EX.神崎視点
乾さんたちと別れた後、私こと神崎真由美は最上階のVIP専用ルームでくつろいでいた。今回私が日本に来た理由は、婚約者である九条泰斗さんと会うためだ。だけど、九条さんはとある事情でいま仕事に出ているのでここに到着するのは二、三日後になるらしい。
「それにしてもあの時のは一体……?」
乾さんと握手した時、乾さんに一瞬、それもぼんやりとだけど白銀の色の狼が見えた。おそらくあれが神喰狼なんだろう。でも私に反応したって事は彼は―――――
「お嬢様、よろしいですかな?」
「ええ、構わないわよ。それでどうかしたの?ギルフォード」
「彼らの動向を確認してきました。彼らは今、ホテルの裏庭のスペースで模擬戦をしているようです。詳細はわかりませんが」
「ありがとう。それにしても分からないってどういう事?」
「結界を張ったようでして、その向こうが見えないのです。しかも、その結界も相当な強度を持っておりまして。気づかれずに突破するのは不可能と思い、戻ってきた次第です」
「どれだけの魔力を保持しているのでしょう?
ギルフォードの力を持ってしても、気づかれずに突破するのは無理と思わせるなんて」
「それはわかりかねますが。それよりもお嬢様」
「ん?何か言いたいことでもあるの?」
「はい。お嬢様は何故、彼にそこまで興味を示されるのですか?
確かにあの若さでSランカーというのは珍しいですが、全くいないわけではございません。
それはお嬢様でもわかってらっしゃるでしょう。それなのに、なぜ?」
それは当り前の疑問でしょう。おそらく彼は私と同じ純血種。そうであるが故に、あのような光景を見せたのだろう。
「ギルフォード、私は神話や伝説の武器へとその姿を変える事ができるサルジストの純血種。
そしてここからは私の想像になりますけど、彼は、乾さんはおそらくサルジストの力をふるう事が出来るクラストの純血種です。その証拠に、彼は私の持つ力に反応した」
「なんと。まだ生き残っていたのですか?
それでは彼は、最後のクラストの純血種ということになりますが……」
そう。私のようにサルジストはまだ少ないけれど現存している。けれどクラストはサルジストなどと交りあうことで、その血の純血がいなくなった。純血種がこの三十年以上発見されなかったことで、クラストの純血種は絶えたのだと思っていた。でも、そうではなかった。
「それで彼らは、ホテルの裏庭にいるのね?」
「はい、そうですが……まさか彼らの所に行く気ですか?」
「そうよ。どうせこのまま待っていても暇だしね。どうせに、三日は来られないのだし」
「わかりました、が。行く前にその格好と髪をどうにかして下さい。乱れ過ぎです」
私はギルフォードの言うとおり髪を梳いて、服のしわを元に戻して裏庭に行くと、そこにはギルフォードが言っていた通り巨大な結界が張ってあった。
その結界に指が触れると、途端に結界は壊れて驚いた表情で立っている三人がいた。あれ?
ギルフォードというのは、あの執事の事です。ついに1000PV突破!
やったぜ、V!それじゃあ、また今度!バイバイ!(>_<)/