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その男、神の眼につき part1.5  作者: ひさまた病
スコール・マンティアの憂鬱
3/18

対決! 凶悪テロ組織

 スコール・マンティアは辟易していた。

 それは己の、まるで近未来系SF映画の歩兵のような恰好もそうだったし、初めての任務の難易度をイージーだろうと予想していた所を、まさかのベリーハードの上を行くヘルに設定されたこともその原因だった。

 寝起きに横っ面を殴られた気分である。

 ――強化繊維で編みこまれた分厚い戦闘服。その上には、タクティカルベストを着せられ、さらにこれでもかとダメ押しをするように分厚いコートを着せられた。チェストリグが無いことが幸いといったところだろうか。

 マガジンポーチに入れられた大量の予備弾倉は重すぎて、また腰の手榴弾ハンドグレネードポーチの中にはソレらが三つ収まっている。

 コートの下のヒップホルスターに自動拳銃を備え、彼が現在構えているのはアサルト・カービン一挺。

『状況確認! 敵部隊は市街地へと進行中! 中隊規模、そしておそらく――』

 頭に被るのはフルフェイスのヘルメットで、バイザーは薄型のモニターの役割を果たしている。

 味方を青、敵を赤にマーカーし、簡単に周囲の地形を示すマップには青のマーカーだけが点在していた。そしてそのマップは視界の右上に置かれ、夜中なのにも関わらず、彼が見る世界は暗視装置を使っているのか、昼間のように明るかった。

『諸君はまず山岳地帯から出て北西へ。作戦通りの機動で先に回り込み待伏アンブッシュ、あるいはその尻に噛み付け。合図は我々がする。絶対に逃すなよ』

 北アメリカ大陸北部の某国。山に囲まれる小さな街を見下ろす形で――といっても割合に近場であるために見えるわけでもないが――彼らはその山中に居た。

 PMCの補助として連れてこられた彼らは現在、とあるテロ組織の殲滅作戦にあたっていた。

 もっともこのテロ組織は、ついこの間頭数が揃ったばかりのアマチュア集団だ。活動も、どこかの都市で低所得者による暴動のきっかけを作ったのがデビュー。それ以降は酷く穏便なものだった。

 しかしついこの間、この某国の市庁舎の横っ腹に爆破テロを仕掛けた事は、さすがに国際的なニュースとなって全世界に飛び交ったのだ。

 そして警察がPMCを派遣した。が、人員をあまり割けぬ事から、今回は彼らのみの任務である。

 中隊規模に対してこちらは小隊程度。現在では五から十人の班を三つに分けて、彼は道もまともにない木々が鬱蒼とする山の中で待機していた。が、彼を含めて八人は、命令があってようやく動き出した。

 皆、ヘルメットはあご紐で固定するタイプである以外は恰好に大きな変化はない。

『マンティア、一応分かってると思うが言っておく。中隊規模と言っても二○○人がぞろぞろと居るわけじゃねーぞ。それぞれ別れて、この街に潜伏するのが目的だ』

 中肉中背の男が説明し、彼の肩を力強く叩いた。

 声は外部マイクから中へと入り、鮮明にスピーカーが声を響かせる。また彼が喋れば同様に周囲へと伝わる寸法だ。

「ええ、ただ厄介なのは……」

『そうそう! 下手な軍人気取りが居るトコなんだよなぁ!』

『どっかで鍛えたみたいに、たしかに軍人みてーな実力らしいが……ったく、民兵相手の方がよっぽど気楽だ』

『そのクセびびってこんな片田舎にまで逃げ込んでよ。しかも、”ここに逃げました”って言ってるみてェにぞろぞろと。冗談じゃねェぜ』

 彼らは押し殺すような声でそれぞれ嘆きあって、心底うんざりとしたように表情をしかめた。

 それぞれがカービンを、あるいはアサルトライフルを構える。軽機関銃を装備する者がどこかの班に居たが、さすがに市街地戦を想定している為に軽迫撃砲などのような大味の火器類は誰も持ってきていなかった。

 もっとも、予算の件もあって最初から却下されていたことだろう。

 ――やがて斜面は平らになった。

 そうして大地は柔らかな土から、衝撃を吸収してくれないコンクリートとなった。

 大きな道路はそれでも深夜帯だからか、車の通りは一切無く、まっすぐ分かれることなく街へと伸びている。

 第一班、コードネームが『A』という単純なモノである彼らはこれより道路沿いに進んでいき、軍団の尻につく。残りの二班はおそらく既に市街地にてアンブッシュしている筈であり、今回は挟み撃ちで仕留める予定である。

 もっとも、戦場は市街地ではない。

 正確にはその手前、山に囲まれる街である為にその仕切がある大通りのやや手前で仕掛けるのだ。

 被害など出してみれば、おそらく上から大目玉を貰ってしまうだろう。だから彼らは軽口を叩きながらも、割合にマジメに動いていた。

 しかし――。

 ため息が漏れる。

 初めて銃を使う。

 初めて作戦に動向する。

 つい数日前の訓練が嘘のようだった。

 緊張が全身に駆け巡る。路上に出てから、指先の震えが止まらなかった。

 人を殺した経験はある。だが――なんの昂りも無く、意識的に、ただ排除するためだけに相手を殺せるだろうか?

 足手まといにさえならなければ良いが……。

 PMCの連中が機関からの援助という存在を知らない事が、彼にとっての唯一の救いだった。

 期待されず、また初めての任務だということから配慮もしてくれる。今はただ精一杯頑張ればいいだけだ。

『敵に容赦はいらねえぞ』

 そんな折に声を掛けたのは、『A1』のコードネームを関する班長だ。先ほどの、最初に肩を叩いた彼である。

『どうせ覚悟も芯もないんだろう。お前には慣れってもんが必要だ。それまでに何を考えればいいか、敵を殺す時に何を思ってしまうのか。お前のようなへたれは、何を考えてるか丸分かりだ』

「……確かに、お恥ずかしながら」

『何も考えるな。ただ狙いを定めて引き金を引けばいい。お前がする殺しってのは、ただ周りを散らかすだけだ。その反動を流して耐えるだけで全てが終わる……いいな?』

「がんばってみます」

『安心しろ。お前は独りじゃない。それに殆ど現場指揮官おれか、分隊長の指示で動くだけだからな』


 三○分ほどが経過して、戦闘を歩く男は右手を出して仲間の動きを制した。

 飽くまで隠密を重視した行動だったのだろう。車両を使用しない敵はその規模も多いために、いくら分断して移動したとしても、半ば走り込んでいたスコールらを振り切ることは出来なかった。

 つまりは、おそらく小隊規模であろう一つのグループの最後尾を見つけたのだ。

 班長は道の端へと彼らを促し、半数をその対面へと向かわせる。それぞれがそれぞれなりに木々に身を隠し、班長はインカムへと報告した。

「こちらA1、HQ応答頼む」

『こちらHQ、どうした』

 HQと言っても司令部らしい司令部は無い。相手は分隊長であり、彼らは最前線でのアンブッシュ中である。

「小隊規模の敵を発見した。予想外にちんたらしててな……やつらが入り口前で集合するより早く俺らが合流しちまったって手合いだ」

『下手に動くな。適当な距離をとって追跡だ。決して存在を知覚されるな』

「了解。そっちは順調か?」

『無駄口を叩くな。通信を切るぞ』

 男の声はそこでぶつりと途切れた。

 いくらか威厳のある声はそれなりの年齢を重ねているためだろう。一応隊長を務める程の人間なのだから、経験と実力は兼ね備えているはずだし、それらを持つほどの年齢となれば三十、四十ほどだろう。

「という訳だ。男なら闇に染まろうぜ」

 インカムの会話はそれぞれのインカムへとだだ漏れる。だからこそわざわざ誰かによる情報提供などが必要なく、ただ一度の会話で全員に情報が行き渡るために、その班のリーダーが指示を出すだけで簡単に済むのだ。

 彼らは別れたまま、今そうしているように木々を盾にして進む。音を立てぬように、気配を、息を殺して敵に察されぬように。

 そして、そこはやはり専門家プロというものだ。それぞれが無駄のない動きで、ただ歩くだけでも洗練されたような動作で慎重に動き続けている。スコールは三人の真ん中でその後に続き、マップ上の赤マーカーとの距離を視界の端で捉えていた。

 距離にして一○○メートル近く。道路は延々と長く真っ直ぐ伸びるために、暗がりの中月明かりに照らされるぞろぞろと動いた影を、決して見逃せるはずはなかった。

 こちらは専門家プロフェッショナルだ。見つかるはずも、また任務も失敗するはずもないと思っていた。

 が、向こうの首謀者も、さらに数十人もが退役軍人だ。

 テロを起こした理由は依然不明。だが援助も何もない敵を相手にするには、そもそもスコール・マンティアが所属する機関リリスという存在は必要なかったのだが――スコール・マンティアが人知れず派遣された理由はそこにあった。

 何も知らぬ戦場の鬼たちが、何もしらぬままでは相手にできない敵がいる。

 そいつはおよそ常識はずれな力を持っていた。

 超能力だ。

 機関に対立する協会という存在。そこに居るのは付焼刃スケアクロウと呼ばれる超能力者だ。

 機関はそれまで、特有の技術で創りだした特異能力を保有する副産物どうぐや、特殊な経緯で後天的に誕生する特異能力を持つ『特異点』と呼ばれる兵隊で対応してきた。その為の、特別な訓練さえこなしてきた。

 だからこそ、現在機関はあらゆる立場的にも圧倒的なほど上部に属している。

 凄まじい資産が、決して無視できない軍事力が、既に世界から大きく未来へ進んでいる技術が、その全世界でも限られた人間しか認知できぬ国際機関を受容していたのだ。

 が――唯一それに歯向かうのは、協会と呼ばれる組織。

 機関で生まれた一人の特異点が離れ、創りだしたと呼ばれる組織。そして同時に、付焼刃という存在を生み出した。

 そして日を増すごとに脅威となりつつある協会も、同時に世界は、機関は無視できなくなっていた。

 テロ行為に混じる能力者。各国のあらゆる場所で蔓延る能力者。その毒にしかならぬ存在を利用しはじめる者が居て――機関はそれを排除しなければならなかった。

 スコール・マンティアは、機関による攻撃を受けてその特異点と呼ばれる力を自然に得た。

 だからこそ協会に拾われたのだが、そこでまた協会の醜さを目の当たりにした。現在彼が機関に所属する理由と言うか、きっかけとなったのは『時衛士』という個人である。

 そして時衛士は現在、いつ起きるかもわからぬ眠りに就いてしまったから、その代わりとして彼は駆りだされていた。

 機関がなぜそれほどまで自身を信用しているのか、彼自身分からなかった。

 だが、信用されているのならばそれに応えてやろうと思っていた。それが衛士のためにもなると思ったからだ。

 スコールは大きく息を吐いて、決意を決める。

 そうだ。協会も機関も、個人的には特に変わりがない。なら仲間の為にがんばろうと思えば、意欲が湧いた。

「がんばろう」

 小さく漏らして、頷いた。

「そうだ。がんばれ」

「はっは、足ィ引っ張るなよな?」

 後ろの男が、そして班長がそれぞれ冗談めかしく返してくれた。

 頑張ろう、今は一先ずこの仲間の為に。


 不意に小隊の動きが鈍くなった。

 それは注意深く観察していなければわからない変化だったが、少なくとも班長とスコールはそれに気づいていた。

 班長は班員に制止を掛ける。彼らはそうして、そのまま屈み込んで身を隠した。

 街には近づいている。が、まだ彼らの合流地点からは離れているはずだった。だからこそ、ここで止まる事はいくらか予想外だった。理由を考えればこちらの存在を察知された、の一点のみとなるだろう。

 前方の集団の一部の影が回転した。それはつまり、振り返ったということなのだろう。

 まもなく、銃声が響く。

 タン、というあまりにも簡単過ぎる発砲音は、同時に前方に小さな火花を散らしていた。

 弾丸が、スコールの対面の道路に潜む木に辺り、大きく揺れる。枝から離れた数枚の葉がゆらめいて落ちた。

 ――気付かれたか。

 共通の緊張が七人の中に走る。

 こんな所で戦闘でも始まれば、未だ集合しない他の敵部隊の警戒が強まる。おそらく待ち伏せも失敗に終わってしまう。逃してしまうかも知れない。この作戦を利用されて逆に殲滅されるかも知れない。

 我々が見つかってしまったせいで――。

「う。うぅ……」

 誰かの、抑えるようなうめき声がインカムを通して聞こえてくる。

 スコールは高鳴る胸を抑えながら、歯を食いしばってマイクを指先で二度叩く班長を見ていた。

 まもなく、声がスピーカーから、あるいはイヤホンから声が響いた。

『こちらHQ。他二部隊は既に合流済み。おそらくそちらの部隊の進行速度が遅くなったためだろう』

「カマかけてんのかわからんが、部隊が停止した。こちらへ向けて発砲。精度はあながち、カンというわけではないが……」

『まだ希望を捨てたくないか。ふざけるな、常に最悪を想定して行動しろ。貴様等は敵に発見されて均衡状態。動ける内に動いておけ。動けなくなってからではもう遅い』

「っ、了解」

 また通信が切れる。

 ――発砲した影が、駆け足で迫ってきた。

 スコールはポケットから減音器サプレッサーを取り出し、慣れた手つきで銃口に取り付ける。

 どうせ覚悟をしたのだから、今役に立たなければならないだろう。

 少しくらい、いい所を見せたって良いはずだ。

 もっとも、この射撃の腕は衛士より遙かに劣ってしまうだろうが――。

「一本道でここが山中というのが幸いでしたね。我々がここに居る限り、彼らは帰る事もかなわない」

 伸縮性のストックを適当な長さに伸ばして肩に当てる。そうしてから弾薬を薬室に送り込んで、今度は彼が班長の肩を叩いてやった。

「みなさんは彼らの手前に回りこんでください。わたしが彼らを後ろから狙います」

 ここで奇襲を行えばまだ勝機がある。まず適当に弾幕を張って逃げられぬ彼らに多くの負傷者を出せば、士気はだだ下がりで立ち向かえなくなる。敵の逃亡を防げれば、第一班はそのまま挟み撃ちへと移行できるはずだ。

 もっとも、ここで騒げば確実に他の部隊に気付かれる。逆に挟み撃ちされるのはこちらかもしれないのだが。

「黙れマンティア。指示は俺が出す。ここで仕掛けなくても――」

 男の姿は迫りつつある。

 だがどちらにせよ、まだスコールが命中を期待できる距離ではなかった。

「簡単に言えば囮です。実力もないわたしにはそれが適任だ」

「ふざけんな、こんな所で――」

「人情で人の命を守る世界じゃないでしょう、ここは。貴方がなによりもよく理解できているはずです」

 食い気味に言って、彼はそのまま班長の肩を押す。振り返ってもう一人も説得しようかと思えば、彼は既にスコールの隣で中腰になっていた。

 彼はヘルメットを掴んでグラグラと頭を揺らしてから、笑顔で励ます。

「頼りねえ隊長は俺らが連れてく。お前は生き残ることだけ考えろよ」

 そう言うと、対面で潜む仲間からも激励が届いた。

「新入り、あんま目立ちすぎんなよ。まだ今は前座にすぎねェんだからよ」

「安心しろ。一人二人抜けた所で変わんねーから」

 など。台詞が届き、やがて班長の指示もなく彼らは山の中を進行していった。

 敵の部隊はこちらに向かってくる一人を除いて先に進み始めている。

 スコールは伏射姿勢で待機し、ただでさえ小さい足音が完全に聞こえなくなるのを、そして男が道路の真ん中で、やがてその前に近づいてくるのを確認しながら、アサルト・カービンを構えた。

 ――時間が過ぎるのがあまりにも遅い。

 敵の一歩が、慎重故に緩慢なのか、それとも体感時間が驚くほどに圧縮させられているのかが判然としない。

 全身が緊張する。コートを脱いでしまいたいくらい、下着の下に大量の汗をびっしりとかいていた。

 戦術も戦略も一切ない。

 ただ排除すればいいという事だけを認識して動いている。

 そしてその認識がそれだけで良いのかと不安になる。あまりにも何も知らなすぎるから、これで十分なのかと思ってしまう。

 無知の知があるだけまだマシと考えられるが、ここに来るまでであらゆる戦術書やらを呼んでくればよかったと思う。

 もしもここに、等間隔で側防室があったなら、そこに備えられる機銃で挟み撃ちなんぞをしなくとも任務成功ミッションコンプリートしていたことだろう。

 そもそも人数が少ない小隊規模のうちに各個撃破したほうがよかったのではないか。いくらこちらの人数が少なくとも、奇襲や待ち伏せなら勝てないわけでもない。むしろそこを戦術でなんとかやっていくのがプロだと思う。

 時衛士が居ればもっと早く事態は進行したのかも知れない。もしかしたらこの時刻になる頃には既に――いや、考えても無駄だ。

 今はあのPMCを信じるしか無い。

「ん……良かった。誰も居ないみたいだな」

 突撃銃を構えた男は、暑苦しそうに覆面を顔から剥がしてそう言った。

 戦闘服の袖で顔を拭い、彼は大きく息を吐く。

「さて、戻る――」

 か、という言葉が出なかった。

 トン、という軽く大地を鳴らす音がすぐ近くから聞こえていた。

 顔も向けられない。いい体格の大男に喉を絞めつけられ、拘束されているようだった。

「射撃は苦手です」

 迫る気配は背後に立った。

 殺気というものを、彼は初めてその肌に感じていた。

 音もしない。ただ背後に何かが居るというだけなのに、銃口を向けられていることだけはよく分かった。

 つばを飲もうにも喉がならない。悲鳴がでない。仲間も呼べない。手に下げたインカムのスイッチを入れることすら出来なかった。

「神よ、祝福し給え」

 胸の前で十字を切る。

 そうしてから、落ち着いた動作でM4カービンを男の左腿に向けた。

 発砲。

 呆気無く、シュコ、というプラスチックが摩擦するような音だけを鳴らしてた。

 減音効果はバッチリであり、また威力は変わらず男の左腿を貫通した弾丸はそのまま大地に弾かれ落ち着く。彼はそのまま、慎重に右腿も撃ちぬいて――ポケットの中にあった適当な紐で彼の口を縛り、突撃銃を奪い取った。

「運が良ければ生き残れるでしょうね」

 その直後、男の身体は常識はずれな”念動力”で浮かび上がり、勢い良く山の中へと吹き飛ばされていった。枝をなぎ払い、その身がやがて道路からそう離れない土の上に転がる。

 彼の意識はそこで途絶えていた。

 そうする頃、前方ではけたたましい銃声と共に銃撃戦が開始していて――。

「さて、任務の始まりだ」

 付焼刃が下手に動き出さないよう願いながら、彼は疲弊している肉体に鞭打って路上を駈け出した。

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