからな。俺でも魔力で耐えきる方法を取るかも。……ん?もしかしてあれが出来るかも?
『あらゆる者を滅び尽くせ!オリュンポス十二神の名の下に!「神帝雷霆」』
何っ!?ケラブノスじゃ無い?初見でこんな大技を放ってくるなんて……。さすがの一言に尽きる。
「そんな物を俺が何もしないと思うのか!?」
「なんだと!?」
向かってきた雷撃に対して、俺は――――突っ込んでいった。そして実像が無い雷撃を殴った。もちろん痺れも来るが、俺の目的はそんな所には無い。
「ま、まさか!」
「分かりました?神喰狼の力でこの雷撃を喰らっているんですよ。しかし、中々美味いですね」
「ぐっ!」
俺は全ての雷撃のエネルギーを喰らい、その身の内に貯めこんだ。さっきの『天照』の力とこのエネルギーで俺の疲労は完全に吹き飛んだ。
『ようやくここまで漕ぎつけた。俺の相手は貴方達だけじゃ無い。俺にとって最も強い強敵を倒してないんですから』
「……花蓮の事か?」
『他に誰がいると?俺にとっちゃ最も気をつけなきゃいけない強敵ですよ』
「そもそも戦わないという選択肢は無かったというのか!?」
『それこそあり得ない。この使命は俺だけの物だ。この大願成就の為に、俺は動いてきたのだから』
「……そうか。それならもう、なにも言うまい」
二木さんは金剛の鎌を構えて、俺に自分の戦意をアピールしてきた。
「まだまだ私たちの闘いは終わらない。来い!」
『……もう遅いんですよ。何もかもが』
俺は転移で二木さんの目の前に移動し、金剛の鎌を吹き飛ばした。そして右手を心臓の部分に打ち込んだ。
――――神を喰らいし神狼よ。今、この者の『神』を喰らえ。
俺は二木さんの『神』つまりゼウスを喰らい始めた。もう、この戦いを長引かせる意味は無い。速攻で終わらせる。
「……終わり、か。これで何もかもが」
『そうですね。それでも、もし生き残っていたら――――』
「仮定は嫌いなのだが……。まあいいか。なんだね?」
『幸せになって下さい。三橋さんと末永く』
「……やはり不器用な人間だよ。君は」
『重々承知しています。それでは、お休みなさい』
二木さんの神を全て喰らい尽くし、俺は第一真祖の所まで歩いて行くとそこには第二真祖・第三真祖・第四真祖と真祖が揃っていた。
そして圧倒的な力の気配が近づいてくる。これは……花蓮か。俺もそろそろ覚悟を決めないといけないらしいな。